自動化により製造業界は進化の長いループを完結させられるか
- 製造業界の自動化とは?
- 製造業の自動化の歴史
- 製造業の自動化のメリット
- 最初から最後までループの完結したデータフローの作成
- 製造業の自動化における3つの課題
- 製造業の自動化の活用事例
- 製造業の自動化の未来とは?
- 製造業における自動化: データドリブンな未来
製造の自動化という言葉から、何を思い浮かべるだろう。ピストンが上下し、ベルトコンベアから同じ製品が何度も送り出される、荒涼とした灰色の光景かもしれない。あるいは、ウィリー・ウォンカのカラフルなチョコレート工場で、ピタゴラ装置的なマシンが無限にお菓子を生産しているイメージだろうか。そうしたイメージはさておき、製造の自動化が生み出すメリットはユニバーサルなものであり、それが効率と生産性を向上させ、人間がより付加価値の高い作業を行うことで、より良いビジネス成果が生まれる。
製造業界の自動化とは?
製造業界における自動化とは、機械やソフトウェアを用いて製造業の生産・業務プロセスを自動化することだ。その目的は、汚く、危険で、退屈な仕事をテクノロジーへ託すことにある。自動化は人間を排除することではない。繰り返しの作業を排除し、より創造的で付加価値の高い業務に人間の頭脳をシフトさせて、それをビジネスの成長につなげることだ。
自動化の進行は段階的な場合もあるが、最終目標はオペレーション全体の自動化と改善であり、エンジニアリングからポストプロダクション、メンテナンス、そして最終的には設計へと戻る、連続した情報の流れを生み出すことだ。こうしたデータ連携で、バーチャルなデザインを物理的な製品として顧客へ出荷可能にするまでのプロセス全体の向上、最適化が実現する。
製造の自動化とは、単にロボットが組立ラインで機械的な処理を行うことではない (それも含まれるが)。企業が生産とプロセスを自動化するのは、以下のような目的がある:
- サイロを排除し、情報の流れを促進することによる全員の連携
- スループットを向上させることによる使用資本利益率 (ROCE) の向上
- ダウンタイムの排除
- ミスや手戻りの低減
- 付加価値や創造的なタスクへ人間の解放
- クローズドデータループの作成による完全な可視化とフィードバックの実現
- アジャイル性の向上
- マスカスタマイゼーションの実現
- リーンオペレーションのサポート
- コスト削減と原価低減
製造業の自動化の歴史
人類はその誕生以来、肉体労働を機械に委ねることで、より速く、効率的に仕事を行う方法を発明してきた。ここで製造の自動化の、歴史におけるハイライトを紹介しよう。
18世紀から19世紀にかけての産業革命で、石炭や石油、ガス、蒸気など新しい動力源が導入され、蒸気機関、ジェニー紡績機、ミシンなど (当時としては) ハイテクな機器が登場した。
1913年、ヘンリー・フォードは自動車産業へ、作業員が移動する代わりに各ステーションにいる作業員のもとに車を運ぶ仕組みの組立ライン (食肉加工工場の効率的な作業工程の見学で得たアイデアだった) とベルトコンベアを導入。移動組立ラインにより、車1台の製造に必要な時間は、それまでの12時間から突如として90分になった。
1900年代初めの段階では、メーカー各社は工場の動力源の蒸気から電気モーターへの切り替えに難色を示していたが、この移行によって生産性が向上。1920年代までにメーカーの生産量は30%増加した。
1950年代から60年代にかけ、米国では自動化により多くの労働者の職が奪われ、政府のスローガンは「昨日のスキルでは明日の仕事は得られない」となった。ロボット (PDF P.1) が工場に導入され、電子データ処理 (EDP) が登場して、業務プロセスや情報管理の自動化が始まる。
自動化は、過去においては予測可能なものであり、機械的な逐次プロセスが設定され、毎回同じ結果が得られた。だが、その後予想外の事態が生じる。 顧客が、車をカスタマイズして好きな色を選びたいと言い始めたのだ (フォードが「黒であればどんな色でも注文を承ります」と言ったのは有名な話だ)。
