ロボットやドローン3Dプリンターが建築や建設を変革する4つの方法

新たなレベルの効率やスピード、持続性と自動化を約束するロボットや3Dプリンターが、建築や建設を変革する4つの方法を紹介しています。


The combination of robots, drones, and 3D printers offers prospects for heightened efficiency, speed, sustainability, and automation. It also raises inquiries regarding labor dynamics and the concept of design ownership.

ドローン 3D

Zach Mortice

2015年8月31日

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建築物を作ることは、サングラスや家具、医療機器やジェット戦闘機などとは全く異なる。これほど大量の材料を一箇所に集めて1つのアイテムを作り上げ、ゴミを車両で持ち去るような製造プロセスは、他には存在しない。とてつもなく非効率だ。

モジュール建築は、廃物を減らす大きな潜在能力を持つことが約束されていた。だが、それが現場での建設を、むしろより複雑にしているのではないだろうか? ロボットやドローンへ取り付けられた3Dプリンターは、それが手に負えないような建築のプロセスを解決する対応力を持つ可能性を示している。

ロボットやドローン3Dプリンターと組み合わせたテクノロジーは、すぐに21世紀の制作テクノロジーとなる可能性がある。この必然的な組み合わせは、新たなレベルの効率やスピード、持続性と自動化を約束すると同時に、労働やデザインの著作のあり方に対して疑問を投げかける。

今年の初夏、MX3D が多軸ロボットにより歩道橋を3Dプリントするという素晴らしい計画がヘッドラインを飾った。この記事では外装の建設から火星探査まで、地球をクルーズして空へと飛び立とうとするロボットと空中ドローン3Dプリンターの、4つの用途を紹介しよう。

1. MUPPette: 吊り糸は不要

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MUPPette ドローン 3Dプリンタ [提供: Courtesy Gensler]

MUPPetteの空中3Dプリントドローンは SXSW Robot Petting Zooでデビュー。ロボット工学と3Dプリントが合成された、リモートコントロールできる玩具にも似たMUPPetteは、Genslerのタム・トラン氏とジャレッド・シアー氏がデザインを行った。6ローターのドローンはレーザー距離計とGPSセンターで航行し、コンクリート押出を行う重力アシストの、ねじ素材コンベヤースパイラルを運んでいる。

MUPPetteの初期の成功により、デザイナー達はその製造方法がどれほど発展可能なのかという疑問を抱くようになった。「現時点では3Dプリントできるのは押出だけです」とトラン氏。「埋めるために押出を行うことは、まずありません。大抵は何かを流し込むか、たくさんのピースで組み立てるかのどちらかです」。

シアー氏とトラン氏は、この問題を3Dプリントロボットが構造と外装を兼ねる素材を使って解決するのが理想だと言っており、これはモダニズム以来の建築における永続的な夢だ。そうしたソリューションが形式的かつ組織的なミニマリズムを目指したバウハウスの当初の願望を満たし、素材の効率も向上させるだろう。

3Dプリントされ統合された構造と外装は、例えば木のように、より有機的な方法で成長することも可能になる。「デバイスの可搬性により、別のビルの側面に建築することもできるでしょう」とシアー氏。「足場を組む必要もありません。ドローンを飛ばして、別の建築物の側面から徐々に作っていけばいいのです」。

2. Minibuilders: ハードになるほど、うまく機能する

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MinibuildersのVacuum Robotは吸い込みカップを使って構造物の表面に張り付き、垂直方向の増強を追加する [提供: Minibuilders and Institute for Advanced Architecture of Catalonia]

「建築や建設の問題は、デザインはデジタルで行って、それから手作業で建設するために、その間で様々な非効率が生まれることです」と、ピーター・ノビコフ氏は語る。

それも、ノビコフ氏と彼のチームが数体のロボットを作るまでの話だ。

建築学とロボット工学の訓練を受けたノビコフ氏は、Institute for Advanced Architecture of CataloniaのMinibuildersプロジェクトにおける主任研究員のひとり。ノビコフと彼のチームは、主任研究員のササ・ジョキク氏と共に、大理石とポリマーの複合物から人間大の構造を作れる3ロボットのシステムをデザインした。

このチームによる優美で洗練されたソリューションは、皮肉にもこれがユニバーサルな建設アプリケーションだとノビコフに確信させるには至らなかった。彼は、このテクノロジーは特化したツールだと考えたのだ。より優れたプリント素材を開発することが最重要のミッションだと、この分野で働く誰もが考えており、ノビコフ氏は3Dプリントが再構成の可能性に欠けることを大きな欠点だとした。

だが、彼は「変則的な環境における建設の場合は、明らかに有用です」と言う。遠隔の、あるいは極端な環境で、モジュール式のタイルが全く無い場合、あるいは地形がどうなるか全く分からない場合は、現場の3Dプリントロボットでカスタマイズできれば理想的だ。その例は、荒れ果てた場所 (砂漠) から異星 (月面基地や火星基地) まで幅広く挙げられる。地形が厳しくなるほど、より実用的だ。

図らずも、NASAもそれに同意している。リサイクルされた、あるいは原産の材料を使って住居の3Dプリントに活用できるテクノロジーの、225万ドルのコンペを立ち上げたところだ。

3. Swarmscapers: デザインと建設の接続をプリント

 Swarmscapers robot 3d printer
California College of the Arts Digital Crafts Lab’s Swarmscaper. Image courtesy of CCA and Jason Kelly Johnson.

