WAYSS & FREYTAG INGENIEURBAU AG
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カスタマーストーリー
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ハーフェルラント アウトバーンの A10/A24 区画は、ヨーロッパを横断する交通の重要なハブで、いつも混雑しています。ドイツ民主共和国によって 1970 年代に建設されたこの道路区間は既に老朽化しているため、複数の段階と施工フェーズをかけて改修される予定です。この改修プロセスの一環である「A10/A24 可用性モデル」プロジェクトは、計画から設計・施工、メンテナンスまでのプロジェクト全体に BIM のアプローチが組み込まれた、ドイツ初の官民パートナーシップ(PPP)パイロット プロジェクトとなりました。
画像提供:Wayss & Freytag
A10/A24 アウトバーンは、ベルリンとハンブルク間の幹線道路です。このルート全体のインフラが、交通量の増加に対応できなくなっており、路面は見るからに摩耗しています。
プロジェクトでは、交通の流れを継続しながら道路を 6 車線に拡張し、最新化します。クライアントはドイツ連邦政府とブランデンブルク州で、DEGES Deutsche Einheit Fernstraßenplanungs- und -bau GmbH 社が代表を務めます。2020 年は、ドイツ連邦政府のデジタル化戦略における重要な年となりました。同国政府はこの年に、BIM を交通インフラ プロジェクトの新たな標準にすると定めたのです。アウトバーンのこの区画は、政府の掲げる 2020 年のロードマップを構成する BIM パイロット プロジェクトの 1 つです。
ハーフェルラント アウトバーンのこの区画は、ドイツ初の PPP パイロット プロジェクトとなりました。共通データ環境のBIM を使用して、計画・設計・施工・メンテナンスを行います。
Wayss & Freytag Ingeniurbau AG 社(Royal BAM Group の子会社)と HABAU Hoch- und Tiefbaugesellschaft 社が建設コンソーシアムを形成し、両社で連携しながら、計画・施工フェーズ全体にわたって BIM の管理を行っています。
この BIM 契約では、アウトバーンの 5.5km 区間が対象となっています。この A24 区画は全面的に修復されるほか、フェールベリンとクレンメンの出口間のさまざまな地点に硬路肩が追加され、必要に応じて交通のために開放されます。この施工には、2 つの休憩所とサービス エリア、2 つの道路標識用カンチレバー、1 本の橋梁の架け替え、防音壁、ルート沿いの野生動物保護柵が含まれます。
Wayss & Freytag 社のデジタル コンストラクション部長である Daniel Krause 氏は、このプロジェクトを「困難でエキサイティングな挑戦」と表現しました。 画像提供:Wayss & Freytag
このような規模のプロジェクトには、多くのプランニングの専門家(橋梁、ルート、運用技術の各プランナーなど)だけでなく、さまざまなソフトウェア プログラムやシステムも関与するため、高度な相互運用性が必要となります。そのため、すべての関係者が協力してプロジェクト共通の標準を策定・適用することが重要ですが、ドイツにはまだそのような標準がありません。 そしてこれは計画フェーズに限ったことではありません。連邦政府の BIM パイロット プロジェクトでは、30 年間のメンテナンス期間にわたって BIM を適用することが、契約に規定されています。
Wayss & Freytag 社のデジタル コンストラクション部長を務める Daniel Krause 氏は、このプロジェクトを「困難でエキサイティングな挑戦」と表現しました。計画・施工中に収集されたデータは、その後のメンテナンスで使用されるため、一定のデータ品質を確保する必要があります。そのため、事前にデータの基準を定義する必要があります。 Krause 氏によると、従来のプロジェクト管理方法は、いまだに理想には程遠いといいます。情報の一部をシステムに一度入力するだけで、何度でもさまざまな形式でデータを取得しながら、進行中のデジタル プロセスをマッピングすることはできません。異なるツール間のインターフェイスの問題は、まだ完全には解決されていません。
次のハードルは、バリューチェーン全体でデータ品質を確保することでした。 「クライアントから受け取ったデータを基にプロジェクトを構築する必要があります。私たちはこのデータに基づいて数量を決定し、計算を行います」と Krause 氏は説明します。 それでは、効率や品質を高め、リスクを軽減するという BIM の能力を最大限に引き出すことができません。
