Gammon Construction
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新たな可能性
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Gammon Construction 社は、香港における製造・建設業拡大の取り組みの一環である「先進製造業中心」(AMC:Advanced Manufacturing Centre) の建設プロジェクトを、最新の業界標準に従って実施しました。同社は政府の掲げる「Construction 2.0」イニシアティブに示されるイノベーションの実践方法に従って、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)、デジタル ツイン、DfMA(製造組立容易性設計)を活用し、安全かつ迅速な施工を実現しました。また、地域の建設業界の活性化につながる新たな専門スキルを促進することを目的に、研修指導も実施しました。
香港のチョンクワンオウに建設された「先進製造業中心」(AMC:Advanced Manufacturing Centre) は、さまざまな産業を支援できるように設計された、拡張性に優れた高度な 9 階建ての産業施設です。画像提供:Gammon Construction
香港は今、再工業化を促進しています。政府は製造業界を再活性化し、経済状況を強化し、新たな機会を生み出し、優秀な人材を維持するために、数十億ドルの予算を拠出しています。そして「先進製造業中心」(AMC:Advanced Manufacturing Centre) の建設は、この取り組みにおける中心的なプロジェクトの 1 つです。広さ約 110 万平方フィート(約 102,200 平方メートル)のこの施設は、革新的な製造プロセスやテクノロジー(3D プリント、ロボット工学、プロトタイピング・アセンブリ・ロジスティクス・ストレージの共有サービスなど)を支援するための設計になっています。
最新の産業要件に準拠した方法で AMC を建設するには、高度なテクノロジーとデジタル化された建設プロセスの合理化されたデジタル コンストラクションが必要でした。このプロジェクトを監督する公共団体の香港科学技術公園公社 (Hong Kong Science and Technology Parks Corporation) は、Construction 2.0 の実践方法を研究しました。Construction 2.0 とは、イノベーション、プロフェッショナリズム、再生という 3 つの柱にフォーカスして、建設業界を改革およびアップグレードすることを目指すイニシアチブです。
そして香港に本社を置く建設・エンジニアリング請負業者の Gammon Construction 社(英語) は、AMC の施工と、建物開発および建設プロセスに Construction 2.0 を組み込む業務を任されました。Gammon 社はテクノロジーを活用することで、労働力不足や現場の安全面問題に対処し、施工期間を短縮し、高度な製造業施設に特有のさまざまな課題を解決することに成功しました。
AMC プロジェクト チームは、設計の調整から各種工事の監督まで、プロジェクトのライフサイクル全体を通じて BIM ツールとテクノロジーを活用し、コストや安全面のリスク、施工期間を削減することに成功しました。画像提供:Gammon Construction
Gammon 社は、香港および東南アジアにおける複雑な総合建設プロジェクトを手がけてきたことで有名です。その豊富な経験の中で蓄積してきたリソースやイノベーション力のすべてを、この AMC プロジェクトに注ぎ込みました。同社のチームは、「Construction 2.0」イニシアティブによってもたらされた業界の変化に従って、プロジェクトのライフサイクル全体を通じて BIM を使用しました。Revit と Navisworks を使用して 3D BIM モデルを開発し、デジタル ツイン を作成することが、プロジェクト初期からの主な戦略でした。
「私たちは、エンジニアや作業員、監督者などの関係者が、実際の作業に入る前にシミュレーションできるように、デジタル ツインをワークショップで使用しました」と Gammon Construction 社のディレクター、Sammy Lai 氏は言います。「そうすることで、関係者は手順を理解したうえで一連の作業を設計し、ワークフローを決定することができました」 同社はまた、このデジタル ツインで干渉検出や施工可能性解析を行い、安全性や設計上の問題を確認しました。「作業を最初からうまく調整しながら適切に進めることで、高品質な成果が得られます」と、Lai 氏は言います。
建築コンポーネントが色分けされて表示される AMC の断面図。建築コンポーネントの約 75% が DfMA および MiMEP のプレハブ工法で組み立てられました。画像提供:Gammon Construction
Gammon 社は、製造組立容易性設計(DfMA)や機械・電気・配管の複数分野を統合した(MiMEP)などの最新手法を、従来の施工技術と組み合わせました。DfMA のプレハブ工法では、現場以外で建物のコンポーネントを製造し、現場で組み立てて設置します。また、MiMEP では、機械・電気・配管の各コンポーネントに DfMA を取り入れます。
同社は、7,000 個を超える MiMEP モジュールを製造・施工するために、現場以外に 3 基、そして現場に 1 基、工場を建設しました。そしてこれにより、プロセスが大幅に効率的になりました。「かつて MEP コンポーネントの設置には、サブコンや作業員に工場の部屋を引き渡した後、30 ~ 45 日ほどかかったものです」と、Lai 氏は言います。「しかし今では、1 日で設置が完了します」
Gammon 社は、DfMA と MiMEP によって時間とコストを節約できるとともに、施工の安全性や労働力不足などの幅広い問題を解決できることに気づきました。「工場の環境を適切に管理できるようになり、特に高齢の作業員にとって、現場での施工作業が以前よりもはるかに安全になりました」と、Lai 氏は言います。「昨今の労働力不足の状況では、現場よりも工場で働く人を雇う方が簡単です」
