株式会社ジェイコフ
株式会社ジェイコフ
AUTOCAD® PLANT 3D + NAVISWORKS® + REVIT® + INVENTOR® + VRED® PROFESSIONAL
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売上高も Plant 3D 導入前に競べ約 1.7 倍に成長しました 3D 設計が全てではありませんが、原動力の一つなのは確実です
私たちが 3D 設計に取り組み始めた頃は、お客様の方から「 3D でやってくれ」なんて依頼はほとんどなくて……それどころか「 2 次元で」と言われていたのに勝手に 3D で設計して「どうですか?」という形で売り込んでいく状態が何年か続きました。そのとき失敗だったのは、プラントの完成した 3D モデルを持っていっていたこと。そんな「出来上がっているもの」を持っていっても、クルクル回してみて「あー綺麗だね」で終わりです。そのことに気付いてからは、設計の途中でどんどん 3D モデルを持っていって、変更や修正への対応も立体で打合せるようにしました。そうすることで、お客様の方も気付いてくださったのです。「あ、3 次元ってこんなに分かりやすいんだ!」と。
砂村和彦 氏
株式会社ジェイコフ 代表取締役社長
Plant 3D でモデリングした 3D データ
大阪市西区に本社を置く株式会社ジェイコフは、各種プラントの配管や架台構成品の設計を専門とするプラント設計のプロ集団である。特に下水処理や屎尿処理施設を中心に、発電所や各種一般工場まで幅広い分野のプラント設計を行っている。一般にプラントの能力や耐久性は配管設計の品質に左右されると言われるが、ジェイコフは豊富に蓄積したノウハウと共に、業界で最も早く導入した 3D 設計の多彩な活用により配管のレイアウトを最適化。プラントが備えているポテンシャルを最大限に引き出すプラント設計を可能としている。そんな同社の 3D 設計に関わる取り組みの第一歩は、2011 年のオートデスク製品の導入だった。
「始まりは、私の父である先代社長の“これからは 3D や!”という一声からだったと聞いています」。そう語るのは、現社長として同社を牽引する砂村和彦氏である。砂村氏は証券会社等の異業種での勤務を経て 2013 年に同社へ入社したが、この時すでにオートデスクの別の 3D CAD が導入されていた。しかし、当時はまだ、お客様から 3D 設計で描いて欲しいという依頼はなく、自主的に 3D で描いて提案してもほとんど良い反応は返ってこなかった。3D で描かれていて綺麗だが、それだけでは意味が無い、と言われることが多かったのだ。
「お客様へのアピールには失敗しましたが、それでも、3D 設計が当社にとって強力な武器になるのは確実でした。そのことは異分野出身の私にも分かりましたし、今後を見据えた他社差別化の戦略も、これを取っ掛かりに進めようと考えました」。そのためにはさらに 3D 設計を徹底し、3D のメリットをお客様に分かりやすく伝えなければならない。だからこそ、より使いやすい 3D CAD に切り替える必要があった──と砂村氏は言う。そして、その意見はエンジニアたちの賛同を得て、改めて 3D CAD 製品を選定し直すことになったのである。
「その結果、私たちが選んだのが、オートデスクの別の 3D CAD 製品である AutoCAD Plant 3D(以下 Plant 3D )でした」。
Navisworks の活用
Plant 3D の選定理由は三つあった、と砂村氏は語る。一つはこれが将来も統廃合等されず安定して使い続けられると思えるメーカー……オートデスクの製品だったこと。二つ目は配管アイソメ図の自動作成機能を備えていたこと。そして最後に、そうした機能を持つにも関わらず、Plant 3D は他社製品に比べて安価で入手することができた点である。
「当社はプラント配管主体に展開しているので、自分たちが作った 3D モデルから自動的にアイソメを抽出できれば、作業は大いに効率化できるのです」。アイソメ作成はそれほど重要かつ手間がかかる作業だった。エンジニア部隊を統括し、自身 Plant 3D で設計を行う部長の轟英敏氏は語る。
「以前使っていた 3D CAD は 2D ベースの手描きに近いシステムで、2D で作図後にそれを 3 次元化していくスタイルでした。ところが、Plant 3D はダイレクトに 3 次元モデルを作って描いていく、本格的な 3D 設計ツールだったのです」。
まさにここから同社の本格的な 3 次元設計チャレンジが始まったのだと言えよう。となれば、次の課題はもちろん「 3D のメリットをいかにアピールするか?」だ。砂村氏によれば、以前の失敗は 3D で描いた“完成形”をお客様に見せたことだった。
「すでに出来上がったモデルをお見せしても、クルクル回して“綺麗だね”で終りです。ならば逆に設計途中でどんどん 3D データを見せていこうと考えたのです。変更や修正が発生する設計途中で、以前は 2D 図面を使ってああでもない・こうでもないと議論していましたが、2D 図面では設計意図も伝わり難くく大変でした。だからこそ Plant 3D による立体で提案すれば、3D の分かりやすさ・便利さを実感していただける。そう考えました」。
既存設備をスキャンした点群データ