長年、人間は自動化で完全に置き換えられてしまうのではないかと懸念されてきた。だが、今も不可欠な存在のままだ。自動車は注文に応じてカスタマイズされ、企業はフレキシブル製造と自動化により、同じライン上で異なるモデルを製造可能になった (いまやフォードですらロボットやAIを活用している)。 変化は急速に進んでいる。企業は迅速な対応とマスカスタマイゼーションの実現、変化するサプライチェーンへの適応のため、よりアジャイルになる必要がある。だが、まだまだ解放されていない潜在能力は残されている。今後はデータを中心とした自動化が進んでいくだろう。
製造業の自動化のメリット
製造の運用を機械やソフトウェアに委ねるほど、製造の自動化によるメリットが実現することになる。その一部を紹介しよう。
人の能力を引き出す:
運用において、人間は最高の資産だ。日々の作業を自動化することで、労働力をより創造的で付加価値の高い作業へと転換できる。その能力を解放することで、よりイノベーション力を高められた人間がデータサイエンティスト、開発者、エンジニアなどの新たな役割を担うようになる。
データを連携する:
サイロが排除されれば、製造プロセスやサプライチェーン全体を合理化するデータ連携が生まれる。情報の一元化によって知見の一貫性も得られ、紙の記録やフォルダーを探さずに必要な情報が得られるようになることで、時間とコストの無駄が省ける。
一貫した品質の製品の提供:
機械やテクノロジーは反復作業を実行するようプログラムされ、人間よりもはるかに安定した仕事をこなす。機械は飽きたり疲れたりしないし、ミスも少ない。この信頼性と予測可能性がコンプライアンスを支え、顧客へ期待している通りの製品を届ける。
リーン生産を支援:
自動化によってワークフローが合理化され、手戻りや材料の無駄が減って、よりリーンなオペレーションとなる。
ダウンタイムの短縮:
休憩、食事、通勤が必要な人間とは異なり、機械は24時間休むことなく動き続けることができる。自動化は予知保全も可能にするため、機器の故障による障害のリスクを軽減できる。
安全性の向上:
製造業は長い間、労働者にとって危険な仕事だった。だが自動化によってロボットや機械が危険なタスクを受け持つことにより事故率は低下している。
人手不足の解決策をもたらす:
製造業界は、労働力の高齢化や定年退職、入職者の減少による労働力不足に直面しているが、自動化を加速させて製造業務の欠員を埋めることで、企業が必要とする高技能職の人材を確保しつつ、人手不足の負担を軽減できる。
オペレーションを継続的に最適化:
自動化は膨大な知見を生み出し、それにより人間はデータドリブンな意思決定を行い、オペレーションを最適化できる。テクノロジーは、プロセスも向上する。世界の企業の42%がAIと機械学習に投資を行なっており、それによりコンピューターは自らの力を活用してパターンを認識し、常にパフォーマンスを向上させられる。
コンプライアンスとリスク低減を実現:
業界に特化したソフトウェアを用いてビジネスプロセスを自動化することで、製造の規制当局へ対するコンプライアンスを確保できる。
アジャイル性を向上:
製造プロセスを自動化した企業は、顧客や市場の要求に対する応答性が高く、破壊的変化に直面しても柔軟かつ弾力的な対応が可能となる。
これらのメリットをまとめると、生産性と効率性の向上、市場競争力の強化、そして収益の向上が得られるということだ。
最初から最後までループの完結したデータフローの作成
これまでの製造は「コンセプト」「構築」「販売」という直線的なプロセスだった。情報はサイロ化され、分断されて、製品の出荷で行き場を失う。なんらかの混乱が生じると製造が中断し、人の手の介入が必要となって、無駄な手戻りにつながることも多い。昔の新聞印刷機を想像してみよう。一つの部品に不具合が生じれば、印刷そのものに影響を及ぼす。
