クラウドコラボレーションがあらゆる業界を改革、保護する方法とは
- クラウドコラボレーションとは?
- コラボレーションの歴史: デスクトップからクラウドへの移行
- クラウドコンピューティングとコラボレーションの利点トップ10
- クラウドが業界の改革へどう貢献するか
- クラウドコラボレーションの未来とは?
Y2K問題がデジタル領域の大きな懸念であった時代には、「自分たちの、そして地球の裏側のコンピューターから、複数の人が同時にプロジェクトに取り組める日が来る」と言われても、遠い未来の予言に思えたかもしれない。だが、それは現実になっている。クラウドコラボレーションの時代へようこそ。
クラウドコンピューティングは、DXジャーニーのピークとなる。企業がクラウドへの移行を進めることで、以下のようなことが可能となる。
- より良好かつ迅速な意思決定
- 機械から建造物、エンターテインメントまで、よりパフォーマンスの優れた製品の創造の推進
- 価値の低い活動に費やす時間を無くして創造性と革新性を向上
- 製品の持続可能性と信頼性の飛躍的向上
クラウドは、真のコラボレーションと言える、企業レベルのコラボレーションを実現できる。適切なデータを適切な人と共有することでワークフローを加速し、組織全体でより優れた意思決定とより大きな価値が生み出される。
クラウドコラボレーションのこれまでの経緯と今後の展開、それが未来の仕事をどう推進し、業界を変革していくのかを詳しく紹介しよう。
クラウドコラボレーションとは?
クラウドコラボレーションとは、Webサイト、モバイルアプリケーション、デスクトップソフトウェアからアクセス可能な1つの仮想空間において、同一の情報源 (SSOT: 信頼できる唯一の情報源) をもとにバーチャルチームとして共同作業を行うことのできる機能を指す。クラウドコラボレーションは、デザイン、プロジェクト、予算、分析のいずれのために使用する場合にも、どのツールをデータオーサリングに使用するかを問わず、簡単に、適切な人が適切なタイミングで、早い段階かつ高い頻度でデータへアクセス可能となる。例えば、建築家による建築モデルの共有、エンジニアによる図面の検討、映画編集者がカットをアップロードして監督が確認が行える。
クラウドコラボレーション:
- 紙の代わりにデジタルのワークフローを活用
- 情報へのアクセスや共有がいつでも、どこからでも可能
- SSOT (信頼できる唯一の情報源) を作成
クラウドコラボレーションは、単にファイルを共有することには留まらない。 重要なのは「データ」の共有だ。プロジェクトやチーム単位でのクラウドコラボレーションは最初の一歩に過ぎず、本当の「アハ体験」はエンタープライズコラボレーションから訪れる。これは企業内の全員がSSOTをもとに共同作業を行い、顧客への価値創造を劇的に向上させるものだ。
コラボレーションの歴史: デスクトップからクラウドへの移行
ここで、かつての共同作業がどのようなものだったかを思い浮かべてみよう。それは手作業で、無骨で、非効率的なものだった。クラウドが登場するずっと前の段階では、社内に文書管理部門が設けられていることも多かった。図面やファイルが必要の場合は、文書番号を伝えて印刷を依頼する。チームメンバーが別の場所にいる場合は、ファイルや設計図が時間通りに届くよう宅配便を利用するなど、時間との戦いになった。
PDFやJPEGファイルの登場によって、コラボレーションは容易になった。だがパソコンにファイルを保存して、すべてのファイルを関係者にメールで送信しなくてはならず、受信者にはそれを開くためのソフトが必要だった。そして、データは独自形式のファイルにロックされていた。エンジニアが新しいデザインを購買部門に送信して調達する、というような簡単なものではなかった。PDFの作成や図面の印刷が必要だが、そうした情報にはすぐに変更が加えられ、あっという間に役立たずになる。誰かが修正を加えたら、新しいバージョンを保存する必要があった。これは混乱の種となる。何種類もあるバージョンから最新バージョンを探し出し、全員が正しいバージョンに基づいて作業することの確認に時間がかかるためだ。誰しも一度は「バージョン管理地獄」の犠牲者になったことがあるはずだ。サイロ化された情報に埋もれ、ワークフローが滞ってしまう。
