恵みとも禍いともなる雨
米国の人口は過去 50 年で倍増し、国内の水供給システムは、増大する人口への対応に苦心してきました。さらにその状態は今後も続くことが予想されます。米国の大半の州が毎年水不足に悩まされている中、デカルブ郡は他の地域より 40% 多い降水量に恵まれています。
それは干ばつに苦しむ地域から見れば羨ましいことかもしれませんが、デカルブ郡の流域管理局にとっては諸刃の剣であり、降雨管理に力を入れなければならないことを意味します。
Jacobs Engineering 社は、完全な降雨状況や、潜在的な漏水の可能性、それらがシステムに与える影響を完全に把握するために、InfoWorks ICM(統合型集水域モデリング)を使用して包括的な地下水浸透モデル (GIM) を作成し、デカルブ郡の集水系の雨天時の流量を調整しました。
RTK と GIM の比較:雨の多い冬を正確に予測
デカルブ郡は、雨天時の流量をモデルに反映させ、雨水の流水・浸透 (RDII) をより正確に評価できる高度なシステムを模索しました。特に、雨の多い冬の時期の地下水の変化を考慮することが課題となりました。
デカルブ郡の流域管理局の主任技師を務める Linda Li 氏は、こう話します。「運が良ければ、地下水は年間を通じて一定に保持されるでしょう。しかし、デカルブ郡の流量計の大半は、季節や天候によって地下水が変化していることを示しています。冬の基本流量は、乾季のほぼ 2 倍になります」
「GIM は、先行水分条件や降雨に対する高い抑制反応による影響のシミュレーションで最適な結果を示しています」
— デカルブ郡流域管理局 主任技師/ Linda Li 氏
雪がもたらす影響
雪が降ると、RDII を正確に把握することは、より複雑になります。RTK (リアルタイム キネマティック)法でアプローチするのもひとつの方法ですが、この方法は、大量の降雨、降雪、融雪の要素が加わると、正確さが低下してしまいます。そこでデカルプ郡と Jacobs 社は、降雨現象に対する RDII の反応を把握するために、一般的な RTK 法に頼るのではなく、雨天時の流量のモデル化における柔軟性と精度が高い InfoWorks ICM の地下水浸透モデル (GIM) を採用することにしました。
「RDII モデルは、浸透流入の低減・改善プログラムにおける意思決定には有用ですが、非常に複雑なプロセスに基づいた仮定や概念表現に制限されてしまいます。GIM は、先行水分条件や降雨に対する高い抑制反応による影響のシミュレーションで最適な結果を示しています」
課題に対する 2 つのアプローチ
RDII モデルではなく GIM モデルを採用することを決定後、土壌と地盤の貯留をどの程度包括的に GIM で調整すべきかを理解する必要がありました。「地下水が大きく変化する場合、一部の地下水の最初の地層である土壌貯留層を追加するだけでは、表面流出モデルを活用することが難しくなります。ピーク流量を調整するには、反応の速いピーク流量を過大評価する必要があります」とLi 氏は言います。
チームはこのような複雑な問題や、プロジェクトのタイトなスケジュールに対応するために、GIM の土壌と地盤における貯留の調整に 2 つの手法を用いました。
- 手法 1: 部分的な調整。GIM の土壌貯留パラメータを調整し、月次乗数を使用して季節変動を算出します。
- 手法 2:完全な調整。季節変動を伴う浸透流入をより正確にモデル化するために、地盤貯留も含めて調整します。