Urbân 社
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オートデスク史上初めて完全にバーチャルで開催された Autodesk University 2020。最先端のテクノロジーを駆使する Urbân 社を創設し、経営している Nigel Hunt 氏が今年の AU プレゼンテーションで発表した主なテーマとプロジェクトのプレビューについてご紹介します。その内容には、この 30 年間における建築ビジュアライゼーション業界の進化、ビジュアル エフェクトの世界に取り組んでいる状況などが含まれています。
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
私の 3D のキャリアは、1980 年代後半、ニュージーランドでスタートしました。まだコンピューターが世に出回るようになったばかりで、AutoCAD が発売された頃です。建築設計の最終学年を終えて、当初はコンピューターよりも製図板を使うほうが速く描けると思っていたので、新しい CAD テクノロジーには目もくれませんでした。未来を予見できればよかったのですが。数年後に英国に移住し、自分のコンピューター スキルの欠如がキャリアの障害になっていることを実感したので、必要な知識を身につけました。3D Studio DOS が届いた日のことを覚えています。すぐさまソフトウェアに深く没頭しました(このソフトウェアが最終的に、3ds Max になります)。
3D スキルを磨き、プログラムが進化するにつれて、MAXScript を使っていかにその機能を拡張できるかを考えるようになりました。その後、1995 年にドットコム ブームが起こり、私は英国を拠点として建築ビジュアライゼーションを手掛ける最初の会社、Glowfrog Studios を立ち上げ、1998 年にオンライン 3D ライブラリの ReplicaNation を共同で創設して、世界トップクラスの 50 人の家具デベロッパーと連携しました。
2001 年に、私は大手業界誌に「3D 業界の顔」として掲載され、同時にテレビ番組や長編映画向けのビジュアル エフェクトとグラフィックスも手掛けるようになりました。2014 年まで早送りすると、Netflix 向けのプロジェクトを担当しながら、私はチームと一緒に CG の都市全体の構築を完成させました。このショットを作成するためのスクリプトとソフトウェアの開発作業から着想を得て、SiNi Softwareというスピンオフ事業も生まれました。現在、私は積極的に SiNi に関与しており、Urbân にも時間を割き、3ds London や 24 Hours of Chaos といった業界コミュニティの活動も運営しています。
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
建築ビジュアライゼーションの学生と話しているとき、この業界が実際よりも新しいと誤解されていることに気づきました。フォトリアリズムの追求は、30 年前でも今と同様に、話題の大半を占めていました。とはいえ、テクノロジーが進化し、若いアーティストが自分の新しいスタジオを開設するようになり、今やフォトリアリズムの実現がはるかに身近なものになりました。
現在では、CGI イメージと写真を見分けるのがきわめて難しい場合があります。適切なツールとトレーニングを使えば、ほぼ誰でも完璧なものを制作できるようになりました。その結果、多くのアーティストがディレクターや写真家のように考え始めています。人工知能やリアルタイム レンダリングも新たな道を切り拓いています。クライアントが設定する納期がますます厳しくなり、レンダリング時間の短縮が求められ、リモート ワークに移行するスタジオが増える中、とりわけこれらのツールは急速に不可欠なものになりました。
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
2014 年に担当したプロジェクトにて、古代ローマのモデルが必要だったので、3ds Max とその他のツールをいくつか使って、アセットを構築しました。モデルが完成して番組が放送されると、TV のプロデューサー、教育者、一般ユーザーからこのアセットを使いたいという要望が継続的に寄せられるようになり、レンダリング済みのショットを販売するためのオンライン VFX ストック ライブラリを作成することになりました。ここで目指したのは、VFX にあまり予算をかけられないテレビや映画のプロデューサーが、VFX スタジオにオーダーメイド作品の制作を委託できるようにサポートすることです。
また、指導目的でアセットを活用する教育者も対象です。このサービスの延長として、古代ローマを皮切りに、歴史的な都市の 3D アセットを自己資金で拡大することを決意しました。そのアイデアとは、このモデルをベースとして、高精細でインタラクティブな都市の 3D マップを作ることです。そこに教育者がオンラインで 360 度からアクセスして、学生を案内できます。
