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不確実な時代にビジネスの成長を考える業界リーダーに向けた洞察 4 項目

business growth

  • Altimeter社のシニアアナリストであるスーザン・エトリンガー氏が、パンデミックから得られた教訓をもとに、企業がレジリエンスを高めるための洞察を提供。
  • シナリオプランニングとクリエイティブシンキングを用いて柔軟性を向上させ、損失を軽減することで、企業は状況の変化に対応できる。
  • チームが対応するためのシステムを構築し、従業員に柔軟性を与えることで、リーダーは組織に合った新しい規範を作ることができる。

ビジネスはここ何年にも渡って DX を目指してきた。その動向が、新型コロナウイルス感染症が全業界に新たな切迫感をもたらした 2020 年はじめに急転換している。

大手企業は人材配置やビジネス手法、さらにはサプライチェーンの逆転や新たな安全規制、手順変更などに対応する販売情報管理を、数週間という短いスパンで転換することを迫られた。つまり、ビジネスリーダーには数々の新たな要求と新たな心配事がもたらされたのだ。

だが、ビジネスリーダーや独創的な思考を持つ人々がそうであるように、その多くは迅速に転換した。当初のショックが落ち着き、パンデミック禍でのビジネスの遂行が現実になると、レジリエンスを備えたビジネスの成長を助成する上で企業各社が頼りとしたのは、その一番の強みである資産、つまり労働力だった。これは顧客とつながり、ビジネスを呼び込み、(象徴的な意味でも実務上でも) 窓口を開いておくための新たな方法を見つけることを意味した。

ビジネス 成長 ビデオ会議
ビジネスリーダーは、デジタル・ワークスペースをフィジカルなスペース同様に実りあるものにする課題に直面している

パンデミック下の決まりに従った生活が自然な日常となり、また有効なワクチンという現実が状況の改善の兆しを示唆するようになった現在、リーダーたちは今後の動向に関心を向け始めている。

Altimeter のシニア アナリストであるスーザン・エトリンガー氏は、「ネクストノーマル時代のビジネス成長戦略」に関する 3 部構成のシリーズで、近い将来にリーダーが直面する、ビジネスと雇用に関する課題を探求している。今後数カ月から数年で職場や関係性、ビジネスモデルがどう変化していくのかを感じ取るべく、氏は多数の専門家やビジネスリーダーにインタビューを行い、広範な調査を実施した。その結論を簡潔に言えば、「ノーマル」への回帰はあり得ず「ネクストノーマル」があるのみ、ということだった。

「“ノーマル”という考えは、熱でうなされているときに見る夢のようなものです」と、エトリンガー氏は述べる。「状況は安定に向かうのだという、心地良い夢です。我々は不確実性の中で、生産的、クリエイティブで満ち足りた生活を送る方法を見つけなければならないと思います。このクリエイティブな不確実性、つまり不確実性で我々自身のレジリエンスを試すという考え方こそが、非常に重要なのです」。

ビジネス 成長
あらゆる組織が、その目標と社員に最良である独自の基準を定義できる

パンデミック後のビジネスの成長の特徴は、ディスラプティブな時代におけるレジリエンスであり、今後再び同様の状況に直面しても成功する準備ができていることの証となる、とエトリンガー氏は話す。

「我々が昨年 1 年間でどれほど多くのことを学んだかを考えると、それは非常に興味深く、ある意味でエキサイティングでもあります。もちろん、大変な年ではありました。多くの方が亡くなり、さまざまな意味で想像を超えた困難に遭遇しました。でも、我々は非常に多くのことを学びました。貴重な体験であり、この経験を今後に活かすべきです」。

エトリンガー氏の調査から得られた、以下に紹介する 4 つの重要なポイントは、パンデミックで得た教訓を用いて、ビジネスがそのレジリエンスと成長をどう向上させられるのかを説明するものになっている。

1. シナリオプランニングこそが新たな戦略プランニング

企業は自然災害に対して、毎年何億円もの金額を「浪費」している。そうした企業はハリケーンや竜巻、洪水に備えた計画を立て、経済の悪化、送電網の障害、政変などに対する戦略を練っている。だが、2020 年以前に世界規模のパンデミックの可能性を考慮していた企業はほとんど存在しない。考慮していたとしても、ほとんどの企業は広義の意味で行ってはおらず、ビジネス領域外での出来事が自らのビジネスに与える影響を熟考したことはなかったと、エトリンガー氏は話す。

「シナリオプランニングにおいては、金銭上の視点からだけで考えるのが典型でした」と、エトリンガー氏。「要点になっていたのは、サプライ チェーンに問題が生じた、従業員が職場に来られなくなった、発注が途絶えたといった場合に、収益や利益率にどのような影響があるのか?ということです。でも今となっては、シナリオプランニングが総合的な視点で検討されるべきであることは明白です。拠点のある都市にはでは何が起こるのか? 輸送システムはどうなる? 学校は? 医療システムは? 最良、標準、最悪のシナリオとは? こうしたモデルの構築においては、責任の所在がかなり限定的でした」。