そして Gammon 社は施工をさらにスピードアップさせるために、プレキャスト コンクリート二重 T 形スラブを使用しました。「最初の構造設計では、非常に厚いスラブのフラット スラブ構造となっていましたが、ご想像通り、この構造を施工するには、大量のコンクリートを注ぎ込む必要があります」と、Lai 氏は言います。「また、作業順序やロジスティクスの問題もありました。しかし、そこでプレキャスト二重 T 形スラブを使用すれば、同じ構造性能を満たしつつ、コンクリートの量を 60% 削減し、廃棄物を削減することもできます」
Gammon 社は、サブコン各社が簡単、迅速、効率的に変更を開始できるように、モバイル アプリを導入しました。画像提供:Gammon Construction
変更管理は、Gammon 社が直面していた最大の課題の 1 つでした。AMC のような大規模なプロジェクトで、変更指示を開始するということは、すべての関係者から理解と同意を得る必要があるということであり、これは非常に手間がかかります。そこで Gammon 社は、この変更管理に対処する方法の 1 つとして、モバイル アプリを新たに導入しました。サブコンはこのアプリに搭載される拡張現実などのテクノロジーを使用することで、簡単、迅速、効率的に引き継ぎできるようになりました。
「このアプリが目的に合うものかどうかを見極めるために、監督者、サブコン、作業員、管理チームなどの関係者をすべて集めてこのアプリを導入し、試してみました」と、Lai 氏は話します。「決して簡単ではありませんでしたが、私は早い段階から各関係者とコミュニケーションをとりながら、彼らの直面している問題について理解し、解決策を探しました。また、必要に応じてサポートしたり、励ましたりしながら積極的にアプリを試し、役立つかどうかを確認してもらいました」
さらに同社は、絶えず変化し続ける現場の状況を追跡するためのワークフローも開発しました。施工チームからの最新情報や、プロジェクトで使用されるデジタル ツールから取得されたデータ、レーザー スキャナーやドローン、360 度カメラでキャプチャされた画像やデータなどを活用したワークフローです。この BIM モデルを反復的に更新していく方法によって、最終的な現況モデルとデータを効率的に作成し、施設管理チームに引き継ぐことができるようになりました。
「イノベーションは市場競争力を維持するための鍵となります。大変な労働がすべて機械によって自動化されるのにはまだ先の話になりますが、イノベーションやデジタル化によって生産性が向上し、労働力の問題に対処しやすくなります。今後数年間に向けた当社のビジョンは、クライアントと建設業界全体の利益のために、テクノロジーの限界を超えて、Gammon の変革を進めていくことです」
— Gammon Construction 社 ディレクター/Sammy Lai 氏
Gammon 社のチームは、AMC の BIM モデルを常に最新の状態に保つために、写真から測量データを取得する「フォトグラメトリー」という科学的な手法を活用しました。画像提供:Gammon Construction
3D BIM 環境やデジタル デリバリーの建設現場への導入を加速させるために、Gammon 社は研修を通じたスキル開発にも力を入れています。同社では、ほとんどのチームが BIM と DfMA の研修を受けています。また、プロフェッショナリズムを高め、会社を最新鋭化するためには、さまざまなメンタリングも不可欠なツールとなることを発見しました。
「メンタリングを通して、適切なスキルを持つ人材を見つけることができるほか、トレーニングを実施して人材のスキルレベルを上げることもできます」と、Lai 氏は言います。「ただし最も重要なのは、適切な意識と姿勢を保ことです」 Gammon 社はこれを実現するために、後輩が先輩から学ぶ従来のメンタリングと、後輩が先輩を指導する逆メンタリングを実施しました。「若い人材は、生まれながらのデジタル ネイティブで、考え方が異なります。上の世代の人材は、そうした若い世代から、新しいデジタル アプリケーションや施工テクノロジーについて学ぶことができます」と、Lai 氏は言います。
メンタリング活動はそれ以外に、学習やヒアリング、オープン性、チームワークを育む作業環境の促進にも役立ちました。「経験豊富な人材が若いエンジニアと一緒に働くことで、絆が生まれます」と、Lai 氏は言います。「当社では誰もが同じ目標の達成を目指して全力を尽くし、積極的に問題について話し合い、協力しながら解決しています」 Gammon 社では、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(受容性)の文化も取り入れています。「当社のチームには高齢の従業員と若い従業員が混在し、女性の割合はチームの約 20% です。女性はエンジニア、アシスタント プロジェクト マネージャー、マネージャーなど、さまざまな職務や役職に就いています」
AMC の自動化された物流機器を示す、工場設備の 3D モデル。画像提供:Gammon Construction
香港 AMC は 2022 年春に正式にオープンしました。AMC プロジェクトにおける Gammon 社の取り組みは、香港の建設業界活性化に向けた第一歩となりました。このプロジェクトにおける施工テクノロジーの画期的な活用が評価され、同社は「オートデスク香港 BIM アワード」を受賞しました。経験によって培われた同社の手法は、デジタル トランスフォーメーションに取り組んでいる他の企業にとっても参考になるでしょう。
Lay 氏は、デジタル化によって、若い世代がこの業界にもっと興味をもつようになるだろうと、業界の未来を思い描いています。「求められるスキルセットは変化するでしょう。エンジニアリングと建設だけではなく、工場の管理、物流の管理、さらにはソフトウェア開発等のスキルも必要になるでしょう。たとえば当社では、さらに多くのエンジニアを雇用するようになったと同時に、工場管理者や物流管理者の雇用も増やし、互いの専門知識を共有しています。
建設業界ではパラダイム シフトが進み、オフサイト製造が幅広く活用されるようになり、建設のシーケンスやワークフローをデジタル ツールでコントロールするようになるでしょう。私たちは意識を変え、デジタルな未来に向かって進化していかなくてはなりません」