歴史が好きなチームは、このプロジェクトにすぐに熱中しました。何時間もかけてあらゆる細部の仕上げにこだわったので、モデルをナビゲートすると、そのすべてのパーツを探索できます。このレベルの精細さを達成するため、多くの実験を行いました。ゲーム エンジンやその他のソリューションも試験的に導入しましたが、結局 3ds Max に戻ってきました。V-Ray や SiNi とともに、3ds Max パイプラインの作成に、何千時間もの作業を投資してきたからです。
また、指導目的でアセットを活用する教育者も対象です。このサービスの延長として、古代ローマを皮切りに、歴史的な都市の 3D アセットを自己資金で拡大することを決意しました。そのアイデアとは、このモデルをベースとして、高精細でインタラクティブな都市の 3D マップを作ることです。そこに教育者がオンラインで 360 度からアクセスして、学生を案内できます。
次に、SiNi の一括プロキシ ツールを使って、高ポリゴン アセットを V-Ray プロキシに変換します。Chaos Group の Project Lavinaは、プロジェクトをリモートでレビューするうえで欠かせません。都市全体のアセットを読み込み、Slack や Zoom でのチーム ミーティング中に、リアルタイムで都市を隅々までレビューできるからです。最終的なレンダリングは V-Ray 5 で作成し、Adobe CC で合成しました。グリーンスクリーンやライブ ロケーション映像を使う場合は、Fusion または Nuke を使用します(コンポジターがどちらかを選びます)。今後は、TV 番組制作でプレゼンターをバーチャル環境に配置できるように、バーチャル制作技術に関する研究開発にも取り組みます。
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
ウェンブリー・パークは、イングランドのブレント・ロンドン自治区にあり、ウェンブリー・スタジアムがある場所です。スタジアムの周辺でウェンブリー・パークの開発が行われており、このプロジェクトはデベロッパーの Quintain 社が 20 年かけて進めています。多目的のマスター プランには、建築設計者によって開発中の約 50 の建物が含まれており、私たちは 12 年前から参加して、現場全体の 3D アセットを構築したり、最近ではスタジアムと周辺地域のインタラクティブ CGI モデルを作成しました。不動産デベロッパーが現地の不動産業者向けの販売ツールとしてそれを活用し、8,500 戸のアパートを案内しました。プロジェクトが進むにつれて私たちの役割が拡大し、ビジュアライゼーション 管理人として 3D 全般を監督するようになり、現場全体の 3D アセットを 3ds Max で管理しています。
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
約 90 の詳細な建物、公共空間と市民空間、背景となる周辺のロンドンの環境をすべて 3D でモデリングしたので、これほどの規模のアセットの管理はフルタイムでの作業になります。毎月、プロジェクトの建築設計者から Revit モデルを受け取ったら、私たちはモデルを縮小し、3ds Max に読み込み、SiNi ツールを使用してビジュアライゼーション用に最適化し、テクスチャとマテリアルを再び適用して品質を高め、それらを大きなマスター プランの 3D モデルに統合します。この作業に加えて、私たちのチームはプランニングとマーケティング用のイメージ、アニメーション、現場全体と各建物の 360度パノラマの大半を制作しています。
インタラクティブなプロジェクトを開始するにあたって、私たちはいくつかのオプションを検証し、この規模のスケールのアセットを何 ヵ月もかけて再解析することなくゲーム エンジンに取り込む方法を突き止めました。最終的に、3ds Max と Unity を活用したワークフローに決まりました。インタラクティブ 制作スタジオの Lucid Environments 社と連携し、Unity 開発の管理を手伝ってもらったので、私たちのチームは 3D の仕事に集中できました。私たちは協力して、4K の 3D レンダリングを、Unity 内の低解像度のジオメトリにプロジェクションマッピングするというハイブリッド ソリューションを編み出しました。
その結果、12 年分の高精細 3ds Max/V-Ray 3D アセットを Unity で実行するための、書き出し、再構築、最適化というコストのかかる作業を回避できました。このパイプラインによって、両チームは最後の最後までレンダリングや 360 度パノラマ読み込みなど、同時に作業でき、将来のツールの更新にも対応できる手頃なソリューションを提供できるようになりました。
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
