AMAZON スタジオ

クラウド化した制作環境で次世代のスタジオを実現

新たな可能性

Share this story

 

画像提供:Amazon スタジオ

制作チームの魔法を支えるカスタム データ パイプラインとクラウドのワークフロー

Amazon スタジオ社は、大ヒット テレビ シリーズ 『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』で、エピソード形式のストーリー制作における限界に挑戦しました。同社は世界中のチームが携わるきわめて複雑な制作プロセスを全フェーズにわたって調整するために、クラウドベースのツールとワークフローを導入しました。そして見事なエンターテインメント作品を生み出すことに成功し、シリーズの初回配信で 2,500 万人の視聴者を引き付けました。映画やテレビ番組制作は、時代とともにますます規模が拡大し、複雑化しています。そして Amazon スタジオは「次世代のスタジオ」を目指して、デジタル トランスフォーメーション(DX)ジャーニーを続けています。

Still from the Amazon Studios production The Lord of the Rings: The Rings of Power

『力の指輪』の新シリーズでは、舞台が『ロード・オブ・ザ・リング』の数千年前に遡り、従来のキャラクターだけでなく新しいキャラクターも登場し、「中国」を巡って戦いが繰り広げられます。画像提供:Amazon スタジオ

大人気長編大作の新たな章を生み出す

2017 年 11 月、Amazon は J.R.R. トールキン原作『指輪物語』のテレビ化権を獲得したと発表しました。その瞬間から、この小説や映画を愛する世界中のファンたちの待望作品でした。Amazon の子会社である映画・テレビ番組制作会社 スタジオは、その後 5 年の歳月をかけて『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』を制作しました。時代を超えて愛され続けているファンタジー大作の、画期的な新シリーズです。

Amazon スタジオには、プライム ビデオ限定のオリジナル映画やテレビ シリーズの制作を手がける優秀な人材が数多く在籍しています」と語るのは、同社の製品戦略責任者を務める Eric Iverson 氏です。Amazon スタジオのコンテンツは、世界 240 ヵ国以上の国と地域に配信され、Amazon の広範なエコシステムにおける大々的なマーケティング活動を通じて、テレビや映画以外にも幅広い分野の作品を手がけています。

Eric Iverson of Amazon Studios in front of a scenic image from The Lord of the Rings: Rings of Power

Autodesk University 2022 の壇上でプレゼンテーションを行う Amazon スタジオの Eric Iverson 氏

制作レベルを最大限に高める

Amazon スタジオは、大作『ロード・オブ・ザ・リング』の新たな章を制作するにあたり、創造性、芸術性、作品価値を最高レベルまで高めるために、イノベーションの限界に挑戦し、作品規模を最大限に拡大しました。「現在は、より短時間でより多くのコンテンツを制作することを求められます。そこで、世界中のアーティストがアクセスできる作業環境を整えて、ニーズに応じて24 時間体制で対応します」と Iverson 氏は話します。

また「業界の進歩に伴い、コンテンツを制作し、市場で配信するためのさまざまな素晴らしい最新ツールが生まれました。しかしその一方で、こうした進歩のために業界はますます複雑になっています」と語ります。世界的な新型コロナウイルス感染症のパンデミック以来、リモートのチームワークが普通になり、制作がスピーディーになりました。プロジェクトの全フェーズが同時に進められるようになり、結果的に制作プロセスはますます複雑化しているのです。

「『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』は、まさにエピソード形式の物語の限界を超える作品となりました。第 1 シーズンの 8 時間のエピソード コンテンツには、20 社の VFX スタジオによって作成された約 10,000 点のビジュアル エフェクト ショットが使用されています。これは、6~8 本の映画を一度に制作しているかのような量です」

— Amazon スタジオ社 、製品戦略責任者、Eric Iverson

次世代の制作スタジオが誕生

「プロジェクトがますます複雑化しているという問題に対処するためには、ストーリーテリングのプロセスを新たな視点で捉える必要があります。世界中の優秀な人材を集めるためにはどうすればよいかを考えるのです」と Iverson 氏は話します。 Amazon スタジオは、「次世代の制作スタジオ」になるための進化の取り組みを始めました。そしてチームワークによる映像制作の方法を、次の 3 つの原則に基づいて一から見直しました。

まず 1 つ目に、次世代のスタジオは、設計について社会的な責任を伴います。「視聴者は、優れたストーリー、一流タレント、視覚効果で想起させる以上のものを期待しています。視聴するコンテンツの制作方法にも関心を持っています。私たちは、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)、アクセシビリティ、サステナビリティを実現する上で、大きな責任を負っているのです」

2 つ目に、スタジオは、グローバルにつながったクラウド環境で、未来に向けた制作体制を構築する必要があります。ハリウッドの研究開発ジョイント ベンチャーである MovieLabs が掲げる 2030 ビジョン イニシアチブでは、コンテンツをクラウドで安全に保存・共有する方法が示されています。

3 つ目に、スマートなノンリニア ワークフローを導入することで、複雑化している制作プロセスをスムーズに連携させます。「非効率的な手作業での調整、アセットのやり取り、チーム間のリモート コラボレーションを行っていては、何百何千時間もの無駄な作業時間が生じてしまいます。ツールやワークフローの自動化も、ニーズに合わせて進化させる必要があります」と Iverson 氏は話します。

