プロパティデータバンクがBIMとの連携で実現する不動産管理のDX
- 包括的な不動産管理機能を備えたサービスを展開
- パブリッククラウド型サービスによりコラボレーションを支援
- BIMとの連携により不動産管理のDXを実現
プロパティデータバンク株式会社は創業以来、不動産関連業務を支援する不動産管理クラウドを提供してきた。同社はプロパティマネジメントやビルメンテナンスとBIMとの連携で、そのさらなる効率化やリアルタイム経営を実現することにより、クライアントの不動産管理DXを支援している。
不動産・施設などの資産管理業務の効率化を支援するプロパティデータバンクの「@プロパティ」は、包括的な機能を備えた不動産管理クラウド。2000年に創業した同社の代表取締役社長、板谷敏正氏は「賃貸事業を中心とするアセットマネジメントやプロパティマネジメントに必要な機能、ビルメンテナンス業を中心とするビル管理会社が使うような機能に加え、一般企業の管財部門が利用するファシリティマネジメント機能など、世界的にも類を見ないレベルの不動産管理機能を備えたサービス」だと述べる。
不動産管理のパブリッククラウド型サービスの先駆けである@プロパティは、パッケージソフトとは異なりセットアップやインストール、メンテナンスなどの手間が不要。国内3拠点の基盤を活用した堅牢なシステム構成と万全のセキュリティ体制が確保されており、ユーザーとともにサービスのクオリティが向上していくのが特徴だ。
このプロパティデータバンクが新たに提案するのが、BIMと不動産管理クラウドの連携による不動産管理のDXだ。「@プロパティは、業務オペレーションを通じて蓄積されたデータをポートフォリオ単位で様々な角度から集計・分析できます。また、オペレーション結果を元に会計仕訳を自動作成し、会計への連携データを作成する仕組みになっており、どの場面でも会計システムと連携しています」と板谷氏。「同じような考えでBIMと連携したのが今回のプロジェクトであり、空間や部屋、場所が関連する場合には、全てBIMと連携。建物内のどの部屋の修理をした、契約をした、コストがかかったという情報が、全てBIM上に可視化されるようになっています」
同社は、不動産投資を行うJ-REITの設立を見据え、清水建設の社内ベンチャーとしてスタートした。「J-REITは非常に会計が厳格で、ビル1棟1棟の収支状況等を把握し、それを情報開示しています。そのためには複雑な会計処理や、空室率や平均賃料などパフォーマンスのデータも必要です」と板谷氏。「その当時は各ゼネコンがCAFM (Computer Aided Facility Management) ソフトウェアを持っていて、CADとFMの連携を行なっていましたが、CADがあると動作が重くなり、CADが使える人が必要になります。そこでCADとの連携を外してクラウド化し、会計の機能を入れて再デビューさせたのが、現在のソフトウェアです」。
「J-REITは分業になっており、アセットマネジメント会社とプロパティマネジメント会社、信託銀行、デューデリジェンスする不動産鑑定士等が連携しています。そのため、皆が同じデータを使い、そのための扱いやすいソフトウェアが必要だというニーズがあったので、クラウドが最適でした。J-REITのニーズに合致しており、現在も6割ほどのシェアを持っています。また大手企業でも、しっかりした会計処理のために社内の不動産管理もデータベースに入れていこうという考え方が、生保損保、電力会社、電鉄会社にまで広がってきています」。
「我々は、まずは不動産のデジタル化を広めて、クラウドで日常的に使えるようにと考えました」と、板谷氏は続ける。「2000年当時に比べると、デジタル化、会計との整合はかなり進んできたと思います。その一方で、将来的にはまたCADの機能を使えるようにしようと考えていました。そして再び連携するチャンスをうかがったときに、CAD側は既にBIMになっていたので、BIMと連携させることにしました。そのタイミングで、オートデスクのクラウドサービスを利用できる開発プラットフォームであるForgeが出てきたのです」。
「空間とか図形、スタティックであまり変わらない属性情報などはBIM、毎日変わる会計の情報や契約の情報、エネルギーの使用量、メンテナンスの情報は不動産クラウドのデータベースに入れておいて、それをForgeで連携させるというのが我々の考え方です。建築情報業界の方はBIMに全部を載せようと言われますが、BIMに日常の情報を全部載せたり、多棟管理をしたりするのは難しいですよね。それに、連携させる方がそれぞれの機能が生かせるので効率が良いのです」。