そうした時代を経て、BIM (ビルディング インフォメーション モデリング) ツールなど、チームでの共同作業を可能にするコラボレーションソフトウェアが登場した。DXは、企業がインターネットを活用して素早く情報共有できるようになることで始まった。だがこれが「N2」問題を生み出す。より多くの人がスピーディに共有することで情報が複製された結果、「バージョン管理地獄が加速」したのだ。その解決策となったのがクラウドだった。2000年代初頭に、AmazonとGoogleが消費者・企業向けクラウドの初期バージョンをリリースし、その後マイクロソフト、IBM、アリババなども参入。データが突如としてホームと呼べる居場所を手に入れたのだ。そして2020年にパンデミックが発生。人々はほぼ一夜にしてリモートワークを強いられるようになり、クラウドコラボレーションは新幹線のように加速した。多くの企業にとって、クラウドは長期的な目標から必須のビジネス戦略へと急速に変化していった。
- クラウドに大きくシフトしている企業は、2012年にはわずか20%に過ぎなかった。
- ガートナーによると、クラウド支出は2021年に過去最大の4,100億ドルになったが、2022年にはさらに800億ドル以上も増大。2023年には、クラウド収益は6,000億ドルに達すると予測されている。
- 2025年までには、85%の企業がクラウドファーストのビジネス戦略に移行していると予測されている。
クラウドコンピューティングとコラボレーションの利点トップ10
クラウドは業務とビジネス、あらゆる業界を改革している。その内容を紹介しよう。
1. より優れた製品
ほぼ全てのデバイスから、適切な人物が早い段階で、かつ高い頻度で情報にアクセスできるため、共同作業者に対して情報が完全に可視化され、プロセスのあらゆる段階でより優れた意思決定が可能となる。その結果、より信頼性の高い、高性能な製品を実現できる。
2. 高いエンゲージメントと生産性
クラウドはユーザー数に制限のない、開かれたフィールドだ。このインクルージョンは、人々のつながりと貢献、取り組みの一部となることを可能にし、エンゲージメントと生産性に直接的な影響をもたらす。
3. サステナビリティの向上
クラウドファースト戦略では、サステナビリティの専門家が情報に早い段階かつ高い頻度でアクセスできるため、よりサステナブルな結果がもたらされる。自らの意思決定がエンボディドカーボンとオペレーティングカーボン、エネルギー消費、廃棄物にどのような影響を与えるかをチーム全体が、学び、より深く理解することができる。
4. より優れたイノベーション
機能横断型チームは、どこからでもリアルタイムでプロジェクトに取り組むことができる。コラボレーションは新しいアイデアを生み出し、近い将来にイノベーションがクラウドの価値の75%を占めるようになるのも驚きではない。パンデミックにより、皮肉なことにかつての対面型チームのイノベーションは低下したかもしれないが、クラウドコラボレーションによって世界中から専門家が参加できるようになったことで、チームの規模とイノベーションは劇的に拡大した。
5. コストの低減
クラウドにより仕事の効率は高まる。チームを統合し、情報を一元化し、余分な工程を省くことで、時間とコストを削減できる。コスト削減につながるクラウドは、他に以下のような利点がある。
無駄の削減
クラウドコラボレーションにより情報のやり取りが可能となり、より優れた意思決定、ミスや手戻りの削減につながる。
ライフサイクルの短縮化
エンドツーエンドのプロジェクトライフサイクルがクラウドコラボレーションにより短縮され、人件費の削減につながる。
6. 市場投入までの時間を短縮
クラウドに待ち時間は存在しない。誰でも必要な時に必要なデータにアクセスできる。このリアルタイム性によって、生産と意思決定をより迅速に実行できる。
7. 安全性の向上
工場でも建設現場でも、常に完全な可視性を確保できるため、プロジェクトマネージャーは生産前のリスク評価、生産時の安全性が向上できる。
8. スケーラビリティ
クラウドはビジネスの成長へ容易に対応でき、企業の成長に合わせて拡張できる。ビジネスが停滞期に入った場合には、速やかにコストを削減できる。コストと価値創造の連動調整はあらゆるビジネスにとって強力な財務的利益をもたらす。
9. 納期の厳守と迅速化
より良好で迅速なコミュニケーションと意思決定で効率性と市場投入までの時間短縮が実現でき、企業は納期の遵守 (さらには前倒し) によって、より迅速に納入目標を達成できる。
10. 顧客の満足と成功
より良い製品をより早く顧客に届けることは、ビジネスにも有意義だ。エンドユーザーの満足度は高まり、顧客維持率も高まる。クラウドコラボレーションのメリットを伝えることは、顧客の成功にも貢献する。
これらのメリットはすべて、最終目標である収益性の向上に結実する。MIT Sloanによると、DXの上位10%にいる企業の収益成長率は、下位25%の企業の2倍になっている。
クラウドが業界の改革へどう貢献するか
