DIAMOND SCHMITT ARCHITECTS

BIM で新しい都市景観を創造する、KING Toronto プロジェクト

新たな可能性

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画像: Hayes Davidson(別記のない限り提供: Westbank)

自然、持続可能性、コミュニティを大切にする、革新的な都市生活をデザイン

Diamond Schmitt Architects(DSA)(英語)は、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)によって、コミュニティの健やかな暮らしを発展させるために考えられた、多目的都市開発である KING Toronto の意欲的なビジョンを実現しています。緑あふれるガーデンを擁するテラス設計を採用して、光、空気、景観を最大限に生かしています。DSA は、都市生活の新たな可能性の追求に貢献しています。サステナビリティをはじめに優先して設計の意思決定を最適化し、地球、人、ビジネスにとって有意義な結果を生み出します。

バルコニー ガーデンと都市景観を表した、KING Toronto の住宅の内観レンダリング

KING Toronto の起伏のある形状は、生物の多様性を受け入れ、視界を最大限に広げ、年間を通じて近隣に日照が届くようにするために考えられたものです。

快適で暮らしやすい都市環境へのビジョン

トロントのダウンタウン、King Street West の中心ではクリエイティブなコミュニティ プロジェクトが進んでおり、建築と都市開発のチームが、都市生活の新しいモデルを創造しています。KING Toronto の開発計画は、従来の高層タワーの常識を破るものです。歴史的な赤レンガの建物群から 16 階建ての新しい建物が姿を見せることになります。コンドミニアム ユニットがピクセルのように積み重なり、丘のように起伏のある景観が作り出されます。

店舗、オフィス、400 戸以上の住宅が複合する KING Toronto は、テラス、バルコニー、緑の屋根から伸びるつる性植物と庭園を特徴とします。ガラス ブロックが建物のファサードに明るさを添えます。中心にある公共広場はコミュニティを結び、近隣の歩道網のハブとして機能します。

コミュニティを育む建築

  • 海岸線を背景にして建物の緑の屋根と庭が見える、KING Toronto のペントハウス レベルのレンダリング

    KING Toronto のピクセル形状の建物は、1967 年のモントリオール万国博覧会のためにプレハブのコンクリート ユニットによって建設された象徴的なモデル コミュニティ、Habitat 67 からヒントを得て作られました。

  • 街路レベルから山頂のような最上階まで、住宅ユニットがそびえ立つ、KING Toronto の夜間のレンダリング

    ユニットを街区に沿って配するのではなく、45 度に向けることで、日当たりと風通しを良くしています。

  • KING Toronto の公共広場のレンダリング。中心にガーデン エリアがあり、つる性植物で覆われたガラス ブロックのファサードがその上部に伸びている

    木、庭、つる性植物によって都市環境に自然を統合。公共広場がコミュニティの中心的な存在となっています。

ビジョンの実現

この都市コミュニティのビジョンを実現するために、KING Toronto のデベロッパーである WestbankAllied は、革新的な建築会社 Bjarke Ingels Group(BIG)を起用し、プロジェクトの設計ソリューションの策定を依頼しました。2015 年からは、Diamond Schmitt Architects(DSA)がエグゼクティブ アーキテクトとして加わりました。

DSA は持続可能な設計の業界リーダーであり、建物が密集する都会の環境での専門技術を持っています。同社の本社は、KING Toronto の現場から 1 ブロック先にあります。「私たちはこの都市を熟知しており、近隣ともと親しい関係にあります」と DSA のプロジェクト建築設計主任である Liviu Budur 氏は述べています。同社は、新しい民間開発および市所有の開発に対するトロントの持続可能な設計の要件である Toronto Green Standard でも中心的な役割も担っています。

Budur 氏はエグゼクティブ アーキテクトとして次のように語っています。「当社の設計の役割は、建設地のプランと規格要件に適合した設計を実現することでした。チームはそのような設計を、施工や製作の協力会社が作業に使用する書類に組み込んでいきました。また、自治体からさまざまなレベルで承認を得るための書類を作成しました」

KING Toronto の開発における DSA の役割は、設計目標、建設コスト、地域市場のニーズのバランスを図ることでした。「このプロジェクトは明らかに、どこにでもあるようなものではありません。建物のジオメトリは独特で、すべてがピクセル化され、角度が付けられています」と Budur 氏は言います。「計画の承認は通常、これまでの例とマスター計画に基づきます。しかし、このようなものはどこにも存在しません。都市プランナーですら、どう対応していいのかわかりませんでした」

KING Toronto のガラス ブロック ファサードの夜間のレンダリング。45 度の角度で並ぶ住宅ユニットはつる性植物に覆われ、明かりがともっている

設計の特徴的な要素であるガラス ブロックのファサードは、昼間は日差しを集め、夜間は景観を明るくし、都市環境を向上させます。

BIM テクノロジーでオプションを探る

DSA チームは、BIM テクノロジーを用いて予算内で建設可能なソリューションを考え、構造、エンベロープ、クラッディング材料、機械・電気・情報技術システム、景観、バイオフィリア(生命と自然とのつながり)といった建築を構成する要素の主要なカテゴリごとにさまざまなシステム オプションを調査しました。

3D モデルは、チームを結ぶ一元化された共通データ環境として機能し、クラウドでのコラボレーションとバージョン管理を可能にします。「プロジェクトの中心となるのが Revit です。それ以外はプラグインか補助機能を利用できます」と、DSA のアソシエイト アーキテクトの Cameron Turvey 氏は述べています。「このプロジェクトでは、ピクセル形状を具体的な建設図書に落とし込むことが非常に重要でした。Revit を利用してプロジェクトを展開して平坦化し、3D ビュー、平坦化ビュー、オーバーレイ ビューを使用して表現するさまざまな方法を探しました」

