Axis Studios
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イコリア:巨獣の棲処(IKORIA: LAIR OF BEHEMOTHS)
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Axis Studios の優秀なアーティスト達は『マジック:ザ・ギャザリング』に携わっており、拡張パックの前 3 作のトレーラーを既に担当しています。しかし、このゲームの 84 回目の拡張リリースである『イコリア:巨獣の棲処』では、いくつか特殊な課題が発生しました。
Axis Studios でプロジェクト リーダーを務める、CG スーパーバイザーの Georg-Sebastian Dressler 氏と、リギング/クリーチャー FX リーダーの Will Pryor 氏の 2 人にお話を伺いました。2 人が選択した手法、巨獣を創り出すにあたって直面した課題、Maya を使ってその課題を克服した方法について、ぜひご覧ください。
画像提供:Axis Studios
最初で最大の課題は、既に静的なアート形式で存在し、世界中の『マジック』ファンの想像の世界に刻み込まれたキャラクターやクリーチャーに命を吹き込むことから生じました。直感的に、一からクリーチャーを作らずに済むので、既存の作品を元に作業するほがたやすいと考えるかもしれません。しかし、実際はその逆です。ファンは愛するキャラクターやモンスターの外観や動作についてある種の期待を抱いているため、作品はその期待に照らして評価されることになります。
Will Pryor 氏はこう言います。「カード アートに忠実であるかどうかを確かめることは困難です。世界中でこのゲームをプレイしている人は何百万もいます。没入感や競技性を楽しむ人もいれば、カードのアートを気に入ってプレイし、拡張カードを収集している人もたくさんいます。このようなプレイヤーは、キャラクターがどのように進化するかを厳しく評価します。新しいデッキがリリースされるたびにキャラクターのストーリーが進化します。キャラクターに何が起きているのか、なぜこのキャラクターがこの新しい次元にいるのかなど、ストーリーで詳しく説明されています」
実際には、各キャラクターのバージョンは 1 つではなく、たくさんあります。そのため、1 つのキャラクターのイテレーションだけで描画することはできません。既に存在する多くのバージョンから複合体を作成する必要がありました。
Ikoria: Lair of Behemoths Official Trailer – Magic: The Gathering
画像提供:Axis Studios
このトレーラーの強力なヒロイン、Vivien Reid を例に説明します。Vivien は「プレインズウォーカー」です。ほとばしる緑の光に照らされて現実の世界との間を移動し、戦闘の際はクリーチャーを呼び出して戦わせます。2 年以上にわたって、さまざまな姿で『マジック』の世界に存在しています。Georg 氏が語ったように、その複合体の作成には多くの研究と懸命な努力を要しました。「メイン キャラクターの Vivien を作るために、いくつかのカード アートを統合しなくてはなりませんでした。『マジック:ザ・ギャザリング』のタイムライン全体を通して Vivien にはさまざまなイテレーションがあり、Wizards of the Coast の助けを借りて、外観の合理化を進めました。モデルを調査し、さまざまなデザインのイテレーションを試し、これまでのすべての Vivien を代表する Vivien を作成しました」
画像提供:Axis Studios
クリーチャーはそれ自体が大きな問題で、特にスケーリング時に苦労しました。「巨大なモンスターと小さなキャラクターが存在します」と、Georg 氏は説明しました。「そのため、カメラ ワークが極めて重要でした」私たちはごく初期の段階で、高さやスケール、すべての大きさ、それらを環境に適合させる方法を把握する必要がありました。
Will 氏によると、それこそが、Axis Studios のアーティストがぜひ取り組みたい課題でした。「このプロジェクトは想像上のクリーチャーを扱う数少ないプロジェクトの 1 つなので、社内で大きな反響がありました。仲間との間で、サメをゴリラやトラと掛け合わせるとどのような姿になるか、などの会話が飛び交いました。このプロジェクトでのぼる話題は、まさにそういうものでした」
しかし想像上の世界からデジタル世界に楽しく創造的な要素を持ち込むには、多大な労力を要します。その結果、新たなアプローチが生まれました。「リギング用に、非常に強力なクリーチャーとキャラクターのパイプラインを用意しています。しかしこれは、多くの前提条件に基づいて構築されます。たとえば、クリーチャーは四足動物である、などです」と、Will 氏は述べました。「突然、翼の生えたトラや、歯をむきだした巨大なムカデを作成する必要に迫られたら、まず固定概念から離れて考えることから始める必要があります」
画像提供:Axis Studios
さらに、厳しいスケジュールに沿って作業しなくてはならず、COVID によるロックダウンの期間もありました。「プロジェクトとプロジェクトの間のダウンタイムが非常に短いため、新しいツールやソフトウェアのリリースをテストする時間が常にあるとは限りません」と、Will 氏は説明しました。
そこで、Maya の汎用性が役立ちました。Will 氏によると、Axis Studios では既に「Maya に緊密に統合しています。すべてのツールは、リギング用に Maya で記述されており、アニメーションでも同じです。当社のアニメーション ツール、アニメーション パイプライン、リギング パイプラインはすべて、Maya の仕組みを使用しています。現在、そして将来も当面の間、Maya はパイプラインに不可欠であり続けるでしょう」 しかし、アーティストはさまざまなクリエイティブ ソフトウェアを使用して作業する傾向があります。「ZBrush や Mudbox での作業を希望するアーティストもいますが、Maya の優れている点は、非常に汎用性が高いことです。誰かが ZBrush やMudbox などのソフトウェアで完成させたアセットを簡単に選択して Maya に取り込み、パイプラインに統合し、出力に基づいてリグを構築できます」
画像提供:Axis Studios
スケールの課題に対処するうえでも、Maya が役立ちました。このようなサイズの異なるアセットを使用してシーンを設計する場合、セットアップが極めて重要です。環境に対して現実的な形で、アセットの動きをブロックできなくてはなりません。「セットアップを正しく完了するために、Maya が実に役立ちました」と、Georg 氏は述べました。「Maya でショット固有のセットアップをすべて行い、レイアウト チームやアニメーション チームと共有することで、私たちが見たものを後から他のチームがライティングの中で確認できます。そこで、チームがライティングの中で確認できるように、位置の値を指定して転送しました。各ショットに最適な構成を見つける作業は、実際には Maya で行われていました。これはアセンブリおよびショットベースのパイプラインの一部です」
画像提供:Axis Studios
Axis Studios のこの苦労はすべて報われました。Twitch で、Wizards of the Coast によるトレーラー リリースのライブ ストリームを見る機会が得られたからです。アーティストがリアルタイムで、自社の作品が熱狂的に鑑賞される様子を目にする機会は、めったにありません。「座ってこのライブ ストリームを視聴し、視聴者のコメントを見ただけで、大いにやり甲斐を感じました」と、Will 氏は語りました。「このプロジェクトには全員が懸命に取り組んでおり、好意的なコメントが殺到しているのを目にして、新たなエネルギーとモチベーションになりました」
『イコリア:巨獣の棲処』のトレーラーで紹介された印象的なアートワークとデザインを見ると、Axis Studios と Wizards of the Coast が次回のコラボレーションでどのようなことをやり遂げるのか、楽しみです。
Axis Studio の Web サイト(英語)にアクセスして、製品や最新のプロジェクトの詳細をご覧ください。
広がりのある世界、複雑なキャラクター、魅力的なエフェクトを作成