Cameras on booms film a scene of a shipwreck in a storm from The Rings of Power

『力の指輪』のシーン撮影風景。 画像提供:Amazon スタジオ

デジタル トランスフォーメーションで連携

「オートデスクは、この 3 つの原則における積極的なパートナーです。私たちは連携して、MovieLabs の 2030 ビジョンを共有しています。オートデスクのさまざまなソリューションが、当社のビジョン達成に役立っていますが、中でも特に Flow Production Tracking (旧 ShotGrid)Flow Capture (旧 Moxion)は便利です」 これらのクラウドベースの制作ツールでデジタル トランスフォーメーションに乗り出した Amazon スタジオは、チーム間の連携とコラボレーションを強化することに成功しました。

オートデスクの制作管理ソフトウェアである Flow Production Tracking は、Amazon オリジナル作品の制作でプロジェクトをリアルタイムで追跡するために利用されています。「このツールは、新型コロナウイルスの流行中に制作ワークフローを調整するのに役立ちました。ダッシュボードは、制作における数多くの VFX ショットやベンダーを追跡するのに役立ちました」と Iverson 氏は話します。 Amazon スタジオは、Flow Production Tracking の API を利用して Flow Production Tracking と Amazon Web Services(AWS)のアセットを連携させることで、手戻り作業を自動化し、最小化する方法も試みました。

Screenshot from Moxion, Autodesk’s cloud solution for digital dailies and review

Amazon スタジオは、オートデスクのデジタル デイリー向けクラウド ソリューション Flow Capture を使用して、現場制作からポストプロダクションまでのプロセスを統合しています。

クラウドで制作パイプラインを 1 つにつなげる

また、Amazon スタジオは、オートデスクのデイリー/レビュー用ソフトウェア Flow Capture(旧 Moxion)を使用して、リアルタイムでレビューを行い、制作レビューの時間短縮にも成功しています。Flow Capture では、撮影現場から未処理の映像を 1 つの柔軟なツールに取り込み、関係者がどこからでも自在にレビューできます。Flow Capture と Flow Production Tracking(旧 ShotGrid)を組み合わせて使用することで、制作パイプラインがクラウド環境で 1 つにつながり、撮影現場からのデータを、ほぼリアルタイムでポストプロダクションに取り込むことが可能になります。

「Amazon スタジオでは、作品の規模に関わらず、すべての制作レビューに Flow Capture を使用しています。撮影現場からポスト プロダクションへの作業の受け渡しを合理化し、ワークフローを効率化できます」 Flow Capture を使用すると、世界中の制作チームが容易に連携できるようになり、制作プロセスがよりインクルーシブ(包括的)になります。Amazon はこれまで、115 件以上の制作プロジェクトに Flow Capture を使用してきました。そこには、約 4,500 人のユーザー、約 1,300 時間のコンテンツのアップロード、約 1 ペタバイトのストレージが含まれます。

「制作テクノロジーの開発を情熱的に追求するオートデスクのような企業、クリエイティブな技術者やアーティストたちとの連携がなければ次世代のスタジオを実現することはできません。『次世代のスタジオ』とは、大規模な魔法をかけることができるスタジオです。私たちは、このシンプルなアイデアの実現に取り組んでいます」

— Amazon スタジオ社 、製品戦略責任者、Eric Iverson

Still from the trailer for Amazon Studios’ The Lord of the Rings: The Rings of Power

『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』の予告編 (2 分 36 秒, 英語)映像提供:Amazon スタジオ

Amazon スタジオのコンテンツ制作の進化

『ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪』は、2022 年 9 月 1 日の配信開始日に世界全体で 2,500 万人の視聴者数を記録し、プライム ビデオ始まって以来の封切りとなりました。8 話構成の第 1 シーズン全体では視聴者はさらに数百万人増え、今後の作品に登場する人物や描かれる世界への期待が既に高まっています。「見る人が夢中になるようなストーリーや体験を生み出すためには、視聴者をよく理解し、何が彼らの心に響くかを考えて、一生懸命に作り込む必要があります。そうしたストーリーを生み出すためには、もっと頑張らなくてはなりません」と Iverson 氏は話します。 それを実現するためにも、Amazon スタジオは次世代のスタジオになることを目指して取り組んでいます。

Amazon スタジオはクラウドベースの制作環境で、非常に複雑なプロジェクトを効果的に管理することで、Iverson 氏が「大規模な魔法」と呼ぶところの、圧倒的なスケールのエンターテインメント作品を生み出すことに成功しています。「現在、すべてのツールを連携させているところですが、やるべきことはまだまだたくさんあります。今も全力で取り組んではいますが、私たちだけの力では実現できないでしょう」 クラウドベースのプラットフォームのテクノロジーが進化するとともに、新たな可能性が開けました。そしてオートデスクと Amazon スタジオのチームは提携し、データ、プロセス、ツールを 1 つのオープンな環境に統合しました。

「ヒーローが中国という魅力的な文明を救うという素晴らしいストーリーを伝えるプロセスを、制作チームがこれからも楽しめるように、私たち全員でこの重要な作業に取り組んでいます」と Iverson 氏は話します。 『力の指輪』シーズン 2 の制作は 2023 年秋に始まりました。視聴者待望の魔法の世界を生み出すために、Amazon スタジオは、より効率的かつアジャイルでクリエイティブなスタジオを目指して変革を続けています。