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標準製品とカスタム製品のギャップを埋める

DESIGN & MANUFACTURING

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画像提供:GEA 社

Autodesk Inventor と Vault を使用して、標準コンポーネントからカスタム システムを非常にスピーディーに製造している産業用加工システムのプロバイダー

GEA 社は、食品、乳製品、飲料をはじめとする幅広い業界向けに、大規模な産業用加工システムを製造しています。こうしたシステムでは、ポンプやバルブなどの類似したコンポーネントが、さまざまに異なる方法で使用されます。GEA 社の OneEngineering プログラムは、Autodesk Inventor、iLogic(Inventor の自動化テクノロジー)、Autodesk Vault を使用して「モデルの強化」を行います。社内チームはこの「モデルの強化」の手法によって、設計パラメーターを調整するだけで、標準コンポーネントからカスタム システムを自動的に作成できます。

GEA 社のプロセスは、この手法によって大幅に効率化され、エンジニアリング時間が 3 週間から 2 時間までに短縮しました。

稼働し続けるために

読者の皆さんは、たとえ GEA 社の直接的な顧客でなくても、きっとどこかで同社のソリューションから生まれた成果物に触れたことがあるでしょう。世界のチキン ナゲットの 3 分の 1、ビールの半分は、GEA 社のテクノロジーを利用して生産されています。

ドイツのデュッセルドルフを拠点とする GEA 社は、加工システムとソリューションを提供する世界最大手のサプライヤーの 1 つです。同社の製品は、食品、乳製品、飲料、医薬品、化学薬品、海洋、公共事業の業界で使用されています。GEA 社のポートフォリオには膨大な種類の製品が含まれます。コンプレッサー、バルブ、ポンプから、蒸留・発酵システム、蒸発器、晶析装置、洗浄器、滅菌器まで、幅広い種類の機器やシステムを提供しています。

Cupcake injector equipment built by GEA

GEA 社製のカップケーキ注入装置画像提供:GEA 社

GEA 社は、幅広い業界に対して、2 種類の方法で事業を展開しています。まず 1 つ目に、同社は標準製品のカタログを提供し、個々の顧客のニーズに合わせてパフォーマンス パラメーターを設定した上で注文できるシステムを構築しています(例えば前述のチキン ナゲットの加工機械がこれに含まれます)。そして 2 つ目に、顧客の加工プロセスにおける新たな課題の解決をサポートするカスタム ソリューションを構築しています。この 2 つ目の事業は、OneEngineering というプログラムによって合理化されています。このプログラムを主に担当しているのが、Bhavik Suthar 氏、Dutt Thakar 氏、Lune Riezebos 氏です。

「例えば、顧客が新製品の冷凍ピザをリリースすることになり、新しい製造機械が必要となったときなどに、ソリューションを提供します」と、GEA 社のサービス デリバリー部門アプリケーション スペシャリストである Lune Riezebos 氏は話します。「顧客の依頼に基づき、工場内のシステムをすべて設計するのです」

iLogic の活用

Riezebos 氏、Suthar 氏 および Thakar 氏の仕事には、Autodesk Inventor と Autodesk Vault が欠かせません。「私はこれまで 20 年間、エンジニアリング業務で主に Inventor を使用してきました」と、Riezebos 氏は話します。「Inventor と Vault の両方をサポートしています。これらのツールの新機能は常にチェックし、GEA で全社的に活用する方法を検討しています」

GEA 社にとって最も重要な機能の 1 つが、Inventor に搭載される iLogic です。専門的な各種ツールを備えた iLogic を利用して、エンジニアは特定のコンポーネントやアセンブリをキャプチャおよび再利用しながらルール ベースの設計を行えます。また、iLogic では、パーツのジオメトリの変更やパラメーター値の変更などのトリガーに基づいて、パーツを自動的に更新できます。GEA 社では、標準製品とカスタム製品のギャップを埋める重要な役割を iLogic が担っています。

Lune Riezebos, Application Specialist for GEA's OneEngineering team

GEA 社 OneEngineering チーム アプリケーション スペシャリスト/Lune Riezebos 氏
画像提供:GEA 社

「当社では、社内チーム用に設定可能なモデルを作成しています。これを利用することで、チームのワークフローが容易になります」と、シニア デザイン エンジニアの Dutt Thakar 氏は話します。「設定可能なモデルを利用することで、プロジェクトで毎回モデルを一から作成せずに済むため、作業時間を大幅に節約できます」

大規模な加工システムには、コンプレッサー、ポンプ、バルブ、コントローラー、ミキサー、ホモジナイザーなどの同種類のコンポーネントが、各システムに特有の設定で多数使用されます。Thakar 氏や Suthar 氏、その他のエンジニアは、iLogic ツールを使用して「パラメトリック スケルトン」を作成します。標準製品チームは、これを調整することで新しいモデルを自動的に作成できます。チームはこれを「モデルの強化」と呼んでいます。

「私たちは定期的に、GEA 社の特定の加工プロセスや加工機械の複雑な仕組みに精通しているエキスパートとミーティングを行います」と Riezebos 氏は言います。「エキスパートは私たちに、追加の絶縁付きノズルなど、利用可能なパラメーターについて説明します。私たちに必要な情報はそれだけです。その情報をもとに、パラメーターを調整しながらさまざまな設定に自動的に変更できるモデルを構築します」

