AIが未来の工場で重要な存在になる理由と製造業での現況
- AI (人工知能)、製造業の人を置き換えるので、ロボットと人が協力して仕事を遂行可能とする。
- 機械がよりスマートになることで、より多くの反復的な作業を担えるようになる。それによって、人間はより多くの時間を他の問題の解決に費やすことが可能になる。
- AIシステムの導入によって製造業のスピードと精度、品質管理が向上していく。
完全自動化工場というビジョンは常に物議を醸すものであり、たびたび小説でも取り上げられてきた。それが描くのは、ロボットによる生産ラインをAIシステムが監督する、ほぼ無人の空間だ。だが少なくとも近い将来においては、これがAIが製造業へ導入される手法とはならないだろう。
製造業におけるAIの現実的なコンセプトは、特定の製造プロセスを管理する、コンパクトかつディスクリートなシステム向けアプリケーションの集合体のようなものだろう。こうしたアプリケーションはほぼ自律的に動作し、ツールの摩損やシステムの機能停止、火事や自然災害といった外部的な事象へ、よりインテリジェントかつ人間に近い方法で対応するようになる。
製造業におけるAIとは
製造業において、AIは出来事に内的および外的に対応し、それを予測する、人間の役割を自律的に実行するためのマシンの知性だ。こうしたマシンは、ツールの摩損や予想外の出来事を、その予測も含めて検出し、問題に対応・対処することができる。
歴史学者は、石器時代から青銅器時代、鉄器時代と続く人類の進歩を辿り、自然環境、材料、道具、技術の克服に基づく人類の進化的発生を評価している。それに倣えば、現在人類は情報化時代、別名シリコン時代にある。エレクトロニクスが基盤となったこの時代において、人類はコンピューターにより集合的に強化されており、自然界に前代未聞の影響力を持ち、数世代前には想像すら出来なかったような事柄を成し遂げる相乗能力を有している。
コンピューター技術が発展し、かつて人類が行っていたことを処理するまでに能力が高まると、AIは自然な成り行きで誕生した。人間は、機械学習とAIをどう応用するかを選択できる。AIが得意とすることのひとつに、クリエイティブ業務の支援がある。これは、必ずしも人々の職を奪うことにはならない。人々が工場でのコンポーネント製造、製品や部品のデザインなど、それぞれの適性に合った業務の遂行へ役立てられれば、理想的な応用となる。
人間とロボットの連携は、ますます重要になっている。一般に浸透した産業用ロボットの印象は自律かつ「スマート」というものだが、大半のロボットが相当な指揮監督を必要とする。だが、AI革新によりロボットのスマート化は進んでおり、人間とロボットの連携はますます安全かつ効率的なものになっている。
製造業においてAIはどう進化してきたか?
現在、製造業におけるAIのほとんどは、測定や非破壊検査 (NDT) といったプロセスに使用されるツールに関連したものだ。AIは製品のデザインには役立てられているが、製造においてはまだ導入の初期段階にある。工作機械のコミュニケーション能力は、まだ低い。工場内の工作機械の自動化には注目が集まっているが、世界の工場の多くは機械式インターフェースや限定的なデジタル インターフェースを備えた古い設備に依存したままだ。
より新しい製造システムには材料供給、システム状況や電力消費、その他数々の要素についてのフィードバックを提供するマンマシン インターフェースと電子センサーのスクリーンが搭載されている。作業内容はコンピューター画面やマシン上で視覚化が可能。製造業においてAI が今後活躍する多彩なシナリオ同様、今後の方向性も明白になりつつある。
短期的なシナリオには、機械加工プロセスのリアルタイム監視やツール摩耗といった状況データの監視などがある。こうした応用は「予知保全」に該当する。センサーから得られたデータを使用し、意味のあるパターンを見つけ、分析により問題を予見し、問題が生じる前に解消するよう保守チームに警告を送るアルゴリズムであるAIにとって、これは明白な機会となる。マシンも内蔵されたセンサーは、何が起こっているかを監視できる。こうしたセンサーとしては、ベルトやギアの摩耗を音で感知する音響センサーや、ツールの摩耗を監視するセンサーがある。