自動化の第一の目標は横並びだったワークフローをデータが連携し、設計からエンジニアリング、生産、顧客、そして再び設計へと連続的に移動するクローズドループへ転換することだ。機械やソフトウェアが生成する全データがサイロ化されることなく一元化され、部門や分野を超えてアクセス可能となる。だが、クローズドループ製造を特徴付ける真の要素はフィードバックだ。生産終了時に次のサイクルと完成した製品の質を向上させるための情報を上流に送れるようにすることで、自己を最適化するワークフローを実現できる。
クローズドループのデータフロー構築には、以下のようなメリットがある。
- より深くアクション可能な知見
- 部門横断的なコラボレーション
- 継続的な学習と改善
- マスカスタマイゼーション
- 市場の要求に応じて生産を変更する能力
- 競争力、応答性、アジャイル性の向上
- 無駄の削減
- より優れた製品
- ランタイムの短縮
クローズドループのフィードバックは社内からスタートするが、製造工場の壁を越えてサプライヤーを巻き込み、エンジニアが最適な決断を下すことができるよう、材料の調達、価格の確認を可能にする。その接続性を、デザインから納品までのバリューチェーン全体に広げることもできる。クローズドループのオペレーションでは情報が一元化されるため、誰もが同じ視野を持ち、必要に応じて継続的に更新される情報にアクセス可能だ。
複数のデータソースを連携
自動化は複数のソースから大量のデータを生成するが、そのデータは、互いに連携し、オープンである際に最も力を発揮する。企業がそれぞれのシステムを連携、標準化し、自動化することで、企業の複数のデータソースが収束する。これが企業全体の整合性につながり、一貫性を生み出す。異なる人、異なる分野、異なるシステムが同期し、常時更新される単一の情報源からコミュニケーションとコラボレーションを行い、オペレーション全体のライフサイクルが途切れることなく維持される。
こうしたクローズドループのシステムから得られる5つのライフサイクルを紹介しよう。自動化の力を活用し、卓越したオペレーションを実現するためには、これらすべてが一体となる必要がある。
1. ビジネスプロセスの自動化
製造における自動化とは、単にロボットをプログラミングしてものづくりを行うことをはるかに超えるものだ。そこには企業経営の舞台裏のワークフローの効率化も含まれる。発注書から人事業務までのビジネスプロセスを自動化することで、手動で行っていた業務をソフトウェアに移行させ、キャパシティを解放して効率を高め、一貫性を生み出すことができる。例えば人事は給与計算とスケジュール管理を自動化することで、採用活動と人材確保に集中できる。
ビジネスプロセスの自動化には、以下のようなメリットがある。
- 異なるシステムを接続し、特定のプロセスのスループットを向上
- データを統合し、同じ情報を基にした複数人での作業を実現
- 成果物を自動提供し、次工程へのタスク継続を可能に
- 重複作業を洗い出し、無駄とコスト超過を排除
- ジャストインタイム生産に対応した、より良好な在庫管理
2. 製品ライフサイクル管理
製品の設計、製造、流通は、かつてはサイロ化されたストップスタートプロセスであり、プロジェクトを設計から製造へ引き継ぐことは困難だった。しかし自動化により、製品ライフサイクル管理は1つの分野から次の分野へとシームレスにデータが受け渡される、連続した工程となった。データの一元化により、設計、エンジニアリングから製造、販売まで、製品ライフサイクルのさまざまな段階に貢献するすべての人が企業規模で連携し、市場投入までの時間を短縮できる。
3. 製品情報管理
製品情報管理 (PDM) は、整理されたデータ情報源を基に全員が作業を続けられるよう、設計とエンジニアリングのプロセスを自動化する。Autodesk Vaultなどのソフトウェアは、エンジニアリング、製造、拡張チーム間のコラボレーションを促進。設計と修正を追跡し、社内外のチーム間のコラボレーションを可能にすることで、よりスムーズで迅速なワークフローを実現する。
