クラウドのコラボレーション ワークフローでビジュアルのレベルを高めた Untold Studios

同社は 2018 年の設立以来、音楽、映画、テレビ、広告などの分野で世界トップレベルの作品を生み出すことを目標に掲げ、未来を見据えてこの偉業を達成しました。同社はクラウドの拡張性とコラボレーション機能を備えたオートデスクの「デザインと創造（Design & Make）のプラットフォーム」を活用してトップレベルのスキルをもった人材を世界中から採用し、プロジェクト・チーム・スタジオ間の情報の流れを合理化しました。データ フローは、プロジェクトの規模と複雑さが大きくなるほど重要になります。同社はわずか 5 年で、16 名から 240 名以上のグローバルなチームへと拡大し、英国アカデミー賞、エミー賞、グラミー賞にノミネートされました。そして現在もさらに、次世代ワークフローを推進しています。

Untold Studios 社は、オートデスクなどの業界をリードするテクノロジー企業と提携することで堅牢なクラウドベースのテクノロジー パイプラインを構築しました。同社の VFX 責任者を務める Aman Akram 氏は、これが成功につながったと話します。「私たちはいつも未来を念頭に置きすべてを構築しています。使用するテクノロジーやベンダーも慎重に検討します。オートデスクのサポートと『デザインと創造のプラットフォーム』の導入によって、テクノロジーの限界を押し広げ、かつては不可能だったことも実現できました。私たちの継続的な進化には不可欠でした」

Untold Studios 社は、キャラクター アニメーション制作には Autodesk Maya、コマーシャルのフィニッシングには Autodesk Flame、スケーラブルなレンダリングには Autodesk Arnold、制作管理には Autodesk Flow Production Tracking（旧 ShotGrid）と、幅広いサードパーティ テクノロジーを使用しています。これを 1 つに統合してサポートするクリエイティブ パイプラインをクラウド上に構築しました。リモートのアーティストたちはこの仮想環境でクラウド マシンを起動し、各自の Web インターフェイスを介してログインし、ビジュアル エフェクト、デザイン、クリエイティブ フィニッシングなど、担当する制作業務に最適なアプリケーションで作業を開始します。

アーティストが業務を遂行するためには、スタジオ内の他のチーム メンバーやプロジェクト関係者とのシームレスなコミュニケーションが欠かせません。そのため、スタジオの日常業務の多くを Flow Production Tracking で行っていると Akram 氏は話します。制作管理とレビュー機能を備えたツールセットで、チーム全員が各プロジェクトやスタジオ全体の作業状況を把握できます。Flow Production Tracking は、外部ベンダーとのコミュニケーションやデータのやり取りにも対応しています。Amazon Simple Storage Service（Amazon S3）バケットにデータをアップロードすると、その情報が Flow Production Tracking に自動的に入力され、チームに通知されます。

「Flow Production Tracking は、チームをまとめる接着剤のような存在です。VFX における主要な制作追跡ソリューションで、アセット管理パイプラインと連携しています。Maya、Flame、Houdini、Nuke などのデジタル コンテンツ作成（DCC）アプリケーションや、レンダー ファームとのやり取りにも便利です。データの取り込みから最終的な納品まで、プロジェクト全体で起きていることを効率的に追跡できると同時に、会社全体でコンテンツを容易に共有し、コラボレーションによる成果を最大限に高めることができます」と Akram 氏は説明します。

Autodesk Flame もまた、Untold Studios 社のパイプラインに欠かせない要素です。コマーシャル プロジェクトでは必ず、Flame で仕上げて納品します。Akram 氏はこう説明します。「Flame なしにコマーシャルを納品することはできません。Flame は業界標準であるとともに、当社が長年に渡り使用している重要なテクノロジーです。また、NDI プロトコルをサポートしている点も気に入っています。これは、クラウドから調整済みのレビュー モニターにストリーミングするために、スタジオ全体でよく使用しています」

レンダリングはパイプラインの方程式における重要な要素です。Untold Studios 社は成長とともに、Autodesk Arnold の使用を拡大してきました。「Arnold は非常に使いやすく、拡張するのも簡単です。業界で幅広く使用されているということは、多くのスタジオで活躍する人たちが既に経験しているということです。つまり、ソフトウェアの使い方を教えるためにそれほど多くの時間を費やす必要がありません」と、Akram 氏は語ります。

Akram 氏とチームは、これらのツールを活用するだけでなく、USD（Universal Scene Description）から AI まで、クラウド パイプラインの進化に役立つ最新テクノロジーを常に探求し続けています。

このような理由から、Untold Studios 社はオートデスク チームと緊密に連携しながら、USD を既にさまざまなプロジェクトに取り入れています。そして業界もまた、その方向で進化しています。「USD は新しい技術ではありませんが、業界ではますます導入が拡大していて、多くのスタジオが USD のメリットを享受するようになっています。そのため、当然ながら当社も、オートデスクのような企業と協力関係を大切にし、USD をパイプライン全体に導入するための最適な方法を検討したいと考えています」と Akram 氏は話します。

Untold Studios 社は USD への投資だけでなく、AI のメリットをワークフローで活用する方法も探っています。同社は現在、制作プロセス全体で機械学習（ML）を試験的に適用しながら探究しています。そしてリギングなどのタスクに関連する一般的なプロセスを高速化するために、生成したデータを使用してモデルをトレーニングしています。また、より大きな目標を掲げた AI の活用事例を調査しています。

たとえば、スタジオが最近完成させた世界自然保護基金とのプロジェクト「Bring Our World Back to Life（世界を蘇らせる）」では、気候変動に関する待ったなしの状況を AI を使用して視覚化しました。「AI は新しくて素晴らしい可能性をもたらしてくれるため、私たちはとても楽観的ですが、同時に慎重でもあります。AI を使用する際には、良い影響が生まれることを願っています」と、Akram 氏は話します。

Untold Studios 社は、クラウドの進化を遂げました。今後、同じ道をたどるスタジオがさらに拡大成長するとともに、次世代のエンターテインメント制作環境が整っていくことでしょう。