Black Mesa

黒い羊(異端者)から『Black Mesa』
さらにその先へ

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画像提供:Black Mesa

概要

3ds Max と Source Engine を専門とするテクニカル アーティストの Shawn Olson 氏をご紹介します。Olson 氏は、ジャーナリスト、写真家、Web 開発者、ゲーム開発者として活動し、Autodesk Expert Elite のメンバーでもあります。

Olson 氏は趣味を発展させて仕事にし、Black Mesa チームと一緒に 3ds Max を使って『Black Mesa』に命を吹き込みました。そのストーリーをご覧ください。

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3ds Maxで見つけた自分の居場所

初めて 3D アプリケーションを開いたときのことを覚えています。それは Worldcraft(Hammer の前身)というプログラムで、Valve がゲーム『Half-Life』のレベル エディターとして統合したものでした。まさにその瞬間、私の創造力がかき立てられ、その後数十年間にわたり私の人生の目標を決定付けることになりました。誰も訪れたことのない新たな場所を作成できるのは、爽快です。やがて、私は今世紀以前から使われていた他の 3D アプリケーションに手を伸ばすようになりました。
「3ds Max に関する何かが、私の頭の中のスイッチを切り替えました。そのクリエイティブな可能性には、終わりがないように見えました」
その後、3ds Max R3 に出会いました。すぐに、3ds Max R4 がリリースされました。3ds Max にある何かが、私の頭の中のスイッチを切り替えました。そのクリエイティブな可能性には、終わりがないように見えました。私は 3ds Max と、アプリケーションに関する数多くの分厚いマニュアルに没頭しました(当時は、現在ほどインターネットのリソースが普及してはいませんでした)。私にとって、3ds Max はとても論理的で強力だったので、すぐにクリエイティブを発揮できました。Valve が『Half-Life』内のモデルに3ds Max を使用していたことで、Max がどのように大ヒット ゲームや映画に使用されているのかを初めて垣間見ることができました。

Black Mesa: Xen Trailer (Youtube)

この数年間、『カウンターストライク』や『Half-Life』などのゲーム用のレベルの作成を趣味として続けています。当初は主に Hammer で作業していましたが、常に 3ds Max を少しかじった状態でした。以前は、Valve の Goldsource や Source Engines で動作するゲームのレベル エディターとして 3ds Max を全面的に使用したいと考えていましたが、当時は小さなツールでさえ大きな制限があったため、完全に元に戻す方法がありませんでした。Hammer 以外でのレベルのデザインに関心を持つ人はあまりいなかったようです。私のような数人が Hammer ではなく 3ds Max を使いたいという声を上げるたびに、世間一般的には不可能か非現実的かに思えるようでした。私が Hammer ではなく 3ds Maxを使いたいと表明するたびに、Source Engine コミュニティからは、私がそのコミュニティでよく知られるエキスパートになってしばらく経った後ですら、常に自分が黒い羊(異端者)であると感じさせられるような反応が返ってきました。

そしてついに、3ds Max に組み込まれたスクリプト言語である MAXScript を見つけました。これにより、3ds Max 内でクリエイティブなアイデアを実現することに限界はないということが、はっきりしました。それから 10 年以上かけて、私は趣味を仕事にして、3ds Max を Source Engine のレベル エディターとして使用するという願いを叶えました。 そして、Wall Worm が生まれました。この会社は、3ds Max の建築アート アセット ユーティリティとパイプライン ツールに焦点を当てていました。MAXScript の利用しやすさ、パワー、シンプルさのおかげで、私はテクニカル アーティストやプラグイン開発者としての自分の居場所を見つけて、文字通り人生が変わりました。

自分の時間の大半を Source Engine パイプラインに集中的に投入し、従来の方法でアセットを Source に取り込む際につきものの苦痛を取り除いています(従来の Source Engine アセット パイプラインは非常に遅く、非効率的で、手間がかかります)。私は、「懸命にではなく、賢明に働きなさい」という、古い決まり文句の哲学を実践して仕事をしています。3ds Max のおかげで、何時間もかかっていた作業が数回のマウス クリックに集約され、さまざまなアセットを作成でき、Wall Worm は世界中で使用されるほどに成長することができました。