こうした情報を、そのツールの寿命を予測できる分析モデルにリンクすることも考えられる。工場内においてはアディティブ マニュファクチャリング (積層造形) の重要性が増し、新しいタイプの数々のセンサーがシステムへ追加されるようになっている。こうしたセンサーは、ここ 10年のうちに広く導入された材料や製造技術に影響を与える新たな状況を監視する。
製造業におけるAIの現況
AIはデジタル ツインを活用することで、より正確な製造プロセスデザインと、製造プロセスにおける不具合発生時の問題の診断と解消を可能にしている。デジタル ツインとは、物理的な部品や工作機械、作成中の部品などの精密なバーチャルレプリカだ。単なるCADモデルをはるかに超越するもので、例えば部品と、その部品に不具合が生じた場合の挙動を、正確にデジタルで表現する (どの部品にも不具合はあり、だから故障が起こる)。AIは、製造プロセスのデザインと保守におけるデジタル ツインの応用に不可欠だ。
大企業はAI の採用で得るものが多く、またこうしたイノベーションへ資金を投入する経済力もある。だが極めて独創的なアプリケーションの中には、航空宇宙業界など技術集約的産業を供給先とする契約デザイナーやメーカーなどの中小企業に資金が投入されているものもある。
多くの中小企業が、新たな機械や技術を迅速に導入することで、大企業の競合他社を一気に追い抜こうとしているのだ。こうしたサービスの提供は製造業界に差別化をもたらしているが、必要な知識や経験無しに新たなツールやプロセスを導入していることもある。これは、デザインや製造の観点からは正しいかもしれない。アディティブ マニュファクチャリングへの参入が困難なのは、それが理由なのだ。このシナリオにおいては、中小企業は大企業よりもAI導入に対するインセンティブが大きい。フィードバックを提供し、セットアップと稼働化をアシストするスマートシステムの使用は、小規模スタートアップが現状を打ち砕くような足がかりを市場に作るのに役立つ。
本来、エンドツーエンドのエンジニアリング技能は製造プロセスに組み込むことが可能だ。つまり、AI内蔵の工作機械は、設置、導入、センサー、運用と保守の問題を検出するための分析を監督する知識と共に提供可能なのだ (これらの分析には、いわゆる「教師なしモデル」が含まれる。このモデルは、調査すべき変則的かつ「不正な」側面を探すことで、既知の問題に関連しない、センサーからフィードバックのパターンを探すよう訓練されている)。
このコンセプトの実例となるのが、2017年11月に開始された1,430万ポンド (約22億円) の共同研究プロジェクト、DRAMA (Digital Reconfigurable Additive Manufacturing facilities for Aerospace: 航空宇宙業界向けの再構成可能なアディティブ マニュファクチャリング デジタル施設) だ。オートデスクは「デジタル ラーニング ファクトリー」 のプロトタイピングを行う、Manufacturing Technology Centre (MTC) と連携する企業コンソーシアムのメンバーとなっている。アディティブ マニュファクチャリングのプロセスチェーン全体はデジタル ツイン化されており、その施設はさまざまなユーザーの要件に合致するよう、また異なるハードウェアとソフトウェアのオプションのテストが可能となるよう、再構成可能な形で構築される。デベロッパーはテクノロジーとプロセスの導入に役立つ、アディティブ マニュファクチャリングの「ナレッジベース」を構築中だ。
オートデスクは製造の下位プロセスを十分に考慮し、DRAMAではデザイン、シミュレーション、最適化において重要な役割を果たしている。製造プロセスの各部品への影響の理解は、デザインプロセスをジェネレーティブ デザインにより自動化し、デジタルデザインを実際の部品に近い形で機能させるための重要な情報だ。
製造業におけるAIの未来とは?
