クラウドコラボレーションで実現するオスロの都市再生の合意形成と進展の促進
- ノルウェー・オスロの巨大プロジェクトHovinbyenが最終承認に近づいており、新たな「都市の中の都市」がその姿を現しつつある。
- このプロジェクトの大部分はSkanska Økern Parkの開発で、それぞれが独自のビジネス目標を持った複数の地主、施工会社、クライアントが関与している。
- クラウドベースのデザイン&コラボレーションツールによって、多様な利害のバランスを取り、収益への道を共有する交渉がより容易なものとなった。
都市計画には、政治家やデベロッパーからエンジニア、施工会社まで多様な利害関係者が常に関与し、それぞれが議論の場に独自の目標と視点を持ち込む。そのため、最初の段階から信頼と協力の関係を確立することが重要だ。
コラボレーションを簡素化するテクノロジープラットフォームでプロジェクトの交渉をより容易にし、全員に目標と事実の明確なビジョンをもたらすことで、引き渡しへの集中を維持可能となる。
クラウドを利用してSSOT (信頼できる唯一の情報源) を作成することで、作業スケジュールとデザインのイテレーションの両方に新たな効率がもたらされる。クラウドコラボレーションは、ビジネス戦略における変革も促進する。新たな情報により当初計画の再考が示唆された場合には、その影響を受ける全員が意味を理解し、新たな解決策に向け、より迅速に動くことができる。
工場騒音から緑地へ
オスロのプロジェクトはヨーロッパの都市再生イニシアチブのひとつであり、その11㎢にわたる開発は、まだ設計段階ながら着工に向けて急速に進められている。建設が始まれば、この住宅商業複合プロジェクトは5万件から10万件の雇用を創出し、4万戸もの住宅が新たに建設されることになる。
このプロジェクトØkern S Developmentの設計・施工を監督するのが、グローバルエンジニアリング会社のスカンスカだ。同社はパートナーであるデベロッパーのKLP EiendomとBane Nor Eiendom、Løvseth+partner、NSW Arkitektur、Dark Design Groupのアーキテクト/エンジニアたちと協力し、中心部のショッピングエリアと居住エリアの近くに建設される複数の建物の設計を進めている (Økern SプロジェクトではスカンスカがØkern Parkの住宅エリアを建設し、KLPが商業建築を、BNEが住宅と商業の両プロジェクトを担当)。
かつては工場と倉庫、重機の音で満たされていた地域は、Økern S Developmentによって、そのすべてが活気ある広場とストリートガーデン、開放的な遊歩道に置き換えられる。数十年にわたり産業構造物で覆われていたHovinbekkenの覆いが外され、住民はその近くで流れを見たり音を聞いたりできるようになるだろう。
スカンスカのプロジェクトマネージャー、マーティン・ベルガー氏は「人々が生き生きと暮らすことのできる、全く新しくエネルギーあふれる都市部を生み出すのが目標です」と話す。
この複合計画では住宅、商業施設、レジャー空間をバランスよく融合させることが求められが、現地で収集された環境データから、提案された建築デザインではØkern Sのデベロッパーの一部に不利になる可能性があることが示唆された。スカンスカは、関係者全員にメリットをもたらすソリューションを、どのようにして見つけられたのだろうか?
データに裏打ちされた設計によるコンセンサス
ベルガー氏とスカンスカのチームは、BNEとKLPと協力してドローンとメーターで日照、風、音を測定し、従来の設計解析ツールと並行してAutodesk Formaを活用して現場の3Dモデルで設計のテストを行い、それを自治体の建築基準と比較した。さらにFormaを使用し、すべての関係者に完全な透明性を提供しつつ、日照、騒音、風を含むプロジェクトのさまざまな側面を迅速に最適化し、時間を節約できた。
ベルガー氏によれば、全員がどこからでも同じ情報にアクセスできることが、スカンスカが設計や数量への影響とそのさまざまなソリューションを迅速に提案するのに役立った。
「スタート時点では、低いビルを多数並べて建てるか、数棟の高層ビルを建てるのかを決めていました」と、ベルガー氏。「その後、現場の周辺環境とうまく調和するかどうかの検討が必要でした。お互いを助け合えないか、 ということです」。例えばFormaの環境分析から得た知見を用いることで、チームは当初の設計が合格点に達していないことを理解できた。その主な理由は、あるデベロッパーの計画に、他のデベロッパーの建物の日照を遮るような高い建物が含まれていたことだった。階数が増えると敷地内の風も強くなり、隣接する通りからの騒音を最小限に抑えることができなくなる。
「私たち皆が、さまざまなパートナーと行う数々のミーティングの中心的存在としてFormaを利用しました」と、ベルガー氏。「3Dモデルを一緒に確認し、修正を加え、提案された解決策をすぐに確認することができました。このモデルは全員に対して同じようにレンダリングされるため、顔を合わせなくても素早く協議でき、あらゆるアイデアを話し合えるので、意思決定が迅速になります」。
「プロポーザルでそれがどう機能するかを3Dモデルで示すことで、居住スペースの追加により少ない容積でも同じ経済性を達成できること、より多くの日光を取り入れ、交通騒音を遮断できる小さな建物が必要であることを主張できました」と、バーガー氏は続ける。それにデベロッパーが同意し、市の承認に向けた新しい建築デザインが提出された。
重要な意思決定を数カ月でなく数分で
コラボレーションは建設の一部であり、クラウドベースの設計ツールは関係者全員の意思決定プロセスを、簡単かつ効率的なものにする。複雑なプロジェクト交渉の対立部分にうまく対処することで、潜在的な問題が浮上した場合にも相互に有益な解決策を見出し、すべての関係者に利益をもたらすことができる。
「これまでは、まずエンジニアが騒音と光を計算して報告書を提出する手順になっており、それに1カ月必要な場合もありました」と、ベルガー氏。「そして建築家が図面に戻って設計に変更を加えた後、それをパートナーである全デベロッパーに提出して議論が行われ、うまく進めば承認が得られていました」。
「プロセスの早い段階でクラウドコラボレーションを使用することで、エンジニアと建築家全員が大筋で合意し、同じモデルを一緒に検討することができました」と、ベルガー氏は続ける。「スケジュールに影響を与えることなく、迅速な決断と変更ができました」。
都市計画では、さまざまな目標や視点を持つ関係者間の連携が必要となる。クラウドベースのテクノロジーは、SSOTへの共有アクセスを提供することでコラボレーションを容易にし、信頼を確立してプロジェクトの交渉と意思決定を合理化する上で重要な役割を果たす。オスロのHovinbyenプロジェクトは、設計上の問題を迅速に特定、解決してより効率的なプロジェクト開発を実現するクラウドコラボレーションとデータ主導型設計の力を例証するものになった。リアルタイムの環境解析と3Dモデリングに注力することで、スカンスカとパートナー各社はコンセンサスを得て、時間を節約し、住民の暮らしを向上させる活気ある新しい地域を生み出したのだ。