カリフォルニア美術大学 (CCA) のジェイソン・ケリー・ジョンソン教授の学生が推進するSwarmscapersは、3Dプリントされた自律ロボットが、NASAが描いたシナリオにおいて、その現場由来の素材をどう利用できるかのモデルだ。

CCAのDigital Crafts Lab修士課程とそのCreative Architecture Machinesイニシアチブの一環として、ジョンソンと彼の学生達は、おが屑で満たされた空洞に置かれる一連のデュオスレッドロボットを制作した。何層ものおが屑を結び付けるのに押し出した接着剤を使い、取り巻く材料をファンで巻き上げて接着剤の各層をカバーする。この完全なオープンソース・プロジェクトは、シロアリの塔同様の、円錐形のクラスターを作り上げる。

ジョンソンの次の修士クラスはエンジニアのマイケル・シャイロとの共同授業で、どうやって複数の素材要素や機能を組み合わせて構造を作り出すかというものになる。最もシンプルな形の建築物ですら、構造要素や内装と外装、電気や配管、照明が含まれている。3Dプリントは、大抵は単一の要素しか押出できない。それをどうやって壁にしたり、台所のシンクに付けたりできるのだろう? 「我々の短期的な目標は、そのうち2つの組み合わせを調査することです。建設物の外装へどうやって水を統合し、ロボットはどうやってそれを操作するのか、ということです」と、ジョンソン氏。

ジョンソン氏は、根本的には3Dプリントとロボットが、デザインと製造の間にある隔たりを狭めるものだと考えている。これは時間と資金が浪費される盲点であり、新しくクリエイティブな可能性が存在している。

「建築家がデザインする方法が、製造や建設の行われる方法にどんどん近くなっています」とジョンソン氏は語る。

4. The ThreadとAerial Robotic Bridge Construction: プロセスをデザイン

ドローン 3Dプリンター 橋 Aerial Robotic Bridge Construction プログラムのプロトタイプ・プリント ロバート・スチュアートスミス提供
Aerial Robotic Bridge Constructionプログラムのプロトタイププリント [提供:AA.DRL Studio]

ジョンソンが実現したいと考えているのは、デザインと建設のギャップを、3Dプリントとロボットが減らすことだ。英国建築協会付属建築学校 (AA スクール) のロバート・スチュアートスミス教授は、それを完全に崩壊させたい。

同校で Masters studioを運営する建築家、研究員であるスチュワートスミス氏の仕事は、空中3Dプリントドローンをコントロールするバックエンドのプログラミングとアルゴリズムにフォーカスしており、これは作っているもののデザインを自動的に改訂し、改良する。彼が思い描くのは、空中ドローンの群れが基本テンプレートを把握しながら建築現場に押しかけて自律的にコラボレーションによる決定を行い、その現場に適するよう作業中に変更するということだ。「デザインの半分以上はリアルタイムで行われます」と氏は語る。

このAAスクールのプロジェクトは、現実世界のプロトタイプとコンピューターによるシミュレーションの両方を含んでいる。アリやシロアリの建築方法をモデルとしており、幾何学的な精度と生物の形態に似た進化が不気味にミックスされる。The Threadはドローンを使って、吊るされた幾何学的な繭の形に糸を自動的に配置し、それは原始的なロボットのスズメバチのようにも見える。Aerial Robotic Bridge Constructionコンピュータープログラムは、ドローンのシステムがイナゴの大量発生のように空から舞い降り、崖側から有機的組織のような2つの構造物を作って、それが中央で出会って橋となるのをシミュレートする (このために開発されたプロトタイプのプリントハードウェアは、内蔵レーザー列で瞬時に硬化させられる紫外線硬化性樹脂を噴出する)。

The Thread ドローン 3Dプリンター
The Thread [提供: AA.DRL Studio]

スチュワートスミス氏は、ドローンが作業中にデザインのトラブルシューティングを行い、誤りや不完全さを修正して今後の予定を立て、人による監督が皆無の状態で構造物の建設を行うようになるだろうと考えている。このレベルのオートメーションが精度のほか、材料やエネルギーの効率も向上させると彼は言っている。

「構造物の建設が、ずっと迅速かつ予約可能なプロセスとなる可能性があります。全てを短縮可能です」。スチュワートスミス氏は、建設物がデスクトップ3Dプリンターを使うように建設できるようになると想像している。「追加コスト無しにバリエーションを作ることができ、それをとても素早く行えます」。

ロボットの軍団が建築家の作品の変更箇所を指摘し、改定を行うのは、テクノロジストの夢であると同時に建築家の悪夢となることは容易に予測できる。しかし建築家が3Dプリントドローンのプログラミンを行うと考えれば、建築家は棟梁ではなくコーディングを行うエキスパートであり、建築されるもののパラメーターを設定するのだとスチュワートスミスは考えている。このアイデアは、建築家は建設物でなく、よりパワフルなプロセスの創造主であると提示している。

何百もの高精度なフローティング・ノズルが、ピンポイントの精度でビルの材料を噴出することにより、造形の可能性に新たな可能性が生まれるとスチュワートスミス氏は述べている。「デザインへより多くの機会が提供され、より影響力を持った、より多くのバリエーションとなる」。

Zach Mortice

Zach Mortice について

ザック・モーティスはシカゴ在住の建築ジャーナリスト。

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