ATKINS 社

ライゲートの洪水リスク軽減プロジェクトで、
さまざまな土壌タイプにおける降雨流出を
InfoWorks ICM でモデル化

雨水排水・洪水

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概要

英国南部のサリー郡ライゲートの中心街では、ウォレス・ブルック川の氾濫、地表水、汚水の浸水が相まって、過去 20 年以上にわたり定期的に洪水が発生しています。洪水発生時に最も困難となるのは河川の土砂の問題でしたが、同社はこの問題に対処するだけでなく、さらに踏み込んだ取り組みを行いたいと考えました。河川周辺の土壌だけでなく、周辺のさまざまな種類の土壌についても正確に把握することで、問題解決に役立つ正しい情報が得られると考えたのです。

水没した道路と通行止の標識

[Description.] Photo courtesy of [credit].

1 日で半月分の雨量

2015 年 8 月、たった 1 日でこの地域の月間予想降水量のほぼ半分にあたる 37 mm の雨が降りました。町の中心部の店舗や道路は浸水し、住宅やケア ハウスへのアクセスが制限される事態となりました。これがきっかけとなり、サリー郡議会(SCC)は、設計、エンジニアリング、プロジェクト管理のコンサルタンティング会社として世界的に高い評価を受けている Atkins 社に、ライゲートの洪水軽減に関する調査を依頼することにしました。

Atkins 社のエンジニアリング、設計、プロジェクト管理チームの水理モデリング担当者である Ruchi Sayal 氏は、地表水や汚水も含めた包括的な河川の集水域モデルを構築するために InfoWorks ICM を利用しました。そしてウォレス・ブルック川と支流のモール川、さらに近隣の池や水路構造物などに関するデータをひとつに統合したモデルの作成を目指しました。

LiDAR データを使ってサーフェス フィーチャを示す 2D 地表メッシュ モデルを作成し、地表水と汚水の両方の排水システムを構築して全体像を完成させ、これをプロジェクトのベースとしました。

浸透モデルのグラフ

Green Ampt 浸透モデルにおける 2 つのゾーン

浸透モデルのアプローチの決定

雨水の土壌への浸透は、直接降雨による流出の影響をモデル化する上で重要な考慮事項です。土壌の具体的な特性を理解することは、集水域にどのように浸透するかを予測する上で重要な意味を持ちます。 InfoWorks ICM は、Horton、Green Ampt、Fixed Infiltration、Constant Infiltration などの複数の浸透モデルを使用して集水域への浸透を計算します。Sayal 氏は Green Ampt を採用しました。「Green Ampt は、さまざまな土壌の特性を考慮します。これにより集水域をより実際に忠実に表現できます。さらに、環境当局向けに構築した隣接地域の集水域モデルにも Green Ampt を使用し、実際の条件に合わせて調整しました」 彼らはまず、英国の広範な土壌分布を理解するために、英国地質調査所(BGS)のウェブサイトのデータを使用しました。そしてライゲートの土壌構成と、隣接する集水域の地質を詳細に比較しました。

さらに多くの情報を組み込み、モデルの完成度を高める

水の土壌への浸透速度のことを、透水係数といいます。粘土などの不透水性の土壌はこの数値が低くなり、砂質の土壌は高くなります。Green Ampt のパラメーターは、ライゲート集水域の粘土ローム層に対応していたため、最初から集水域全体にこのパラメーターを採用しました。透水係数を 1 時間あたり約 2 mm という低い値で計算しました。

過去に起きた洪水を検証することは、モデルの信頼性を高めるために非常に重要です。しかし、ライゲート集水域の観測データは限られていたため、過去の洪水に基づいてモデルを完全に調整することはできませんでした。 初期のモデル結果を一般的な過去のデータと比較したところ、モデルにおける対象地域は洪水になるという結果になりました。20% の確率(年間確率 1/5)で洪水が発生し、30 件以上の物件が床上浸水 1 m 以上になることがモデルに示されました。しかし、それほど大規模で深刻な洪水が定期的に起こるのは非現実的と考えられました。

そこで同社は、集水域内のさまざまな土壌タイプをより詳細に調査することにしました。BGS のウェブサイトに掲載される現地のボーリング調査によると、集水域の南部は、最初のモデル解析の基礎となった粘土ローム層よりも砂質な土壌であることがわかりました。そこでこの追加情報に基づき、透水係数の値を、粘土ローム層の 2 mm/時という低い値から、砂質ローム層の 128 mm/時という高い値に変更しました。

そして更新後のモデルを十分に検証し、想定される地域が洪水になるようにモデル化しました。しかし、5% (年間確率 1/20)の降雨現象を適用しても、ライゲート中心部で歴史的に観測されてきた著しい流路は生じませんでした。

A version of this article ran previously on website. Photos courtesy of [credit].

「全体を可視化するのは難しいかもしれませんが、集水域の洪水リスクを確認できる InfoWorks ICM がとても役に立ちます。 初めはモデルが機能するのか半信半疑でしたが、しっかり機能しました。ICM の安定性は本当に素晴らしいと思います」

—Atkins 社(英国)水理モデリング担当/ Ruchi Sayal 氏