このシナリオは、メーカーに売り込むエンドツーエンドの作業プロセスを効率よくパッケージする機会を提案している。ここにはソフトウェアから工場内の機械、機械のデジタル ツイン、工場のサプライチェーン システムとデータをやりとりする発注システム、プロセスを監視して材料がシステム内を移動する間にデータを収集する分析まで、あらゆるものを含めることができる。これにより、実質的に「Factory in a box」(箱に収められた工場) システムが生み出される。
箱に収められた工場
こうしたシステムを使用することで、メーカーは今日製造された部品を昨日製造した部品と比較検討したり、品質保証がなされたかどうかを確認したり、全工程の各プロセスに実施された NDTを分析したりできる。このフィードバックは、部品製造に用いられたパラメーターを正確に理解し、その上でセンサーデータから不具合がある箇所を確認するのに役立つ。
このプロセスの理想形は、一方から材料を投入すれば他方から部品が出てくることだ。人間はシステムを保守するだけで、それもいずれはロボットが行うようになる。だが現在の構想では、デザインや決定を行い、製造を監督し、ラインでの幾つも業務に従事するのは依然として人間だ。システムは、決定による実際の影響を人間が理解できるように支援を行う。
機械学習と自律AI
AIのパワーのほとんどは、機械学習、ニューラルネットワーク、ディープラーニング、人間の介入なしに独自の経験から学ぶその他の自己組織化システムによってもたらされる。こうしたシステムは、人間のアナリストの能力を遙かに超えるスピードで、データ内にある重要なパターンを見いだす。ただし現在の製造業において、AIのアプリケーション開発を指揮し、過去に設計したシステムから得た知識をコード化しているのは、いまだに人間の専門家だ。人間のエキスパートは、何が起こり、何が上手くいかず、何が上手くいったのかのアイデアを持ち寄る。
自律AIはこうしたエキスパートの知識を基盤に構築されるため、例えばアディティブ マニュファクチャリングの新入社員は、AIが保守整備やプロセスの洗練のために内蔵センサーデータを分析することで、運用面でのフィードバックから恩恵を得ることができる。これは、自己修正マシンなどのイノベーションの中間段階と言える。自己修正マシンでは、ツールが摩耗すると、システムがそれに対応してパフォーマンスを維持しつつ、ユーザーに摩耗したコンポーネントの交換を勧める。
工場計画とレイアウトの最適化
AIの応用は製造プロセスだけに限定されるものではない。工場計画の観点から考えてみよう。施設のレイアウトは、オペレーターの安全から工程の効率性まで、さまざまな要素によって決定される。連続する短期プロジェクトや頻繁に変更されるプロセスに対応するには、施設が再構築可能であることが必要となる場合がある。
頻繁な変更は不測の空間的な、また材料面での干渉につながる可能性があり、それによって効率や安全性の問題が生じることがある。だがセンサーを使用することで、こうした干渉の追跡や測定が可能だ。それが施設レイアウトの最適化におけるAIの役割だ。
センサーがリアルタイムAI分析用のデータをキャプチャ
アディティブ マニュファクチャリングなど不確定要素が多い新たなテクノロジーを導入する場合、部品の製造後にNDTを適用することが重要なステップとなる。非破壊検査は、とりわけ CTスキャナー (製造部品の構造的な整合性分析に使用される) など機器へ投資する場合には、非常に高価なものとなることがある。マシン内のセンサーは、特定の部品の製造プロセスから学習した大規模データセットから構築されたモデルにリンク可能。センサーデータが利用可能になれば、そのセンサーデータを使用する機械学習モデルを構築でき、例えばCTスキャンで検出された不具合との相互関係を示すことができる。センサーデータは、分析モデルが指し示した部品が、CTスキャンにかけずとも欠陥がある可能性が高いと警告できる。ラインから生まれた部品全てをルーティンとしてスキャンする代わりに、こうした部品のみをスキャンすれば済むのだ。
人間が設備をどのように使用しているかをモニタリングすることもできる。製造エンジニアは、設備が機械の運用に合わせてデザインされているものと考える。人間の分析を用いた場合は、手順の追加か省略になる。センサーはこの情報を正確にキャプチャし、AI分析を可能にする。