DXは企業個々のレジリエンスを高め、競争力の強化につながる可能性がある。だが総合的に見れば、DXは業界に革命をもたらすことになる。たとえば世界各地の政府が公共プロジェクトへのBIM義務化を行う中で企業はDXを加速させ、クラウドに真っ向から飛び込んでAEC (建築、エンジニアリング、建設) 業界全体を変えつつある。ここでDXとクラウドファースト戦略がAEC、設計・&エンターテインメントの各業界にどのよううなメリットをもたらしているのかを、クラウドを利用して大きな成功を収めた企業の事例を交えて紹介しよう。
AEC業界
大規模な建設プロジェクトは、時にはスケジュールを20%、予算を80%超過するが、その理由の多くはコミュニケーション不足にある。だがクラウドベースのプラットフォームを利用すれば話は変わる。クラウドコラボレーションでは、必要な人が必要な時に必要な情報にアクセスできるため、時間やコストの超過を抑えられる。
デザインビルドのプロセスは、設計データを必要とする多くの関係者による共同作業工程だ。例えば、ある顧客が建築家に商業オフィスのデザインを依頼したとしよう。建築家は設計仕様を基に3Dモデルを作成し、それを構造設計者と共有して、最適な建造構造を決定する。MEP (機械、電気、配管) 担当者は、エネルギー使用にプラスの影響を与える重要な情報を提供する。運用チームはビルの制御システムに対して発言権を持つ。最後に、顧客はデザインとビルドのプロセスをリアルタイムで追跡できる。こうしたコラボレーションはすべて着工前に行われる。
クラウドベースのプラットフォーム上で連携することにより、他のチームからのデザインに影響を与える可能性のある意見を確認し、建設後に生じる可能性のある潜在的な問題を回避できる。例えばMEPチームが20階に重い機械設備を設置することを決めた場合、構造エンジニアはその変更を確認し、追加重量を支えるために必要な柱のサイズを再検討できる。土木技師は、この新情報に応じて基礎の厚さを再計算し、杭の数を増やすことができる。外から見ると、「船頭多くして船山に上る」ように見えるかもしれない。だが、クラウドを利用すれば、これらの関係者を一同に集め、情報を練り上げることができるのだ。
建設業界でクラウドコラボレーションを活用する企業は、次のようなことが可能となる。
- エラーをいち早く発見: より多くの関係者に対してフロントエンドが可視化され、意見を述べることができれば、後から行うべき変更は少なくなり、手戻りは減少する。
- 各関係者が必要な情報に集中し、物事を迅速に進めるのに役立つ。
- コストを節約: 先行コラボレーションは労働力や無駄の削減による建設コストの削減、納期の短縮、長期メンテナンスコストの削減、エネルギー使用量の削減など、長期的な節約につながる。
- 工期の短縮は、建設会社とビルオーナーの両方に高い利益をもたらす。
そしてクラウドネイティブのプロジェクトでは、竣工後のビルオーナーへのシームレスな引き継ぎが可能となる。それにより、ファシリティチームは貴重な設計データすべてにアクセスして運用を最適化でき、コスト削減と居住者満足度の向上、サステナビリティ目標の達成が可能となる。
H4: Norconsultがノルウェーで大規模インフラ整備を推進
ノルウェー南部を19kmにわたって走る、関係者総勢2,000名、5億ドルの道路建設プロジェクトを受託したデザイン/エンジニアリング会社のNorconsultにとって、紙の図面を回覧していてはプロジェクトのスピードが極端に低下することは明らかだった。そこでAutodesk Platform Services (旧称Forge) を使用してクラウドベースのプロセスを活用して、あらゆる関係者からの意見を採り入れ、設計の最適化とサステナビリティ目標の達成、あらゆる場所からのデータと3Dモデルへのアクセス、さまざまなプロジェクト関係者向けのBIMコンテンツの容易なフィルタリングを実現した。
Arcadisがオハイオ州の水道設備をアップグレード
インフラの老朽化は米国全域での大きな問題となっている。オハイオ州トレドで、近隣のエリー湖に発生した有毒な藻類によって築70年の浄水場が数日間操業停止となると、設備のアップグレードの必要性が切実であることが明白となった。そこで世界的なデザイン/エンジニアリング会社のArcadisが登場する。同社は3Dスキャンを使用して、6つの貯水池のアップデート、2つの貯水池を建設のため現場の状況を正確にモデル化。これらのモデルがクラウド上にあることで、建築、構造、機械、空調、電気、土木の各チームが単一のモデルをベースに作業でき、最終的に1,000時間分の設計時間を短縮できた。