例えばエンジニアが製品の3Dモデルを開発する場合、そのデータセットには膨大な量の情報が含まれる。この情報は、エンジニアリングから製造、生産、メンテナンスへと移行する過程で失われてしまうことが多い。製品データ管理は、その情報を何度も作り直す代わりに再利用を容易にするもので、自動化の大きな第一歩となる。
4. 顧客ライフサイクル管理
データは社内のオペレーションを最適化する力を持つのに加えて、顧客との関係にも同じ能力を発揮する。獲得から維持まで、顧客ライフサイクルの各段階でデータを活用することで、あらゆるタッチポイントでカスタマイズされた意図的なインタラクションが可能となる。データを収集するデジタルコミュニケーションチャンネルを持つことで、顧客が購買プロセスのどの段階にいるのかを把握し、顧客との接点を持ち、顧客との親密度を高めることができる。
デジタルコミュニケーションチャンネル (チャット機能やセルフサービスポータルなど) により、100人の顧客からの100通りの問い合わせに対応し、一人ひとりと親密な関係を築くことができる。この自動化により、顧客ライフサイクルをパーソナライズし、摩擦のないエクスペリエンスを実現し、ロイヤリティを高め、成長を促進できる。パンデミック以降、製造業界でもカスタマーエクスペリエンスが優先事項となっている。
5. 技術ライフサイクル管理
製造設備とプロセスの自動化においては、投資するハードウェアとソフトウェアのライフサイクルのロードマップの作成が非常に重要だ。つまり、資産の取得から廃棄までの技術ライフサイクル管理だ。
資産の取得では、何を作るのか、誰のために作るか、どういった材料を使用するのかを検討し、オペレーションに最適なテクノロジーを判断することが重要になる。例えばスポーツカーを作るのであれば、強度はあるが軽量なカーボンファイバーが適切かもしれない。だがコンシューマー向けの車であれば、鉄やアルミを用いることになるだろう。顧客やデザインによって適切な技術は異なる。十分な情報を得た上で決断するには、次のような問いが重要だ。
- 市場で競争力を発揮するための最適なポジションに立つには、どのようなテクノロジーを用いるべきか?
- 使用する材料を扱うのに必要な設備は? 規制が変わり、サステナビリティのために材料を切り替える必要がある場合、この技術は設計、生産方法、サプライヤーの変更に対応できるか?
- 新技術が利用可能となった場合の、旧技術の更新や廃棄に対する計画は?
自動化されたクローズドループのオペレーションでは、技術インフラの機能に対する可視性は向上し、また技術のライフサイクルの最適な管理方法についての知見が得られる。
製造業の自動化における3つの課題
製造における自動化には多くの利点があるが、企業として想定すべき課題やトレードオフもいくつか存在している。
1. 経済的実現可能性
製造における自動化はケースバイケースで判断する必要がある。企業は、たとえ技術上は理にかなっているとしても、自動化が自社の具体的なニーズに基づいて経済的に実現可能かどうか、長所と短所を比較して評価する必要がある。例えば人件費が低い国のメーカーであれば、新技術や機械に大きな投資を行う機会に飛びつくことはないかもしれない。だが人件費が高騰してアウトソースせざるを得なくなった場合、自国に仕事を残すには、ある時点で自動化する必要が出てくる。
また企業は、サプライチェーンは簡単に崩壊に陥るものだと考慮する必要もある。安い労働力があっても、他の地域の港で船が立ち往生してしまえば、どうしようもない。メーカーは、オンショアリング (リショアリング)、ニアショアリング、人件費などのバランスを検討し、自動化が必要かどうか、それがいつ必要かを判断する必要がある。
2. ロジスティクス
オペレーションの自動化の仕組みはロジスティクスの課題を生み出すが、これを避けるには適切な計画を立てることが必要となる。だがその労力が大きすぎれば、企業を尻込みさせてしまう。まず、各プロセスの自動化を進めるにつれて中断が生じる。飛行中に飛行機の車輪を変えることができないのと同じだ。次のような点を検討する必要がある。
- さまざまなデータフローをどう連携するべきか?
