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よりよい生活を実現する義肢装具テクノロジーのブレイクスルー

義手を使用するハイチのLimbForge利用者 [提供: LimbForge]
  • 義肢から外骨格まで、義肢装具の分野は患者の生活の質を向上させるべく設計された新たなテクノロジーにより目覚ましい成長を遂げている。
  • 義肢に活用されるテクノロジーには3Dプリントやデバイスインプラント、デジタルデザイン ツールなども含まれるようになっている。
  • 科学者が人体の機能をより深く理解することで、義肢は身体のような感覚と振る舞いを実現するようになる。

義肢装具のテクノロジーや開発に携わる人たちは、人間の身体や脳の働きを理解するための研究や理解の飛躍的な進化を実感している。

アディティブ マニュファクチャリング (3Dプリント) により、義肢のプロトタイプ作成やカスタマイゼーション、製造のコストは低下している。また神経科学の進歩によって、脳が接触や圧力、温度、痛みなどの感覚をどう処理しているのかについても、興味深い手がかりが明らかにされている。100種類の異なる感覚を再現する義手から、地形変化へリアルタイムに反応することで脊髄に損傷のある患者にも恩恵をもたらす外骨格まで、科学者たちは義肢を自分の四肢同様に動かし、感じる方法を模索している。こうした支援技術の向上によって、人々の生活も向上する。

オンラインで紹介されている注目の義肢装具テクノロジー6選

1. 最貧地域での暮らしを向上させる3Dプリント製義肢

何百万人もの人が四肢の欠損に悩まされている。だがWHO (世界保健機関) の最近の研究によると、その中で義肢医療を利用できているのは、わずか10%に過ぎない。また利用できていても、高額な費用と社会的偏見との苦しい戦いに直面している患者が多い。NPOのLimbForgeが取り組んでいるのは、まさにこうした問題だ。LimbForgeは3Dプリントの活用でコストを抑えることにより、途上国の人々にも人生を変えるような高品質の義肢を体験できるようにしたいと考えている。LimbForgeのクリエイティブ デザイナー兼リードUXデザイナーのサム・ホビッシュ氏は「これは、単にデバイスを作るということではないのです」と述べる。「義肢の使い方を学び、それを身体の一部として受け入れ、他の人々に見せても違和感が無いようにすることです」。

2. 触覚を蘇らせる新たな思考制御型義肢

「スター・ウォーズ」のファンであれば「スター・ウォーズ エピソード 5 /帝国の逆襲」で、ルーク・スカイウォーカーの義手が医療ロボットの検査に反応するバイオニックハンドを覚えているだろう。あのシーンから40年以上の月日を経て、ユタ大学の研究者たちは「LUKE (ルーク)」と名付けた義手により、四肢欠損患者が100種類以上の感覚を取り戻す方法を発見した。研究者たちは残存神経にデバイスを埋め込み、筋肉に電極を配することで情報のループを生み出し、それを脳が触覚として認識する信号に変換している。

3. 人工神経と人工触覚の未来

シカゴ大学で有機生物学、解剖学の助教を務めるスリマン・ベンスマイア氏はCuriosity.comのポッドキャストで「そのうち人間の手の器用さに匹敵する人工関節ができるだろう」と語っている。そのレベルに到達するには科学者たちが、誤って指が車のドアに挟まれたときの感覚など、人間の脳がさまざまな信号を処理する仕組みを、より深く理解することが必要だ。「義手のコントロールだけでも大変なのに、何かを感じられるようにする必要があるのか、と思われるかもしれません」と、ベンスマイア氏。「でも、何も感じられないならコントロールすることも無意味と判明したのです」。

4. グレイハウンドのミリーに再び走る喜びを与える、オーストラリア初の3Dプリント製義足

前足の片方を失ったグレイハウンドの子犬ミリ―を引き取ったオーストラリア人の建築家エド・ディエップス氏と妻のノラは、ミリーが快適で充実した生活を送れるよう、できるだけのことをしたいと考えた。だが、繰り返し交換の必要な人工義足に1万ドル近くを費やした末、ディエップス氏は別の解決策が必要だと悟った。夫妻はAutodesk Fusion 360を使用し、クイーンズランドの3Dプリントショップと提携することで、高額な製造コストを負担せずに、さまざまなデザインを試みることができた。最も重要なのは、最終的な成果をミリーも気に入り、今では思う存分走り回れるようになったことだ。

Millie and her prosthesis
義足のプロトタイプを装着してポーズを取るミリー

5. 脳活動のマッピングで義肢デザインを向上

ユタ大学とシカゴ大学の研究者たちは義手と触覚の役割を研究し、ヒューストン大学の科学者たちは歩行において脳が果たす役割の理解を深めている。現時点で最新型の義肢では、地形の変化へリアルタイムでは適応できないが、研究者たちは脳の活動を加えることで、ユーザーの可動域が広がる(スポーツをすることも可能になる)なると考えている。ヒューストン大学カレンカレッジ 電気、情報工学部のホセ・ルイス・コントレラス=ヴィダル教授は「歩行は簡単そうに見えますが、実際にはそうではありません」と述べる。氏はこの研究結果が、脊髄損傷を持つ人々へより自由で質の高い生活を提供できる、電動外骨格や車椅子につながる可能性があると期待している。

6. Ambionicsが検証する子供向け3Dプリント製義肢

子供のいる人なら、その洋服はあっという間にサイズが合わなくなり、支出を抑える唯一の手段はお下がりを利用することだという意見に同意するだろう。では、義肢が必要な子供たちの場合は? 父親のベン・ライアン氏は、息子サルの、こうしたジレンマに直面していた。そして、発明家としてのバックグラウンドとデジタルデザイン ツール、3Dプリントの力を頼りに、たった数日、しかも数分の一のコストで、組み立てられる義肢を製作した。

本記事は2018年1月に掲載された原稿をアップデートしたものです。

著者プロフィール

マーク・スミスはワシントン州ベリンハム在住のライター、エディター、ミュージシャン。

Profile Photo of Mark Smith - JP