こうした経緯を経て、2015 年頃から 3D 設計とその 3D モデルを活かした同社の提案&打ち合せ活動が始まった。当初はそれでもなかなか普及が進まなかったが、やがて実際に 3D による打ち合わせを体験したお客様が増え、多くの方が 3D 設計を支持するようになっていった。当然といえば当然だろう。2D 図面を用いた打ち合せでは、お客様も膨大かつ多様な線が複雑に入り組んだ図面から、プラント配管という立体物をイメージしなければならない。しかし、3D モデルを使えば“配管そのもの”を好きな角度で自由に見られ、設計意図も容易に読み取れるのである。お客様にとっても設計者にとっても、それは大きなメリットだった。
「結果として、当社の設計はより正確かつ、高精度なものへ品質アップし、作業効率も速さも向上し、手戻りも減っていきました。そして、2017 年ごろをターニングポイントに一気に 3D 設計への依頼が拡大していったのです」。現在では同社が扱う案件の主だったものは、全て Plant 3D による 3D 設計で進められている。具体的には年間 100 件前後の受注のうち「 3D 化するまでもない」小案件を除いた 70 ~ 80 案件を、3D 設計している。「今ではもう、お客様から“ 3D データで”などとあらためて指定されることもありません。当社に発注すればおのずと 3D 設計で進む、と認識いただいているからです。結果、売上高も 3D 化前の約 1.7 倍に成長しました。もちろん売上げ向上の理由が全て 3D 設計というわけではありませんが、原動力の一つなのは間違いないでしょう」(砂村氏)。
一方、この 3D 体制の本格化と共に同社内で大きく変化したものがある。同社の設計スタイルだ。「 3D 設計の場合、作業そのものに設計要素を多く含むため、CAD スキルよりプラントの知識や経験が重要になります。ルート取りひとつ取っても“こういうルートで”と正解をジャッジするには一定の蓄積がなければ難しくなります」。裏返せば間違った判断をしても一見綺麗に描けてしまうのが 3D の怖い所です、と轟氏は苦笑いする。そこで同社では、プラント設計の知識経験を備えた熟練エンジニアが Plant 3D で基本的な設計を固め、仕上げ作業を若手や新人のエンジニアが担当する分業スタイルを取っている。3D モデルの完成後は必要に応じ 2D 化も行うが、これも若手エンジニアの担当だ。こうして若手は実務を通じてプラント設計の知識やノウハウを蓄積しながら、Plant 3D の操作に習熟していくのである。「もちろん、さらに知識を深めるには、プラントの現場を体感することも欠かせません。私も現場へ出る時は、できる限り若手を連れていくようにしています」(轟氏)。
左:砂村社長、右:轟 部長
いまやプラント設計業界の 3D 化を大きくリードするジェイコフだが、これを追うライバル各社の取り組みも近年急速に本格化している。同社ではさらなる差別化を目指す新たな展開を開始している。すなわち、3D データの幅広い活用を核とする高付加価値戦略だ。「2017 年導入の 3D レーザースキャナーの活用がその一つです。既設プラントの改造案件では、データ化以前の図面や信頼性に欠ける図面も多く、時には図面自体が無いことさえあって、現状の測定が欠かせません。以前は手で測りスケッチを描いていましたが、高所配管など足場なしで測れない場所も多く、膨大な手間と時間がかかっていました」(砂村氏)。この現状を打破するために導入したのが、3D レーザースキャンによる高速・高精度な 3D 計測の手法である。
「導入してすぐ現場へ投入しましたね。買ったからには使い倒さなければ(笑)。とにかく現場を一変させる技術ですから、Plant 3D の時と同じく、依頼が無くても持っていってどんどん 3D 計測しています」。そう砂村氏が語る通り本格的な普及はこれからだが、他方では、3D 計測で取得した点群データの活用を中心とした横展開も始まっている。「CAD データがない施設で 3D 計測してモデルを作り、2D 図面化したいという依頼や、プラント更新工事で大型機械を狭い通路経由で持ち込みたいなんて依頼もありました。後者は“通すもの”をモデル化し通る空間を 3D スキャンした上で点群への干渉チェックし、“通し方”を提案しました。その他、とりあえずプラントを3Dスキャンしモデル化したいという依頼も増えています」(轟氏)。
そして、新戦略のもう一つの柱となりつつあるのが、Plant 3D 以外のソフトも含めた、多彩なオートデスク製品による高付加価値化の取り組みである。
「Plant 3D から Navisworks の方に情報を入れ、数量を抽出する試みを進めています。加えて最近は BIM ソフトの Revit や製造向けの 3D CAD の Inventor 等の活用にも挑戦中です」(轟氏)。同社では設計作業の一環として、配管廻りの建築物も干渉物としてモデル化している。そこで、同時に Revit で BIM データも入れ込んだ、BIM モデルのパッケージ商品化を構想中だ。また Inventor についてはサポート等の構造物をモデル化し、パラメトリックに動かすことも計画中だ。「Navisworks や Revit 、Inventor の活用は今後早急に軌道に乗せていきますし、MR や VR 、AR 、ドローン等の活用も考えています。3D 化をきっかけに実に多様な可能性が開けた──そんな実感があります」(砂村氏)。
AutoCAD Plus (AutoCAD including specialized toolsets) に含まれる Plant 3D ツールセットなら、製造プラント設計でよく行うタスクの作業効率が改善されます。