私のプロとしての最初の大きなチャンスは、2013 年に、『Dear Esther』の伝説的なレベル デザイナーであり、環境アーティストでもある Rob Briscoe 氏が、3ds Max と各種の Wall Worm ツールを使用した Source から Unity への『Dear Esther』の移植をサポートするため、私を雇ってくれたことです。すぐに、小さなプロジェクトが絶え間なく入ってきて、忙しくなりました。それと同時に、スクリプト プラグインの一般販売を開始しました。2015 年後半に、『Black Mesa』のチームから、Wall Worm の変位関数について問い合わせがありました。Source Engine 向けの特定の形式を使用して、景観を表現するジオメトリの一種についてです。

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『Black Mesa』の開発に欠かせない存在

『Black Mesa』は、オリジナル作品『Half-Life』のリメイクですが、Source Engine で動作します。Valve は、『Black Mesa』の親会社である Crowbar Collective に、『Half-Life』のリメイク版の商用リリースのライセンスを許可していました。2015年 に『Black Mesa』が Steam Greenlight で公開されたとき、既にこのゲームは開発開始から数年が経っていました。

『Black Mesa』のリード アニメーター、Nathan Ayres 氏は次のように記述しています。「私たちは変位の限界に挑戦していました。レベル デザイナーは Source のマップあたり 2048 という変位制限により、あまり大きなサイズを作成できませんでした。そこで、私たちは慎重に、4096 に倍増させました。その結果、Hammer は変位を「細分割」(ブロックを滑らかで自然な形状に変更)するのに 12 時間以上かかる場合がありました。そこで、Wall Worm という、Source Engine ツールの包括的なセットを作成した Shawn Olson 氏に連絡を取ることになりました。彼のツールを使用した変位についていくつか質問しただけなのですが、Shawn 氏はこのチャンスに飛び付いてさらに手助けしてくれることになり、わずか数週間後にはチームにフルタイムで採用されることになりました。最終的に、Wall Worm は『Black Mesa』の開発に欠かせない存在になるのですが、当時は、3ds Max に変位を取り込んでリアルタイムで細分割できるだけで満足していました」

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3ds Max の使用は不可欠でした

入社した当初は、チームを 3ds Max 専用のパイプラインに移行させる予定でした。これが私の最初の目標であり、望みだったのです。しかし、予想以上に、チームで使用されているアプリケーションが多様でした。優秀なデザイナーのほとんどは、Hammer については長年にわたる専門知識を持っていましたが、3ds Max での経験はほとんどありませんでした。その中には、3ds Max ユーザー、Maya ユーザー、Blender ユーザーが含まれていました。そのため、Max 専用のパイプラインには変換しないことが明らかになりました。しかし、3ds Max の使用は不可欠でした。私はマルチアプリのパイプラインをできるだけシームレスにするためのツールの構築と拡張に常に関わっていました。そのために、3ds Max/Hammer は、可能な限りうまく連携させなくてはならない主なプレイヤーでした。

Black Mesa - Wall Worm and 3ds Max

Wall Worm には、Hammer と 3ds Max の間でレベルを交換するためのインポーターやエクスポーターがありますが、いくつか課題があります。主な課題は、Hammer の設計方針がアトミックである一方、3ds Max の設計方針はよりプロシージャルであることです。プロシージャル コンテンツのデータは、Hammer が使用する VMF 形式に送信されると失われます。そのため、アート コンテンツとレベル デザインを並行して、しかも個別に動作させる方法を見つけなければなりませんでした。

『Black Mesa』のプロジェクト リード、Adam Engels 氏は次のように記述しています。「アート プロセスを調整するにつれて、3ds Max でアートを保持し、次にそれを Hammer にインスタンス化できるようになりました。これにより、アートとレベルの内部動作が分離され、ゲーム内の更新をすばやく確認できるようになりました。」ほとんどのプロップの配置と変位の編集は Max に保持され、レベル デザイナーが Hammer で処理していたエンティティやブラシワークとは別に、Hammer のシーンに追加することができます。以下の Hammer のショットでは、ネイティブの Hammer シーンにあったもの(ほとんどが黄色)と 3ds Max のシーンの環境アートが交互に表示されています。