設計・製造業界
こうした前提は製造業にとっても同じであり、早期により多くの関係者への可視化が進むほど最終製品のクオリティは高まる。設計チームが工場と図面を共有することで、工場のスタッフは製品をどう作るべきかを理解できる。ファブリケーターは設計についてフィードバックし、製造コストを下げることができる。購買部門は、地球の裏側に存在していたとしても、どの材料を買うべきかを判断できる。保守/サービスチームは、サービスや保証のコスト削減のガイダンスを提供できる。営業/マーケティングチームは、こうした情報をもとに戦略を練り、顧客のフィードバックを集めて今後のデザインを調整し、より優れたセールスにつなげることができる。重要なのは、サプライチェーンの上流と下流で起きていることに、適切な人がいち早くアクセスできるようにすることだ。このチェーンには顧客も含まれている。
例えば筆者は先日ディーラーで車を修理したのだが、それは全く新しい体験だった。点検時に、画像付きの実況中継メールが届いたのだ。3時間後、問題が見つかったというメッセージが届いた。またもや画像付きで。突如として、よくあるカスタマーエクスペリエンスでは異なるものとなった。ディーラーは、私をジャーニーへと連れ出したのだ。修理工がプロセスを可視化することで、私はより多くの情報を得た上で判断を下すことができた。
設計やエンジニアリングの範疇を超え、製造工程全体や顧客にまでコラボレーションを拡大することで、コストの最適化や二酸化炭素排出量削減につながる情報を提供できるようになる。これにより、より良い製品、より低いコスト、そしてより高い持続可能性が得られる。
最新のブラウザー、ブロードバンド回線、スマートフォンが普及するまで、こうしたことは不可能だった。しかし、これだけデータの共有化が進むと、これはもはや自由選択ではなくなる。クラウドコラボレーションは、業界をより持続可能で効率的な時代へと導く必需品なのだ。そして、インダストリアルIoTと製造の自動化が当たり前になると、クラウドは生成されたすべてのデータを取り込めるようになり、現在と未来の、より優れた意思決定を実現するようになる。
東芝エレベータがデザインをカスタマイズ
エレベータの設計・製造においては、それが構造物内に精密に設置することと、それがどう使用されるのかを把握することが欠かせない。これまで東芝エレベータのチームは、設計が空間全体で正しく機能することを確認するために顧客と数週間にわたってやり取りをする必要があり、これは非効率でコストのかかるプロセスだった。だが現在は顧客がウェブページ上でエレベーターの構成を行い、クラウドベースのプラットフォームで3Dモデルを自動作成可能となっている。顧客はほぼリアルタイムで構造を正確に確認し、簡単に変更できる。旧来のプロセスにあった不確実性は排除され、それが顧客の信頼と喜びに代わった。
BBi Autosportがレーシングカーをオーダーメイド製造
BBi Autosportでは、今もスピードへの欲求が健在だ。同社は一般道やレース向けに一点物のポルシェをデザイン、カスタマイズしている。これまでのワークフローでは、一台の車に共同で作業をしていても、異なるチームがサイロ化した状態で別々にパーツを作成していた。だがAutodesk Fusion 360へ切り替えたことが画期的な変化をもたらした。クラウドを利用することで、すべての可動部品と設計データを同時処理可能な1つのハブに集約でき、チームがより早くゴールを達成するのに役立った。
メディア&エンターテインメント業界
メディア&エンターテインメント業界は、ライターズルーム、撮影現場、編集室など、長い間対面式で行われてきたクリエイティブなコラボレーションセッションで支えられている。 これはリニアなプロセスでもあるため、制作段階が終了した後で変更が生じた場合には、高額な撮り直しが必要になることも多かった。
1か月にわたる絵コンテやキャラクター開発の後、プロデューサーが特定のキャラクターの方向性を気に入らず、デザイナーがこれまでの作業内容を破棄してやり直さなければならなくなることもある。また、70mmプロジェクターではうまく映らない色など、技術的な問題や将来の商品化のために変更が必要となることもある。
クラウドベースのデジタルワークフローは、M&Eに幾つものメリットをもたらす。
- 脚本から上映まで制作全体が完全に可視化されるため、デザインやプリプロダクションの段階から誰もが参加でき、ワークフローがよりスムーズになり、デザインや撮影のやり直しが少なくなる。
- クラウドでは、誰が、どこで、いつ、何を見られるかをより厳密に管理することができるため、より高度なIPセキュリティ基準で映像作品や製品の発売前のリークを防止できる。