AIはまた、製造プロセスと設備をさまざまな環境条件に適応させる上でも役立っている。例えば湿度を考えてみよう。アディティブ マニュファクチャリング技術のデベロッパーが、一部の国で設計通りに動作しないマシンがあることに気づいた。状態のモニタリングには工場内の湿度センサーが使用されているが、時としてそれは直感に反した事象の発見につながる。あるケースでは、湿度調節されているはずの環境で、湿度が問題を起こしていた。誰かがタバコを吸いに外に出た際に、扉を開けたままにしていたことが原因だった。
センサーデータを有効な活用、有効なAIモデルの開発が必要になる。そうしたモデルには、何がこのような問題を生じさせ、どうすれば原因を検知でき、それを解決するにはどうすればいいのか、データの内容を理解できるような訓練が必要になる。現在、機械学習モデルはセンサーデータを活用し、問題がいつ生じるのかを予測し、トラブルシューティングの担当者へ警告することができる。AIシステムは、ゆくゆくは問題を予測し、それにリアルタイムで対処できるようになるだろう。そして問題を阻止し、製造プロセスを向上させるために先回りする手法を生み出す役割を負うようになるだろう。
ジェネレーティブ デザイン
AIには、ジェネレーティブ デザインで重要な役割を担っている。ジェネレーティブ デザインとは、デザインエンジニアがプロジェクトの一連の要件を入力し、デザイン ソフトウェアが複数の反復を生成するプロセスだ。オートデスクは近年、アディティブ マニュファクチャリング用に大量の材料データを収集し、そのデータを活用してジェネレーティブ デザイン モデルをドライブしている。このプロトタイプは、製造プロセスの個々の特性や形状への影響に応じて、材料特性がどう変化するのかを「理解」している。
ジェネレーティブ デザインは、アダプタブルな最適化技法となっている。従来の最適化技法の多くは、部品最適化のより一般的なアプローチに目を向けたものだ。ジェネレーティブ デザインのアルゴリズムは、材料試験や大学との連携に基づく力学特性の理解を応用した、個々の造作にずっとフォーカスしたものになっている。デザインが理想的であっても、製造プロセスは現実の世界で行われるため、条件は一定ではない場合もある。効果的なジェネレーティブ デザイン アルゴリズムには、こうしたレベルの理解が包含されている。
ジェネレーティブ デザインはソフトウェア内で最適なデザインと要件を生み出し、対応可能な機械設備のある複数の施設にそのデザインを提供できる。これはつまり、より広範な種類の部品を、地理的に分散している比較的小規模な施設で製造できるということだ。こうした施設は部品を必要とする場所に隣接していることもある。また、ある日は航空宇宙業界向けの部品を、別の日は他の基本部品を製造するといったことができ、流通と輸送のコストを削減できる。これは自動車業界などで重要なコンセプトになりつつある。
フレキシブルかつ再構成可能なプロセスと工場
AIは、製造プロセスを最適化し、よりフレキシブルかつ再構成可能なものとすることにも活用できる。現在の需要は、工場のフロア レイアウトの決定や、プロセスの生成に影響する。これはまた、今後の需要に対しても行われる。これらのモデルはその後の比較対照にも使用される。こうした分析により、今後は大型のアディティブ マシンを減らすべきなのか、小型のマシンの数を増やすことでコスト削減を行ない、需要が停滞しても他のプロジェクトに転換できるようにしていくべきなのかが判断される。「What-if (もしも)」分析は、AIの応用としては一般的だ。
モデルは、工場のフロアレイアウトとプロセス順序の両方の最適化に使用される。例えばアディティブによる部品への熱処理を、3Dプリンターで直接実行することもできる。また、材料が調質済みの場合や、再加熱による調質が必要な場合もある。エンジニアはさまざまな「もしも」シナリオを実行し、施設にどういう装備を備えるべきかを判断できる。場合によっては、プロセスの一部を外注する方が都合が良いかもしれない。
このようなAI応用は、工場がひとつのプロセスにフォーカスするべきか、複数の製品やプロジェクトを請け負うべきかの判断につながる、ビジネスケースを変化させる可能性がある。後者の場合、工場のレジリエンスはより高まるだろう。低迷中である航空宇宙業界の例では、その製造業務を医療部品の製造へと順応させるかどうか、ということになるのかもしれない。
製造業とAI: 応用と利点
デザイン、プロセスの向上、マシンの摩耗の低減、エネルギー消費の最適化は、どれもAIが製造に応用されるであろう領域だ。こうした進化は既に始まっている。