建設時の不動産基本情報のデジタル化
竣工段階では、建設時の情報を活用して基本構造物をBIM化し、面積算定や区画設定の基礎となる情報インフラを構築。エネルギー管理や設備の対象となる主要設備もBIM化される。不動産管理クラウドでは、建物基本情報や土地情報、空間・部屋情報、主要設備情報のデータベースを構築して、不動産基本情報がデジタル化される。
既存施設の場合は、最新の2次元図面や、管理上作成しているテナントの区画図などの運営情報などから壁、柱や主要設備などを中心に基礎的なBIMを構築し、それを不動産管理BIMとして活用している。研究開発は早稲田大学と共同で行われ、テナントの区画や契約面積など、壁や柱では区切れない情報は仮想の空間情報を設定するなどの工夫をしている。BIMはAutodesk Revitで構築し、運用にはForgeが活用されている。
新築の建物で竣工BIMが提供される場合は、必要な情報を選択して活用することになるが、図形情報はそのまま利用できても、非図形情報にはさまざまなモディファイが必要になるという。「建設会社にある竣工情報では、例えば何階の事務空間というようになっていますが、竣工後に賃貸事業が始まると、専用部・共用部やテナントの区画などの名称も出てきます。また会社によっては、例えば空調機をエアハンドリングユニットと呼んでいたりするので、そうした管理側の体系で使う言葉に変える必要があります」。
ライフサイクルにおける不動産管理情報とBIMの連携
竣工後の運用段階では、日常の不動産管理クラウドで情報のデジタル化と活用、蓄積が行われ、さまざまな不動産運用情報がデータベース化されていく。「BIMは竣工後20年間ぐらいは大きな更新はありませんが、テナントの契約やエネルギー情報などの蓄積された情報とBIMを重ね合わせていき、BIMビューワーのような役割になります」と、板谷氏。
「竣工後はBIMデータが活用されていないと言われることが多いのですが、不動産管理クラウドとBIMの連携により日常業務とともに確実に毎日使われています。そして建物に大きな更新があったときには、BIMの修正、更新が行われて、再び最初と同じことが行われるという、大きなサイクルが構築されます。」
同社による、BIM情報を持たない既存大型複合施設東京オペラシティビルを対象とした「BIMを活用した不動産プラットフォームの構築による既存オフィスビルの施設維持管理の高度化と生産性向上」の取組は、令和2年度の「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」に採択。その検証結果は、報告書として公開されている。
建物と不動産情報のデジタル化 = デジタルツイン
同社は都市デジタルツインの社会実装に向け、オートデスクと協業する清水建設株式会社が手がける豊洲MiCHiの駅のプロジェクトにも参加している。この駅は、今年秋の開業に向けて、豊洲スマートシティ内で開発が進められている「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」の開発街区に、交通結節、来街者の憩い・休憩、情報発信、災害時対応の各機能を備えた日本初の“都市型道の駅”として整備されるものだ。
「BIM化自体がデジタルツインの一端になっていると思いますし、不動産情報もデジタル化して、実物と同じものを用意しています。それにより竣工した建物のデジタルツインとなる、実物と同じBIMと不動産情報が常に存在していることになります」と板谷氏。東京オペラシティビルの場合は、全体が巨大な賃貸事業、豊洲Michiの駅も賃貸事業なので、建物の種別とか事業主体からいくと、どちらもプロパティマネジメントで同じなんです。ただ新築なので、その設計BIM、施工BIMが渡されるので、それを管理上使えるように変換します。ゼロからBIMを起こす必要がなく、構築されたBIMをチェックしながら、スムーズに立ち上げることができます」。
「設計、施工のデータをうまく運営管理や維持管理に使っていくのは大切な流れですが、その一方で日本はストック社会であり、民間で400兆円、公共で500兆円ぐらいの既存の建物があります。既存の建物のデジタル化も含めて、今後もBIMとの連携することを推し進めていきたいと考えています」。