Krause 氏は、同社の最終的な課題は、計画の複雑さではなく、関係者による変更管理と判断しました。そして、さまざまな関係者に BIM を受け入れてもらうことが重要なことに気づきました。「プロジェクトの開始時に、コンソーシアム全体で、新たなプロセスの実装に投資する必要があります。この変更プロセスは順調に進んでいますが、大変な作業です」と同氏は話します。 Wayss & Freytag 社のチームが、このトランスフォーメーションを推進しています。
「当社のビジョンは、単なる建設会社から、バリューチェーン全体でデジタル データを活用・評価・管理する会社へと進化することです」
— Wayss & Freytag Ingenieurbau AG社 デジタル コンストラクション部長/Daniel Krause 氏
画像提供:Wayss & Freytag
Wayss & Freytag 社のエンジニアは、こうした課題に対して明確な戦略をもっています。「当社のビジョンは、単なる建設会社から、バリューチェーン全体でデジタル データを活用・評価・管理する会社へと進化することです」と、Krause 氏は話します。
BIM のワークフローでは、「信頼できる唯一の情報源」(SSOT:Single Source Of Truth)として共通データ環境を構築します。これをプロジェクトの基盤とすることで、煩雑な情報ソースを合理化できるほか、リード タイムの短縮、生産性の向上、コラボレーションの改善、品質の向上、コストの削減など、さまざまなメリットが得られます。
Wayss & Freytag 社はそこからさらに一歩先へと進み、革新的な能力を発揮しました。「当社にとって、『デジタル化』は BIM のロード マップの一部であるだけでなく、バリューチェーン全体のプロセスを最新化することを意味します。以前は書式用紙や印刷書類が主に使用されていましたが、今では建設現場や入札準備などのあらゆる業務にデジタル ツールが利用されるようになった結果、プロセスが改善し、作業がシンプルになり、リスクが軽減し、効率が向上しました」と、Krause 氏は話します。
BIM パイロット プロジェクトの契約要件の 1 つは、オープン ファイル形式である *.ifc、または場合によっては *.cpixml を使用することです。
「オートデスクの書き出し機能で、オーサリング プログラムからデータを転送し、コーディネーション ソフトウェアでそのデータを処理することができました」と、Wayss & Freytag 社のデジタル施工管理者である Thomas Tschickardt 氏は話します。
画像提供:Wayss & Freytag
Tschickardt 氏は、プロジェクト チームにとってオートデスクは良いパートナーだと話します。「オートデスク製品のソリューションは、バリューチェーンのほぼ全体をカバーしています。オートデスク製品間の相互運用性だけでなく、他社製品との相互運用性やインターフェイスについても優れたソリューションを実現し、提供しています」と、Tschickardt 氏は話します。
BIM 360 プラットフォームは、施工管理プロセスをデジタル化するために使用されています。そして今後、あらゆるプロジェクトにおける紙ベースのプロセスに代わる標準的な手法として使用されます。また、クラウドによるデジタル モバイル アクセスも実装される予定です。
Civil 3D は、コンテキスト モデル、造成、下層土(土層や地下水位を含む)、道路区間の中間計測、硬路肩の一時的な開通用設備、景観、デジタル地形モデルの設計に使用されました。3D モデルはプロジェクト固有の用途を開発するための基礎となりました。そして施工プロセスに関わるすべての企業が、ジオメトリ、地形情報、英数字などの情報を補足的に入力しました。
道路沿いに設置されている野生動物保護柵については、一部の範囲のプロトタイプを手作業でモデリングし、その後 Dynamo で変換して残りの BIM セクション全体を自動的に作成しました。これにより、チームの作業時間を大幅に節約することができました。
Autodesk Revit チームは、Dynamo を使用して橋梁のすべてのコンクリート コンポーネントと要素の作業を進めました。これにより、プロジェクトの重要な領域である橋梁/道路のインターフェイスを早期に特定することができました。また、3ds Max で作成されたビジュアライゼーションが、地域住民とのコミュニケーションに役立ちました。
この道路区画の初期計画、設計・施工、メンテナンスには BIM が使用されました。さらに BIM 360 で、時間(4D)やコスト(5D)などの追加情報が補完され、迅速な情報の記録、データ管理、透明性の高いコミュニケーションが可能になりました。これにより、早期に調整の問題を解決し、計画エラーのリスクを最小限に抑え、スケジュールやコスト計画を改善することができました。