KING Toronto のレンダリング。街路レベルから見た赤レンガの歴史的な建築物の上に、モジュール式の新しい建設ユニットが山のような姿で存在している

修復された赤レンガの建物は KING Toronto の構造物の基礎に組み込まれ、近隣の歴史を大切に残しています。

新旧のブレンド

KING Toronto の設計では、3 棟の歴史的なレンガ造り建物を組み込み、産業革命時代のこの地域の建築史を保存するという課題もありました。ERA Architects はこのプロジェクトの歴史的建築物の設計を担当していて、保存計画を策定し、市の遺産計画部門の承認を受ける必要がありました。

「保存計画が進むと、ERA と私たちで調整を行いました」と Turvey 氏は言い、さらに次のように述べています。「大きな懸念は、古い建物の窓の高さが設計意図に対して均一でないという点でした。2 つの建物にはベタ基礎が残っており、床板の高さがもう 1 つの建物とは完全に異なっていました」チームは Revit モデルを活用して、歴史的な建造物の床のオフセット高さを取得し、新しい床の高さを作成して、ガス、吸気口、排気ファンなどの主要な設備との接続を実現できました。

イノベーションによって美しさと持続可能性を融合

KING Toronto プロジェクトでは、当初から持続可能性を最優先にし、LEED Gold の規格を達成して、Toronto Green Standard を満たすことを目指していました。しかし、ピクセル状のデザインでは、表面積と体積が単純な矩形形状のほぼ倍になります。「持続可能性の目標を達成するには効率性に優れたエンベロープが必要であるということが、早い段階でわかりました」と Turvey 氏は言います。

もう 1 つの課題は、隣接する敷地への雨水の流出を防ぐことでした。「巨大な地下雨水貯留タンクを導入し、緑の屋根やプランターへの水やりにその水を使用する方法を見つけなければなりませんでした」と Turvey 氏は語っています。

問題の解決には、設計の決定に関してリアルタイムのフィードバックを提供するエネルギー モデルが不可欠でした。このモデルの情報によって建物ファサードの最終的な構成が決まりました。「ファサード パネルは、半透明、透明、不透明の 3 つの主要コンポーネントで構成されており、それぞれが異なる熱効率を持ちます」と Turvey 氏は説明します。「各タイプの比率の決定には、エネルギー モデル ツールを使用する必要がありました」

KING Toronto のユニークなガラス ブロック ファサードの設計と製造には、徹底的なリサーチと革新的な思考が必要でした。通常、ガラス ブロックはレンガ組積造と同じ方法で組み立てられます。つまり、それぞれを重ね合わせ、モルタルで結合します。「この工法は、南カリフォルニアのような気候に合わせられています」と Budur 氏は言います。 「トロントで使用する場合は、寒い冬に合うようにするという課題がありました。それには、組積造の考え方を覆す必要がありました」

King Toronto では、ガラス ブロックの美しさとカーテン ウォール システムの強度と断熱性を融合させるという打開策に至りました。柔軟性を高めるために、個々のブロックはシリコン ジョイントを使用して大きなパネルに結合されました。これらのパネルは、半透明のガラス ブロック、三重ガラスの窓、遮熱パネル付き不透明ガラス ブロックの重量と厚みに耐えられるように設計されたアルミニウム フレームのクラッディング システムに取り付けられています。「あらゆるものが工場で組み立てやすいように準備され、現地に運ばれます」と Turvey 氏は言います。

バルコニー ガーデンと都市景観を表した、KING Toronto の住宅の内観レンダリング

KING Toronto の住宅の内観ビュー。

リモートでのコラボレーションで作業を実施

このプロジェクトの途中で、COVID-19 のパンデミックが発生しました。2020 年 3 月に、DSA は全国 315 人の従業員を自宅勤務に移行させました。「既にハイブリッド クラウド テクノロジー環境を導入していため、スタッフはどこにいても作業ができ、仕事と生活のバランスを向上させることができました」と Turvey 氏は述べます。「プロジェクト チーム全体が分散していても、作業進行の中断を最小限に抑えながら連携を維持できました」

BIM 360 が KING Toronto チームのプラットフォームとなり、現場での変更を建築、構造、機械、電気の各部門のコンサルタントと共有できるようになっています。「チーム間の調整に時間がかからないため、リアルタイムで更新して、その結果を確認できます」と Turvey 氏は話します。この方法を用いたことにより、別のモデルやマークアップを交換しなくても、ファサード パネル、構造フレーム、設備配電に迅速に変更を加えることができました。

地下の建設作業の様子と街路レベルの歴史的構造物のファサードが写された、KING Toronto の建設現場の航空写真。

KING Toronto の現場作業の様子。道路正面の歴史的なレンガ造りのファサードは修復され、新しい建物と統合されます。画像提供: Westbank

建設作業が進む KING Toronto

KING Toronto プロジェクトでの掘削工事は 2021 年半ばから始まり、2022 年初めからは地下層の建設が進んでいます。このプロジェクトは、エネルギー モデルで開発した効率性の高いエンベロープによって、Toronto Green Standard Tier 1 に適合しており、LEED Gold 認証の取得も目指しています。KING Toronto は 2025 年春までに完成する予定です。

施工の進行とともに、Revit で作成した BIM モデルがプロジェクトの信頼できる一元的な情報ソースとなります。「最初の設計を見て、地域のランドマークとなることは予想できましたが、数多くの課題があることもわかりました。その過程で開発した革新的な打開策は、私たちの想像をはるかに超えるものでした」と Budur 氏は述べています。BIM を使用することによって、「壮大なアイデアを、建設という現実に即して実現する方法を見出したのです」

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