こうしてモデルの強化を繰り返しながらコンポーネントのライブラリを作成します。このライブラリは、個々の目的に合わせて調整しながら何度も再利用できるため、標準化された製品のカスタマイズが容易になります。

「『モデルの強化』の優れた点は、標準化されたアプローチがなくても、標準化された機械を自動的に作成できることです」と、シニア デザイン エンジニアの Bhavik Suthar 氏は言います。「Inventor の iLogic を使用して、どのようなコンポーネントでも標準化できるような方法でモデルを作成しています」

Water pump created by GEA's OneEngineering team

GEA 社の OneEngineering チームが作成した給水ポンプ画像提供:GEA 社

エラーの削減、迅速な成果

iLogic による設計の自動化は、プロジェクトの経過や要件の成熟に合わせて拡張できます。GEA 社は設計の自動化に集中的に取り組んだ結果、多大な成果を得ることができました。「iLogic は、ロジックを簡単に実装して設計プロセスを迅速化したい機械エンジニア向けのプログラムと言われています」と Suthar 氏は話します。「GEA のエンジニアは、進行中のプロジェクトで iLogic を活用することで、非常に大きなメリットを得ることができました」

「iLogic を活用すれば、既存の設計について心配する必要がなくなります。そのためエンジニアや設計者には新製品の開発やイノベーションに取り組む余裕が生まれ、新製品の開発や既存製品の設計改善にフォーカスできるようになります。その結果、GEA 社はイノベーションにさらに取り組み、よりサステナブルなソリューションを提供できるようになります」と Thakar 氏は話します。

Exhaust lid created by GEA's OneEngineering team

GEA 社の OneEngineering チームが作成した排気口の蓋画像提供:GEA 社

「3 週間でなく、たった 2 時間で新しいモデルを作成できるということを、社内の各部門に示しました」と Riezebos 氏は言います。「システムの複雑さに応じて、エンジニアリング時間を 30% ~ 80% 短縮できます。おかげで、顧客のニーズに応じた製品の提供が非常に容易になります」

製品を標準化することも、コスト効率の改善につながります。標準化されたコンポーネントを使用すれば、調達が必要な在庫量や、一度限りの製造プロセスが減ります。プレス加工用のプレートをたった一度だけ使うのではなく、受注したパーツに加えて、今後製造予定の 4 つの機械に使用するパーツも一緒に作成できます。

「『モデルの強化』のもう 1 つの大きなメリットは、その精度です」と Riezebos 氏は言います。「すべてのパーツを Vault の正確なコンテナに保存すれば、小さなバルブや O リングを忘れるなどのミスをすることもありません」iLogic テンプレートには、すべてのパーツが含まれています。Inventor がうっかりパーツを忘れてしまうようなミスを犯すことはないため、人的エラーのリスクを回避できます」

このようにエラーを最小限に抑えることで、あらゆるシステムの製造コストを削減できます。Riezebos 氏は自身の経験を踏まえてこう説明します。「図面の変更にかかるコストを X とすると、生産フェーズで同じ変更を適用するにはその 10 倍のコストがかかり、さらに現地にシステムを設置した後に同じ変更を行うためには 100 倍のコストがかかります」

「3 週間でなく、たった 2 時間で新しいモデルを作成できるということを、社内の各部門に示しました。システムの複雑さに応じて、エンジニアリング時間を 30% ~ 80% 短縮できます。おかげで、顧客のニーズに応じた製品の提供が非常に容易になります」

—GEA 社 サービス デリバリー部門アプリケーション スペシャリスト/Lune Riezebos 氏

iLogic を顧客に拡大

GEA 社は将来を見すえて「モデルの強化」のメリットを顧客へ拡大するために、Autodesk Forge を活用することを検討しています。Autodesk Forge のプラットフォームを使用すれば、GEA 社内の製品チームと同じように顧客もクラウド上の設計・エンジニアリング データにアクセスし、独自の設定の製品を注文できるようになります。

「当社には、さまざまな顧客の現場に向けたシステムが多数あります」と Riezebos 氏は話します。「私たちは現在、Inventor を所有していない顧客でも、Forge にデータを入力するだけで独自のモデルを作成できるようなシステムの開発を検討していますが、まだ調査を進めている段階です」

GEA 社はすでに、標準化されたシステムと完全にカスタマイズされたソリューションとの間のギャップを Inventor と Vault によって埋めることができました。「iLogic によって作業時間を大幅に削減でき、質の高い成果が得られます」と Riezebos 氏は話します。

Bhavik Suthar and Dutt Thakar, Senior Design Engineers at GEA

GEA 社シニア デザイン エンジニア/Bhavik Suthar 氏および Dutt Thakar
氏画像提供:GEA 社

コレクションの利用を始めましょう

Product Design & Manufacturing Collection に含まれる自動化ツールは、プロジェクトの進行に伴って拡張可能なソリューションです。また、カスタム製品のコンフィギュレーター、図面作成、ツールパス、シミュレーションのセットアップなどのさまざまな作業に適用する規則を定義する上で、コレクションに含まれる製品が役立ちます。

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