- 異なるプロジェクトや製品をどう結び付けるのか?
- 異なるシステムや分野間でのデータ交換をどう標準化するのか?
自動化は依存関係も生じさせるが、それは長所でもある。互いに連携する機械とプログラム間のオープンな情報の流れにより、高機能な製造のエコシステムが生まれる。だがタスクが互いに依存する場合、プロセス上の小さな破綻がシステム全体の障害につながることもある。
3. 組織の改編
自動化により生産ラインはこれまで以上に迅速かつ効率的に稼動するようになるが、それは同時にラインから人の手が排除されることを意味し、より認知力が必要とされる分野に労働力を投入するよう再編成する必要がある。熟練労働者の雇用や、現従業員のスキルアップに投資する必要が出てくるだろう。
自動化の良い面は、職場のテクノロジーが、デジタル化に前向きな雇用主を求める求職者の多くにとって魅力的なことだ。だが今日の労働市場で優秀な人材を見つけることは困難だ。事実、2030年までに製造業で不足するポジションは210万件に上る可能性がある。自動化を成功させるには、現在の従業員の再編成とスキルアップが必要な投資となるだろう。
製造業の自動化の活用事例
自動化の原則は確固たるものだが、その適用範囲は特定のニーズに応じて業界や企業により異なる。ここで、製造における自動化の事例を紹介しよう。
GEAがカスタムマシンを自動化
1881年創立のGEAは、食品飲料業界を中心とする製造向けに機器、システム、加工ソリューションを提供する世界有数のメーカーだ。規格品を提供する一方で、機器のカスタムデザインも行っている。顧客のニーズにより注文内容は異なっていても、どのユニットでもコンプレッサー、ポンプ、バルブなどの主要部品は同じだ。標準コンポーネントを使用して構成を作成しカスタマイズするため、GEAはAutodesk Inventorを使用してカスタムマシンの設計を自動化し、Vaultを使用してエンジニアリングのタスクと成果物を自動化している。同社は、エンジニアリングにかかる時間を最大80%短縮し、これまで数週間かかっていた新規のデザインを数時間で作成できるようになった。
ANDRITZ、データ管理の自動化でエラーを削減
オーストリアの製紙機械メーカーANDRITZは、企画・設計プロセスをデジタル化するまでは紙の山に埋もれていた。業務プロセスの自動化に伴い、ANDRITZはAutodesk Platform Services (旧称Forge)、Vault、BIM 360を使用してワークフローを合理化し、バリューチェーン全体で情報、データ、設計に等しくアクセス可能にした。データ管理を自動化することで、手作業によるデータ記録にありがちなミスが減り、会社とサプライヤーがダイレクトに連携できるようになった。
VisiConsultがX線をカスタマイズ
主に航空業界向けの産業用X線装置を製造しているVisiConsultの顧客層は拡大の一途を辿っており、さまざまな業界向けのカスタムX線装置の注文を受けることも多い。シームレスなデザインビルドプロセスを実現するべく、VisiConsultはFusion 360 ManageとFusion Lifecycleによる自動化を活用して顧客と協働し、製品ライフサイクル管理を自動化し、原材料が使用される前にバーチャルでデザインを検証、シミュレーションしている。
製造業の自動化の未来とは?