開発チームの重要なメンバーとして評価され、単に頼りになるビジュアルアーティストという以上に尊重されていることです。このような、多数の意思決定者や関係者が関わる、数十億ドル規模のプロジェクトで作業するために必要なスキルは、一朝一夕では身につきません。長い時間をかけて習得し、同じような多くのプロジェクトを達成して、パートナーとして、デベロッパーとの信頼関係を直接育んでいます。
開発チームと直接連携して、私たちはプロジェクトの設計チームから建築設計を受け取り、最初のインサイト レビューを実施します。私たちの高精度の作品によって、現場での作業が始まる何年も前から、現場全体および局所的な設計に関する意思決定を 3D モデル内で調整できます。この規模のマスタープラン プロジェクトに携わり、完成した現場の建物や、実現しつつあるその周辺地域を目にして、本当に光栄です。私たちが構築したデジタル ツインの 3D アセットにそっくりなので、誰もが少し既視感を覚えるようです。
建築ビジュアライゼーションと VFX プロジェクトと同様に、多くの研究開発が関係していますが、インスピレーションはプロジェクトによって異なります。思い出すのは、巨大なドバイ・クリーク・ハーバー・プロジェクト(世界一の高さを誇るドバイ・クリーク・タワーを含む)のアニメーション制作を依頼されたときのことです。私たちはタイムラプス撮影が大好きで、時間と光をストーリーテリングとして活用し、動きのない都市のインフラの物語を伝えます。Netflix の都市シリーズの経験があったので、私たちはタイムラプス撮影ビデオを使った同様の方法で、1 日のさまざまな時間帯にどのように見えるのかを体験してもらうことにしました。信憑性を増すため、多様なライフスタイルを表現するため、すべてのキャラクターをカスタム モデリングする必要がありました。
私たちは伝統的な衣装が本物に見えることにこだわり、当社のキャラクター アニメーション チーム、Maya でモデルを作成して Arnold でレンダリングしているインドの Anibrain 社と膨大な時間を費やし、UAE にいる当社の専門家にも相談して、地域の人々が文化的に正確に描かれるようにしました。私たちは細部まで徹底的にこだわったので、創設者である会長が完成した映像を見たときはとても感激し、一切変更されませんでした。こんなことは初めてだと言われました!
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
キャリアを積むにあたっては、時間をかけて先輩やリーダーから学びましょう。焦って自分のスタジオを持つ必要はありません。人として成長するのが先です。私は数え切れないほどの失敗をしてきました。ビジネスに影響するほどの致命的な失敗もありましたが、最終的にコンピューター グラフィックスを作る仕事が好きなら、何か得意なことを見つけて、それに取り組むことです。人と接するのが得意でプロジェクト管理スキルがあれば、プロデューサーに昇進するかもしれません。情熱を持ち、他人を尊重できるなら、誰にでも参入できる余地があります。ほとんどのアーティストは知人からの紹介で採用されるため、人脈を作りましょう。
画像提供:Urbân 社 Nigel Hunt 氏
どのプロジェクトでも私の最終的な目標は、その仕事に最適な人材を迎え入れることです。そのために、建築ビジュアライゼーション アーティスト、キャラクター モデラー、VFX ジェネラリストを同時に採用することもあります。そうすることで、アーティストたちが羨ましく思い、別の分野に転向しようとします。つまり、「隣の芝生は青い」のです。また、建築ビジュアライゼーション チームが、建物を破壊する VFX チームの役割に加わりたいと思うこともあります。そちらの方が面白そうに見えるからです。多様なキャリアを希望するなら、ジェネラリストになりましょう。
2 つ目のアドバイスは、3ds Max に習熟しましょう。それも、キャリアの早い段階がよいでしょう。私は世界中の多くのスタジオと同様に、3ds Max を使って、不動産、テレビ番組、長編映画、広告分野で、数千件のプロジェクトを成功させてきました。30 年以上オートデスク ソフトウェアを使ってきたので、大規模な建築ビジュアライゼーション プロジェクトで他のソフトウェアを使うことは考えられません。3ds Max は、必要以上のことをすべて処理してくれます。スクリプトや、SiNi などの専門家向けのプラグインを使用した拡張機能で、3ds Max を調整して、プロジェクトの要件に正確に合わせることができます。この 30 年間、興味深い大規模プロジェクトを追求している私にとって、これは不可欠です。
最後に、モデリングやプロジェクトのレンダリングに利用できる優れた DCC ツールはたくさんありますが、世界中の建築ビジュアライゼーション分野での採用を希望するなら、必ず 3ds Max を自分の武器に加えておきましょう。建築ビジュアライゼーション業界では大勢のアーティストを採用していますが、ほぼ全員が 3ds Max を使用しています。他の製品を支持していた名のあるスタジオも、3ds Max の優れた建築ビジュアライゼーション アーティストを見つけて採用する方が簡単なので、移行しました。皆さんも検討してみてください。