マシンはよりスマートで、サプライチェーンやその他のビジネス自動化と互いに統合されるようになっている。材料を投入すれば部品が出てきて、工程内の全てのリンクがセンサーで監視される状態になれば理想的だ。人間はプロセスの制御を維持するが、必ずしもこの環境内で働くわけではない。これにより、自動化可能な反復作業から重要な製造資源と人材を解き放ち、コンポーネントのデザインと製造手法の創造というイノベーションに集中させることができる。
多くの抜本的な変化がそうであるように、AIの採用にも反発がある。AIに必要な知識とスキルは高価かつ希少なものであり、多くのメーカーはそうした才能を社内に保有していない。こうした企業は自社が専門分野で高い競争性を持つと考え、新しい何かを作ったりプロセスを向上させるための投資の正当化に過剰な証拠を必要とし、工場をスケールアップするリスクを回避することもある。
このため「箱入り工場」のコンセプトは、企業にとってより魅力的なものとなるかもしれない。多くの企業、特に中小企業は、ソフトウェアが工作機械とシームレスに連動し、その向上のためにセンサーと分析を活用するエンドツーエンドでパッケージされたプロセスであれば、より確信を持って採用することができる。エンジニアが新しい製造プロセスをシミュレーションとして試すことのできるデジタル ツイン機能を加えれば、この決定はさらにリスクの低いものとなる。
製造業におけるAIのもうひとつの重要な分野に、予知保全がある。これによりエンジニアは、工作機械についての蓄積された知識を組み込んだ訓練済みAIモデルを、工場内のマシンに装備させることができる。モデルは、機械から得たデータを基に現場で発見された新たな因果パターンを学習し、問題を防ぐことができる。
AIは品質検査にも役立つ。このプロセスは、当然ながら機械学習に適した大量のデータを生成する。アディティブ マニュファクチャリングを例に考えてみよう。1回のビルドで、マシンがその部品をどう製造したのか、現場の条件、ビルド中に見つかったあらゆる問題に関するTB 単位のデータが生成される。これほどのボリュームのデータは人間の分析能力を超えているが、AIシステムならすぐに分析できる。アディティブツールとして機能するものは、切削機械加工、鋳造加工、射出成形、その他の多様な製造プロセスにも簡単に応用できる。
VRやARといった補足的な技術を追加することで、AIソリューションはデザイン時間を短縮し、組立ライン プロセスを最適化するようになるだろう。ライン工は既にVR/ARシステムが用意されるようになっており、このシステムが組立プロセスを視覚化し、作業のスピードと精度を向上させる視覚支援を提供している。オペレーターが、部品の組立方法の説明図を表示する ARメガネを使用している場合もある。システムは作業を監視し、スパナを十分に回転させたかどうか、トリガーを引いていないなどの指示や警告を提供する。
AI導入の重点エリアは、大企業と中小企業で異なっている。中小企業は部品製造であり、大企業は別途供給された部品組立がメインであることが多いだろう。例外もある。自動車メーカーではシャーシのスポット溶接が多いが、軸受やプラスチック製のコンポーネントなど他の部品の購入、組立も行う。
部品そのものの最新の動向としては、スマート部品の活用がある。スマート部品とは、部品の状態、部品にかかる応力やトルクなどをモニターするセンサーが埋め込まれた部品だ。このアイデアは、特に自動車製造において興味深いものだと言える。こうした要素は自動車の走行距離よりも走行状況に依存するからだ。毎日凸凹の路面を走行する場合、より一層のメンテナンスが必要となる。
スマート部品は、製品寿命への到達や、車検時期を迎えたことを知らせてくれる。こうしたデータポイントを外部からモニターするのでなく、部品自体が定期的にAIシステムへ接続し、部品の確認が必要となるほど状態が悪化するまで、正常な状態であることを報告する。このアプローチはシステム内のデータ通信量を削減するため、大きなデータ通信量が分析処理性能が大幅に低下させることもない。
価値を付加するAIの最大かつ最優先の機会はアディティブ マニュファクチャリングにある。積層造形プロセスは一番のターゲットだ。その製品はより高価で、体積は比較的小さい。今後 AIを人間が成長・成熟させるにつれ、製造バリューチェーン全体でその重要度はますます高くなるだろう。
本記事は2021年1月に掲載された原稿をアップデートしたものです。