業界 成長 分散 業務
分散業務に取り組む場合、企業はビジネスの成長を促進しつつ、社員のニーズに合う方法で運営していく柔軟性を持つ必要がある

だがエトリンガー氏は、こうしたモデル構築を行った少数の企業により、他の企業が今後をどう考え、計画し、戦略を立てるべきかの基盤が築かれたと話す。

「この報告書で明確になったのは、誰もがシナリオプランニングの力を備えるべきだということです。最悪の事態を想定することは、悲観的な思考ではありません。それは自らが脆弱ではないこと、予想外の何がが起こっても組織は崩壊しないということを確認するための、ひとつの手段なのです」。

予期せぬ出来事に対するプランニングにより、何かが起こりそうな予兆を見つけた際にも不意を突かれることなく効率的に対処できるよう、システムを柔軟でレジリエンスの高いものにしておくことができる。

2. クリエイティブ シンキング = スーパーパワー

ほとんどの業界が、一夜にして一転した。家から出られなくなった人々はオンライン通販に押し寄せ、流通センターや発送センターはかつてないほど多忙になった。その一方で旅行や接客の業界には急ブレーキがかかった。だが建設、建築、エンジニアリングなどの企業では、話題は真逆だった。これほど多くのオフィスは必要だろうか? 自社のオフィスは、どう転用できる? 前の月までとは異なる何を提供すべきだろう?

例えば Apple iPhone のケースを製造していたメーカーの場合、選択肢は工場を閉じるか、PPE (個人用保護具) の製造をスタートさせるかだった。転換可能だった企業は PPE の製造を選択した。

では、この危機において直接的な価値を持たない商品を提供している企業は、どうすればよいだろう? こうした企業がクリエイティビティを発揮したのは、こうした場面だ。

「多くの企業が“直ちに財務的な価値にはならなくても、企業にとって価値があり、財務的価値をサポートできるもので、この一連の状況へ適切に対応するにはどうすればよいか”を考えました」と、エトリンガー氏。「企業は、これまでの市場状態であれば実施したであろう、積極的な売り込みからスイッチを切り替える必要がありました。顧客のビジネス継続を支援するため、このプロセスを通じて、できるだけ顧客の役に立つよう努力していることを示す必要があったのです。そしてもちろん、無償で手に入れた商品やサービスが、状況が安定した後も継続的に利用され、他社のものより好まれることを期待しました」。

3. 業務の分散はまだ定義段階にある

エトリンガー氏の調査は、事後分析の段階にはない。パンデミックはまだ終わっていないのだ。エトリンガー氏は数々のインタビューを通じて、企業が自社組織、職場、顧客について何を学んだか、そして分散業務やその他の課題に適応するためのユニークな経験について、有益な理解を得た。

「我々はまだ、あらゆるワークプレイスを対象とした分析結果を手にしていません」と、エトリンガー氏。「今働いている環境について知るべきことをリーダーに伝えるシグナルがないのです。企業は各種のツールやビジネスインテリジェンス、顧客関係管理 (CRM)、リソース管理を活用しています。こうしたツールはどれも、独立して機能するよう作られています」。

こうしたツールは、環境が変化した際に役に立つのだろうか? ビジネスリーダーにとっての重要なタスクには 2 つの要素がある。ひとつは物理空間での進捗をできるだけ再現し、それをデジタル空間に変換するダッシュボードを作成することだ。例えばオフィスでの対面でのミーティングを、どのようにオンライン ミーティングへ転換できるだろう? また、数百万ドルのアイデアを生むこともある偶然の出会いを、デジタル オフィスのインターフェースで再現するには? 企業は、その場所にかかわらず組織全体が現況をより良く理解し、対応できるようなシステムをどう構築できるのだろうか?

リモート学習 母親 子供 ラップトップ
リモート学習中の子を持つ親にとって、生産性は異なる意味合いを持つ場合がある

4. 分散業務環境においては人間的な要素が極めて重要

昨年は、多くの企業が被雇用者の実生活の状況に対処するため、雇用主としてどう柔軟性を行使すべきかに頭を悩ませた。オフィス、建設現場、工場など多種多様な職場における生産性は、分散業務では必ずしも同じようにならない、とエトリンガー氏は話す。社員の中には、リモート学習中の子供たちの世話をしながら在宅で働く人も、家族の介護をしている人もいる。

「生産性の意味を理解するには、こうした事柄全てを結び付けて考える必要があります」と、エトリンガー氏。「その上で、見逃しているメッセージはないか?、オフィスやその他の職場環境では直観的に把握できるが分散業務環境では把握できないことはないだろうか?と自問するべきです」。

「利用可能なデータ、受け取れていないシグナルについて、クリエイティブに考える必要があります」と、エトリンガー氏は続ける。「これはリーダーにとっては難しい質問ですが、非常に重要なことです。リーダーとして“自分が何を見逃しているのか分からない。社員の状態が心配だ。社員は大丈夫だと言うが、全く新しいコミュニケーション言語を学んで欲しいと考えている”と発言することは、自らの立場を危うくしかねません」。

パンデミックと、それがもたらすビジネス展望の変化について、それは最終的に「リーダーが、各組織と社員のニーズにおける、最良の基準を生み出すことを可能にします」と、エトリンガー氏は述べている。

デジタルの未来における成長とイノベーションに関するビジネスリーダーの洞察を紹介した 3 部構成のレポートシリーズを公開中。

著者プロフィール

キンバリー・ホランドはアラバマ州バーミングハム在住の、ライフスタイル系記事のライター、編集者。所有する書籍を色分けしていないときは、キッチン向けの新しいガジェットを使った料理の実験を友人たちへ披露することを楽しんでいます。

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