画像提供:Black Mesa

景観マテリアルのブレンド

景観マテリアルのブレンドには、データチャネル モディファイヤと頂点ペイント ツールを使用しました。このツールにより、Source Engine の変位に対する頂点ブレンドと一致するように、頂点カラーで 2 ~ 4 つのマテリアルをブレンドできます。リード プログラマー(そしてグラフィックス界の権威)である Chetan Jaggi 氏と私は、DirectX シェーダーをいくつか作成し、Source Engine のルールに基づいて Max ビューポート内でブレンドを視覚化しました。頂点マスクされたテクスチャのブレンドのいくつかをプロップにベイク処理する必要があったときは、ネイティブ Max レンダラー用の DirectX シェーダーを模倣した OSL シェーダーを作成することで、簡単にこの処理を実現できました。

プロップを配置する場合は、いくつかの戦略を使用しました。特定の項目が必要なまばらな領域や場所では、[選択して配置]ツールなどの標準の変換ツールを使用して、シンプルなドロップと配置の方法を使用しました。多くのランダム性が必要であるにもかかわらず、特定の芸術的な配置も必要とする密度の高い領域には、[オブジェクト ペイント]ツールを使用しました(このツールもグラファイト モデリング ツールに含まれています)。大規模なシステムでは、Itoosoft の Forest プラグインを使用しました。

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ビジョンの実現に向けて

アーティストの Brian Dale 氏は、3ds Max での経験について尋ねられると、次のように答えました。「3ds Max を使うことで、Hammer では決してできない方法で開発する可能性が広がりました。3ds Max のすべての機能に加えて、プラグイン ソフトウェア(Forest, Wall Worm、GrowFx など)も使用できるようになりました。Source Engine には見えないような世界を作り上げることができました」

Wall Worm と 3ds Max のレベル デザイン ツールが緊密に統合される前は、アーティストは常にプロップを単独で作成し、Hammer を使用して配置する必要がありました。Hammer は長年にわたって多くの代表的なゲームに使用されてきましたが、10 年以上も革新が起こらず、最新のレベル デザインの標準に照らすと、かなり原始的で古風です。3ds Max 内で変位とプロップの配置が可能になったため、3ds Max 内で使用可能なすべての高度なツールを使用して、ワークフローの効率をさらに高めることができます。Engels 氏は Max がアーティストのワークフローをどのようにサポートしたかについて、次のように説明しました。

「3ds Max を使用することで、アセットを自然に配置し、レベルを詳細に表示できるようになりました。メッシュや UV を編集する必要がある場合、他のレベル アートと同じファイル内で、すべて同じ場所で作業が完了します。エディターと 3D アプリの間で行ったり来たりする必要はありません」

これらのツールなどを使って、私たちは徐々に、『Black Mesa』の『Xen』のビジョンの実現に近づいています。もはや、ゴールは目前です。Ayres 氏は次のように記述しました。「『Black Mesa』の『Xen』は、Wall Worm がなければ不可能だったでしょう」 さらに言えば、3ds Max がなければ、Wall Worm は存在しません。3ds Max のおかげで、非常に古いゲーム エンジンに最新のデザイン ツールを組み込むことができました。
個人的に、『Black Mesa』の最終章を生み出すために奮闘している才能溢れるアーティストやレベル デザイナーのチームと共に働くことができ、とても光栄です。このチームの取り組みに参加したことで、多くのやりがいのある課題や友情に出会えました。

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3ds Max は、
世界で最も強力なクリエイティブ ツールの 1 つです

この絶え間ない革新と拡張性により、3ds Max は 3D アーティストや制作スタジオにとって長きにわたり、万能ナイフのような存在になっています。このプログラムに 20 年近くの人生を捧げたため、バイアスがかかっているのはわかっています。ですが、3ds Max が使われていない本格的なクリエイティブ 3D プロジェクトを引き受けることは考えられません。3ds Max には、ビジョンに命を吹き込む力があります。

Black Mesaのストリームはこちらからご覧頂けます。
Shawn Olson 氏とポートフォリオの詳細については、以下のサイトをご覧ください。(英語)
https://www.youtube.com/user/webonizer
https://twitter.com/shawnmolson
https://www.facebook.com/wallworm

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