今後、世界人口は着実に増加し、2050年には100億人に達すると予想されている。それに伴いモノの需要も高まる。つまりメーカーは、より良いものをより速く生産することでこの需要に応えなければならない。しかしその一方で、サプライチェーンは脆弱で、資源は不足し、労働力は減少を続けている。
現状では自動化は万能とは言えないが、製造における自動化の未来は、こうしたアンバランスの是正に役立つものとなるだろう。テクノロジーはさまざまな付加価値をもたらすだろうが、自動化の中核的な目的は変わらない: 反復作業を処理し、データの力を活用し、人間の潜在能力を解放して製品イノベーションなどの付加価値の高い作業に集中できるようにする。
ここで、自動化の未来を覗いてみよう。
インテリジェントオートメーション
システム同士の連携が進み、インダストリー4.0が当たり前になると、自動化によって製造は大きく飛躍することとなる。現在の構成では、機械は反復かつ既知の作業の処理を得意としている。今後は、機械学習能力の向上により、不測の事態を予測し、先手を打って軌道修正するような自律的なオペレーションが可能になるだろう。
これにより業界はインテリジェントオートメーションへと移行し、その結果としてハイパーオートメーションが実現する。このハイパーオートメーションでは、高度なソフトウェアと技術により、自動化可能な業務プロセスはすべて自動化される。これにより、次のような要素を使用して観察、分析、改善可能な自律型工場が登場する。
AI
AIは今後もその領域を拡大し、自動化を次の段階へと進めていくだろう。リアルタイムにデータをモニタリングすることにより、AIは操作を自動修正し、最適化できる。製造業では、AIを活用したジェネレーティブデザインが製品開発の多くを担うことになるだろう。コンピューターがベーシックな構成を基に。人間の脳では思いつかないようなさまざまなデザインの可能性を検討し、最適な解を導き出す。
機械学習
コンピューターはアクションを実行するようプログラムされている。将来的に、コンピューターが自らデータを分析し、パフォーマンスを最大化するために何をすべきかを考えることができるようになるだろう。すでにそのヒントは存在している。例えば予知保全だ。設備の故障は製造プロセスにおける最大の障害のひとつで、メーカーにかかる損害は1時間あたり532,000ドルに上ることもある。予知保全はこうした不具合やダウンタイムを抑制しようとするが、その能力をフルに発揮するための自動化環境はまだない。工場のスマート化が進むにつれ、あらゆる場所に設置されたセンサーがデータを収集して工場は最適化され、機械学習はより強力なものになるだろう。
RPA
RPA (ロボティックプロセスオートメーション) は、人間の行動を監視、追跡し、同じタスクを模倣して自動化できるソフトウェアだ。
製造の未来における人間の役割
自動化が加速する中で、人間の役割が変化していることは間違いない。労働者はますます製造の現場から離れ、より認知力が要求される領域へと活動の場を移しつつある。未来の労働者は、複雑で柔軟な自動化設備をクリエイティブに編成する役割を担うようになるだろう。だが、実際の製造現場から離れても、人間がインテリジェントオートメーションの重要な要素であることに変わりはない。
製造における自動化の未来とは、機械とソフトウェアが全工程を無人で操作する無人化工場だ、と考える人もいる。事実、自律走行車両やロボットが製造を仕切っている事例も存在する。だが、それは現実的には柔軟性の高い製造環境で人間労働者とともに働く「協働ロボット (コボット) 」との、高度なインテリジェントオートメーションの組み合わせとなるだろう。タスクを任せるのではなく、ロボットという仲間と技術システムを用いて新たな方法で連携する。この新手法は、製造の生産と効率を新しいレベルに引き上げ、そして世界を変えることになるだろう。
プラットフォーム
完全自動化され、データが飛び交うインテリジェントな工場はこうして完成する。では、これらのデータはどこに保存されるのだろう? 次の大きな一歩は、プラットフォームを取り巻くものとなるだろう。クラウドベースのプラットフォームは、自動化で生成されるすべてのデータをホスティングするエコシステムに接続される。それはシステム、人、プロセスを連携し、異なる分野やツール間の情報の流れを向上させるだろう。プラットフォームは、自動化を次の技術力へとレベルアップさせる。
製造における自動化: データドリブンな未来
自動化は、工場でベルトコンベアが車を移動させていた時代から大きな発展を遂げた。製造の自動化はよりきめ細やかなものとなり、データの持つ力に焦点が合わせられている。これまで以上に高い可視性を実現し、より深い知見を提供するようになった。自動化が加速するにつれ、企業はデータに基づいた意思決定が行えるようになり、より競争力の高い立ち位置と、より革新的でレジリエンス性に優れた未来へと進むことができるようになる。