オフィス勤務の再開がデスクの処分を意味しない 6 つの理由
多くの企業がオフィス勤務の再開戦略を練る中で、さまざまな業界のリーダーたちが、デスク数を半数に減らすという考えを述べるのを耳にするようになった。これは当然のことにも思える。デスク数が減ればスペースは増え、ソーシャル ディスタンスの維持も容易になるからだ。だが、このプロセスは数百万台のデスクの廃棄を招く。こうしたデスクとそれに付随する大量のオフィス家具を、どう処分するのだろうか?
答えは「処分しない」だ。未来を考慮に入れず、短期的な問題のみに対処するのは、良い戦略とは言えない。デスクを埋め立てゴミにするのではなく、別の戦略にフォーカスするべきだ。それは建物に出入りする人の流れを管理することや、オフィス空間に実際に必要な人数を割り出すことなどだ。
ここでは、ポストコロナにおけるオフィス再開の意味と、人々が従来とは異なる行動を取ることを学び、再開が会社全体にとって、より健康的かつ良好なものとなるよう支援するための、ビジネスリーダーとしての役割を紹介しよう。
1. 既存の技術を頼りにしたフレキシブルなビジネスの実現
これまでに、利用可能な既存のテクノロジーを活用して、どれほどの変更を行ったのかを認識しよう。企業各社はほぼ一夜にして、オフィスワーク中心のモデルから在宅ワーク モデルへとシフトした。オフィス内での会議はビデオ会議に、現場視察はバーチャル ツアーに取って代わった。クラウドベースのテクノロジーが全従業員のリモート ワークを可能にした。つまり「レジリエンス」の精神が、企業や社員が既存のテクノロジーを利用して、いつでもどこからでもビジネスを行うことを可能にしたのだ。近い将来、そして未来の仕事の形に適応することを学びつつ、既に準備が整っているものには何があり、オフィス再開に伴うニーズに対して、どうすればそれをより効果的に使用できるのかを検討するべきだ。必ずしもゼロからやり直さなければならないわけではない。
2. ジェネレーティブ デザインが空間の見直しに役立つ
デスクを排除するのは、複雑な問題に対する解決策としてスマートなものとは言えない。その解決には、台車でなくテクノロジーを利用するべきだ。世界には何千万という商業ビルや、その他のインフラが存在している。建築家が概念を変えない限り、これほど多くのオフィス空間を従来の手法で再デザインすることは不可能だ。
ここでジェネレーティブ デザインが活躍する。ソフトウェアが空間の再考と最適化を行い、コロナウイルス感染症に対する安全対策の基準に合致するよう、最適なオプションを自動生成する。これはデスク間の、そして空間内の人と空気の水平、垂直方向の動きにおけるソーシャルディスタンスが提供されることを意味している。またオフィスや空港、大学、レストランを、「ニューノーマル」から適切な安全基準に準拠した環境へと素早く方向転換できるような形で構築する必要がある。感染を抑えるために、迅速に行動を起こし、デスク、部屋、人の流れを別の配置に戻すことができる能力は、ビジネスをより将来に備えたものにする。
3. 未来のニーズにも合致した再デザイン
テクノロジーと再デザインの取り組みは、今後 6 カ月間に、そしてコロナ感染の次のピークや、2 年後、5 年後、10 年後に生じるかもしれない他のウイルス蔓延への適応にもフォーカスする必要がある。企業はコロナの収束後も、将来的にソーシャル ディスタンスが必要な状態が起きるかもしれないことを念頭に計画を立てておく必要がある。それには平常時のオフィスの機能を評価した上で、より良い結果が得られるように行動を変え、空間に変更を加える方法を見つける必要がある。
例えば、人の集団とその動きをシミュレートし、休み時間の子供や建物に入る社員を視覚化できるソフトウエア・プログラムもある。階段やエレベーターを使用する必要はあるだろうか? どのグループがいつ動くのだろう? 密な接触と廊下の混雑を避けるため、グループ別にシフトを組み、到着時間を振り分ける必要があるかもしれない。
“歩道はソーシャルディスタンスを考慮してデザインされていない。人が安全にすれ違えるようにするには、歩道の幅を広げなければならない。もしくは一方通行にするなど、新たな人の流れのシステムが必要だ。”
これは建築家にユニークな課題を生み出す。ひとつの空間が、現在のような緊急事態時と平常時、それぞれの役割を果たす必要があるのだ。こうした課題を克服することで、リーダーは社内のあらゆる層が安全かつ安定した業務形態に即座に移行できるよう、今後の出来事に備えることができる。
4. 在宅ワークという選択肢を真剣に検討すべき
ソーシャル ディスタンスと人の流れに配慮するため、今後しばらくはオフィスに戻る人々の人数を 25% に抑える必要がある。リーダーたちは、社員全員がオフィスに戻るべきだとは思わないと発言する傾向がある。これは、これまで社員のリモートワークに反対してきた、従来型の産業においてすら同じだ。その一例が法律事務所だ。法律事務所が、今後、オフィスをクライアントとのミーティングのための会議室やオープンスペースと見なすという話を聞いた。また、リモートワークで働く社員用のデスクは必要なくなる (公共交通機関を避け、通勤にかかる時間を省くという利点もある) 。オフィスは今後、カンファレンス ルームやカスタマーへのブリーフィング センターとなる予定だ。
これは、多くの企業にとって大きな変革のきっかけとなるかもしれない。米国では、少なくとも在宅勤務を時折行っている社員がいることは、全く普通のことだ。オフィス勤務 3 日、在宅勤務 2 日というスケジュールが典型的だ。だが日本など他の国では、全員が毎日オフィスに出勤している。こうした国や環境では、在宅勤務の実施はかなり難しいだろう。最良の解決策を全員に機能させるという、リーダーや経営者による積極的な検討が必要だ。
5. 共有空間を再考する時期に来ている
オープン オフィスやキューブは、少なくとも当面は使われないだろう。だが、それは共有空間に留まらない。歩道はソーシャルディスタンスを考慮してデザインされていない。人が安全にすれ違えるようにするには、歩道の幅を広げなければならない。もしくは一方通行にするなど、新たな人の流れのシステムが必要だ。公共交通機関やハブは、一貫して不安事項とされてれている。人々はソーシャルディスタンス計画の欠如により、ウイルス感染の危険にさらされると恐れているのだ。リーダーは建物の内部を考える際、そこに立ち入るまでの空間についても考慮し、社員にとって安全な空間にしなければならない。
6. 今後の開発が空間をさらに安全なものにする
オートデスクは、健康と安全のためオフィス空間の再構築を行っている。同様に、世界各地の企業も未来の職場をより安全なものとするテクノロジーを生み出している。例を示すには時期尚早だが、これまで想像もしなかったような方法で、人間とオフィスの構成要素の消毒を行う発明に取り組んでいる企業がある。また、清掃にドローンやロボットの活用を検討している企業もある。
既存のオフィス空間と周辺環境は、業界が対面での業務からほぼ一夜にしてバーチャルでの業務に移行した際に社員が行ったのとほぼ同じ方法で、テクノロジーと想像力を組み合わせることにより転換が可能だ。これがレジリエンスの本質であり、これにより企業はコロナや今後起こりうる他の事態にも対処できるよう、準備を整えることになるだろう。