SF映画のセットを彷彿とさせる、前衛的なデザイン要素に溢れた近未来的な空間に足を踏み入れることは、人々の想像力をかき立てる。だが、このサイエンスパークは現在インドのムンバイに建設中の実在する建築物で、インタラクティブなサイエンスセンターが入居予定だ。建造環境における他の注目すべき業績と同様、すべてはビジョンから始まった。Hiten Sethi & Associates (HSA) の設立者のヒテン・セティ氏にとって、そのビジョンは「来場者が好奇心の領域間を行き来し、科学的探求の無限の美に浸れる自由志向の空間を創造すること」だった。
ナビムンバイの中心に位置するサイエンスパークは、単に見た目が印象的な建物というだけなく、建築における可能性の限界を拡げている。高い評価を受ける同市のワンダーズパーク内にHSAが建設するこのダイナミックな建造物は、イノベーションとサステナビリティ、教育を融合させ、理想的な探求の環境を作り上げるものだ。
この象徴的な建物の最も際立った特徴は、鉄とガラス製の2つのパラメトリックなドーム構造が周囲の都市景観と一体化している点だ。芸術作品のような外観の建造物に、科学と学習を称える空間を内包。HSAはこのプロジェクトで、オートデスクによる2023年度Design & Make Awardsの、栄えあるAEC最優秀建築設計プロジェクト賞を受賞している。
2000年にナビムンバイに設立されたHSAは、従業員8名の小規模なビジネスから、200名を超えるチームを擁する、インドでも最も影響力を持つ建築事務所のひとつへと成長を遂げた。インドに最新の景観を作り上げることで知られる同社は、革新性と持続可能性に重点を置き、画期的な功績を残している。
「HSAは、機能的なニーズを満たすだけでなく、利用者の「幸福度指数」を高めるような空間を作りたいという情熱から生まれました」と、セティ氏。「弊社の活動ですべての指針となるのが持続可能性、イノベーション、卓越性というコアバリューです」。
HSAは環境スチュワードシップへ真摯に取り組んでおり、またセティ氏は地球に対する建築の責任を理解している。この理念のもと、サイエンスパークは再生可能エネルギー資源、節水システム、環境に配慮した材料を取り入れている。ソーラーパネルと昼光利用システム、エネルギー効率の高い照明を採用するサイエンスパークは、持続可能設計のモデルだ。採光効果を高めるため鉄骨でフレームが組まれ、エネルギー効率を最大化する材料と技術が組み合わされた、環境に優しい構造となっている。
「サイエンスパークには、若い来場者がインタラクティブな展示を通してサステナビリティの概念を理解できるよう、細心の注意を払って作られた展示物があります」と、セティ氏。「若者たちが持続可能な行動を取り、環境スチュワードとなり、未来にとってポジティブな変化をもたらすことが最終的な目標です」。
HSAは、技術の戦略的応用と熟練したエンジニアや建築家のチームを駆使して、賞に輝くサイエンスパークを実現させている。パラメトリックドーム構造は形状が複雑なため、構造工学上の計算には慎重な調整が必要だった。HSAは専門のエンジニアと緊密に連携し、複雑な加工と材料の選定をナビゲートすることで、構造の安定性と建築の完全性を確保。精密な作図、現地調査、詳細な3Dモデリング、パラメトリックデザイン調査を使用した、チームによる設計課題への取り組みを、Autodesk AutoCADやRevitなどのソフトウェアが支援している。
チームはドーム構造の正確なデジタルレンダリングを、RevitとBIM Collaborate Proを使用して作成。空間分析とマッピングにはQGISが使用され、現場のレイアウトと自然環境との統合に関する意思決定プロセスの指針となった。最後にAutodesk ReCapを使用したリアリティキャプチャで、既存の現場状況の正確な3Dモデルを作成。HSAは、フットプリントを最小限に抑えつつ、プロジェクトのライフサイクルを通じて効率的な連携、視覚化、分析、文書化を実現する包括的なフレームワークを考案した。
セティ氏は完成の近づくサイエンスパークが、デザインと建築における革新の未来に多大な影響を与えると考えている。「サイエンスパークは単なる建物の枠を超え、建築家たちがより大胆に、機能的なだけでなく生活やコミュニティを豊かにする空間を創造するような、長く受け継がれる遺産を残すことになるでしょう」。
今後、建築が実現できることは拡大すると予想するセティ氏は、持続可能性を基本方針とした変革の可能性を思い描く。サイエンスパークのプロジェクトは、環境に配慮した建築のあり方について新たな基準を打ち立てる可能性を持っている。「この分野は大きな変革の入り口にあります」と、セティ氏。「サステナブルな設計手法は、もはやニッチなものでなく、当たり前になるでしょう」。
セティ氏は、インタラクティブな展示が、教育や地域社会との関わりにおける建築の役割を再定義する可能性もあると見ている。「来場者は、ただ展示物を見るだけでなく、積極的に参加し、学ぶことになるでしょう」。
都市は絶えず変化し、スカイラインは常に進化している。これらの変化は、建築史における歴史的瞬間によって印象づけられることもある。Hiten Sethi & Associatesにとって、サイエンスパークは彼らの建築創造性を示すものであると同時に、インタラクティブな学びと環境スチュワードシップを促進するものだ。「サイエンスパークの完成が近いことは、私にとって大きな誇りです」と、セティ氏。「イノベーションに深くコミットする建築家として、これは国内外における建築の発展の重要な分岐点を示していると考えます」。
ロゼルはカリフォルニア州サンフランシスコとインドネシア バリを行き来するフリーランスのジャーナリスト、コピーライター、デザイナーです。
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[提供: 大林組]
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