次に、道路運用データをモデルにリンクさせて、施工プロセスのシミュレーションとビジュアライゼーションを行います。ビジュアライゼーションで作成した視覚的イメージは、建設現場や計画会議、建設用の資料として活用できるほか、施工プロセスに携わるクライアントや企業との連携にも役立ちます。
「私たちは BIM で、『信頼できる唯一の情報源』を作成しています。これにより、煩雑な情報ソースを合理化できるほか、リード タイムの短縮、生産性の向上、コラボレーションの改善、品質の向上、コストの削減など、さまざまなメリットが得られます」
— Wayss & Freytag Ingenieurbau AG 社 デジタル コンストラクション部長/Daniel Krause 氏
画像提供:Wayss & Freytag
ここで実際の例をひとつご紹介しましょう。ライフサイクル全体にわたってプロジェクトを検討した結果、現場管理者が計画会議に参加することになり、プロジェクトに必要な建設機械についてアドバイスをくれました。これにより、計画していた矢板の打込みには、予定されていたものとは異なる建設機械が必要なことが事前に明らかになりました。すべてのデータを共通モデルに統合していたことで、施工開始前にこのミスを特定し、余計なコストを回避することができました。
現場監督は工事現場でこのモデルを利用して、集計表から実際のデータを入力したり、施工現場から直接取得した実際の数量を入力したりできます。これらは、日々の施工レポートやエンジニアの管理システムにフィードバックされます。一般的に、5D はこのように適用されます。計画フェーズのすべてのデータに、施工フェーズの追加データが補完されます。これにより、プロジェクト全体の真の 360 度ビューが得られ、施工プロセスが最適化されます。
これを実際に経験した Tschickardt 氏は、こう話します。「プロジェクト全体にわたり、高品質な作業を維持しながら効率を上げ、リスクを軽減することができました」
その基盤となるのが、オートデスク ソリューションの BIM 360 です。デジタルで不具合を管理できるようになるほか、現場管理者はタブレット上で最新のデジタル計画にアクセスできるようになります。
「オートデスクの最大のメリットは、バリュー チェーン全体をカバーする包括的なソリューションと、高い相互運用性です」
— Wayss & Freytag Ingeniurbau AG 社 デジタル施工管理者/Thomas Tschickardt 氏
Wayss & Freytag 社のデジタル施工管理者である Thomas Tschickardt 氏は、道路建設のライフサイクル全体に BIM を導入することについて、人々の関心が高まっていると話します。 画像提供:Wayss & Freytag
Wayss & Freytag 社の戦略は実を結びました。単なる建設会社からデータドリブンな企業へと移行する過程で、A10/A24 可用性モデル プロジェクトのライフサイクル全体を BIM でモデル化することに成功しましたた。
そしてこのコーディネーション モデルのおかげで、計画フェーズの早期から A10/A24 可用性モデルの施工フローを視覚化することができました。
「私たちは、実際の着工前にデジタルで建設を開始しました」と、Tschickardt 氏は話します。これにより、計画や施工プロセスにおけるミスを早期に特定し、修正することができました。
Wayss & Freytag 社のチームは現在、主に定性的な観点で BIM の付加価値を評価しています。Tschickardt 氏は、区画全体に BIM 360 を適用することは「チーム全体にとって有益」であり、3D を計画会議に利用すると「従来とまったく異なる方法で表現できる」と話します。 また、BIM によってリスクが大幅に軽減したとも話します。特に BIM の契約部分は同社にとって効果的でした。「コストの完全な透明性を確保できました。遅延の影響も確認できます。4D モデルのおかげで、地下にパイプラインが走っていることが建設現場で判明するのではなく、事前にそれを特定し、代替案を検討できるようになりました」と同氏は話します。
BIM の定量的なメリットは、不具合管理においてもすぐに表れました。従来、不具合管理は電子メールで Excel シートや写真を送信するという方法で行われていました。しかしクラウドベース ソリューションのおかげで、サイト管理者は従来のわずか数分の 1 の時間で、5 ~ 8 倍の数の不具合を解決できるようになりました。
計画から施工、メンテナンスまでのプロセス全体にオープン BIM とデジタル ソリューションを導入した道路建設パイロット プロジェクトは、成功を収めました。
「道路建設のライフサイクル全体に BIM を導入することについて、人々の関心が高まっています。このプロジェクトで開発したデータや標準は、今後の重要な基盤となります。業界の文化は変化し始めています」
— Wayss & Freytag Ingenieurbau AG 社 デジタル コンストラクション部長/Daniel Krause 氏