- 映像などの情報をリアルタイムに確認し、事後ではなく制作中に変更を加えることができるプラットフォームを提供する。
- 1つの作品、ゲーム、製品に携わる何百人もの人々の足並みを揃えることができる。
- かさばるフィルムやビデオにではなく、すべてのデータをクラウドに保存することで、より整理されたアセット管理と検索可能なファイルを実現する。
Amazon Studiosが「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」をリモート制作
Amazon Studiosが手がける「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」シリーズでは、20のVFXハウスにより10,000もの視覚効果ショットが作成された、これまででも最も複雑な作品のひとつとなっているが、それはリモート参加した国際色豊かなスタッフにより成し遂げられた。M&Eは長年にわたり、フィルムリールやデジタルテープといった物理的なアセットに依存する産業だった。だが、ますます複雑化するプロジェクトでデータのネットワークを編成するべく、Amazonはクラウドを活用している。Autodesk ShotGridやMoxionなどのソフトウェアは、部門間のハンドオフを合理化し、映像を編集者や経営陣と瞬時に共有して、リアルタイムにストーリーを編集することができる。
10年以上にわたりグローバルにコラボするJellyfish Pictures
アニメーション/VFXスタジオのJellyfish Picturesも、クラウドに精通している企業だ。「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」などの長編作品、「ストレンジャー・シングス」シリーズなどに参加してきた当社は、10年前からクラウドを活用している。さまざまな国で活動する複数のチームが、コラボレーションする単一のバーチャルな屋根を作ろうと考えたのだ。その当時は、クラウドコラボレーション向けに設計された高品質なツールは少なかった。現在、JellyfishはShotGridなどのクラウドソリューションを利用し、チームにタスクを割り当て、サイロを解消し、共有プロジェクトでの作業を調整している。
クラウドコラボレーションの未来とは?
現在、90%近くの企業がワークフローをクラウドに移行中だ。これはよい徴候だが、その多くはまだ移行の初期段階にあり、クラウドコラボレーションの力を十分に発揮できていない。 これまでのコラボレーションツールは、チームやプロジェクトに焦点を当てたものだった。オートデスクもチームコラボレーションソフトウェアからスタートさせている。しかし今、BIM 360 DocsやAutodesk Construction Cloudなどのソリューションを用いて、クラウドコラボレーションが向かう先、つまりエンタープライズコラボレーションに合致するよう、より大きな視野で考えるべき時が来ている。
データにアクセスする必要があるのは、設計やエンジニアリングのチームだけではない。実際、これらのチームは総コストの10%程度に過ぎないことがほとんどだ。プロジェクトコストのほとんどは人件費、材料費、販売費、マーケティング費、諸経費、運営費に費やされる。コラボレーションをチームから企業レベルにまで高めることで、プロジェクトの初期段階から誰もが単一の情報源を基に作業できるようになる。財務からマーケティング、営業、生産に至るまで、プロセスの早い段階で必要なデータにアクセスできれば、可視性が高まり、組織全体に利益をもたらすより良い意思決定ができるようになる。局所的なデザインの最適化から、企業全体のグローバルな最適化へのシフトだ。
単なる設計と製造プロセスの支援から、より大規模な企業のエンパワーメントへのこの変化は、Autodesk Platform Servicesなどのプラットフォームと、製造業界向けのAutodesk Fusion、AEC業界向けのAutodesk Forma、メディア&エンターテイメント業界向けAutodesk Flowのように人、プロセス、データをつなぐ各業界向けのインダストリークラウドによってドライブされる。
プロジェクトレベルにおいて、クラウドコラボレーションは納期の短縮、コストの削減、持続可能性の向上をもたらす。企業レベルでは、リーンで迅速な組織、顧客満足度の向上、革新性の向上、そして収益増をもたらす。クラウドコラボレーションは、それを企業とその顧客、そして業界全体が現実のものとするための接着剤なのだ。