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スマートテクノロジーが建築の議論に変化をもたらす5つの方法

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遠隔操作によるビデオ監視装置から、ロボット執事まで。一般の住宅やオフィスが、最新技術が網羅された『アイアンマン』のトニー・スタークのマリブの豪邸へ近づきつつある。

スマートビルディングの住人たちは、インターネット経由で操作でき、プログラム可能な室温調整装置や冷蔵庫などの最新設備を既に堪能している。だが、それらはほんの始まりに過ぎない。

気候や利便性、プライバシー、サステナビリティ機能を管理する複雑なシステムが、コンセプト段階でビルのデザインへ組み込まれるようになった。スマートテクノロジーも、こうした文明の利器の制御から、ビルの形やデザインに影響を与えるものへと変わりつつある。ここではスマートテクノロジーが占有空間の建築へ、どのような影響を与えているのかを紹介しよう。

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新しいスマートビル テクノロジーで交わる自動化とAI

1. スマートホーム テクノロジーによる建物の進化

電球やサーモスタットで始まったスマートホーム テクノロジーは、今や建築物の内外へ影響を与える様々なイノベーションへと進化を遂げている。新しいスマートテクノロジーとしては、ボタンに触れるだけで透明度が変えられるLCDプライバシーガラス、スマートプラットフォーム経由で自動車とつながり、ユーザーがホームシステムをコントロールして自動車の走行経路や車両の状態をチェックできる住宅、居住者が家具やその他の構成要素を変更してオフィスへと転換可能なモジュール式住宅などがある。ユニバーサルデザインと呼ばれるインクルーシブ (包摂性) への動きは、全ての建造環境が、それを使用する全ての人のニーズに合うようデザインされるべきだと主張するものだ。自動化されたプロセス、センサー技術、AIを一体化させることで、構造体の物理的な形状と居住者の関わり方の両方を変えることは、より優れたアクセシビリティをデザインする方法のひとつになっている。[記事を読む (英文)]

2. 商業ビルを転換させるスマートテック

デロイトが入居しているアムステルダムのThe Edgeビルは、全く新たな職場環境を提供するものだ。このビルは同社の開発した、社員のスケジュールをチェックするアプリと連動しており、社員の車がビルに到着すると駐車場まで誘導。社員のために空いているデスクを検索し、各個人の好みに合わせて室内照明と温度を微調整する。このビルのEthernetで給電される照明システムには、極めて高効率なフィリップス社製LEDパネルが採用され、光や動き、温度、湿度を測定するセンサーを装備。こうしたセンサーが、ビル全体の28,000カ所に設置されている。これは商業ビルにおけるスマートテックの始まりに過ぎず、商業ビルは自動診断、自動修復、自動補正能力を提供できるよう進化しつつある。こうした環境の適合が向上するにつれて、新しい種類の多機能空間と、その活用方法の新たな流動性が見られるようになると専門家は話している。[記事を読む (英文)]

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スマートガレージは利用可能な駐車位置へと利用者を誘導する

3. スマートテクノロジーが古い建物に新たなトリックを伝授

新築案件にスマートテクノロジーを取り入れるのは簡単だが、既存の構造物に取り付ける場合は、特有の課題が生じることもある。例えば歴史的建造物では、ドリルで穴を開けると損傷しかねない石材が外壁に使われていたり、配線が露出すると外観に問題が生じたりすることがある。より厳格なエネルギー規制に準拠し、居住者や訪問者を満足させるエネルギー効率の建物となるよう、エンジニアや電気工事施工者は照明や冷暖房空調設備 (HVAC) などを向上させるため、古い建物にスマートテックを取り付ける新たな手法を考案している。中でも人気のトレンドがワイヤレス スマートテクノロジーだ。これは比較的目立たず、古い建物に柔軟なソリューションを提供できる。(例えばサンノゼの設計事務所Xicatoは、1,000年前に建てられたロンドンのウェストミンスター寺院にBluetooth LED照明システムを設置している)。[記事を読む (英文)]

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ウェストミンスター寺院に取り付けられたXicatoのBluetooth LED照明 [提供: Xicato Smart Lighting Controls]

4. ドモティクスが建築の議論に住宅の自動化を

ドモティクス (いわゆるホームオートメーション) の導入はますます手頃で容易なものになり、その必要性を消費者に納得させることが唯一の課題と言えるだろう。導入が進めば、自動化された住宅が建物のエネルギー消費を削減し、高齢者や身体に障害のある人々の暮らしの質を向上させて、不法侵入やガス漏れ、水漏れなどの問題を居住者に通知可能だ。既に居住者は、室内温度や照明の色と強度などの環境条件を遠隔操作できるようになっている。だが最も効率的なスマートシステムは、機能を個別にではなく総合的にコントロールするソリューションを自動化するものだ。例えば夜間の環境を定義する際、居住者は一度スワイプするだけで、照明を落としてカーテンを閉め、アラームをオンにするようシステムを設定できる。[記事を読む (英文)]

5. スマートホームを動かすAIアシスタントから建築家が手がかりを

スマートホームは、プロセスだけでなくデータも管理する。スマートホームがセキュリティシステムやサーモスタット、カメラ、オーディオ録音/ビデオ録画やWiFiネットワーク、スピーカー、さらに煙探知器と玄関チャイム、施錠・解錠、スマート照明のコントロールを行える状況を想像してみよう。こうした製品の使い方が増えれば、ユーザーに関する情報も増加する。建築家はこのデータを利用し、居住者の日々のタスクをよりシンプルにする建築ソリューションをデザインできる。AIはこうして、都市生活の質とパフォーマンスを強化するテクノロジーの大量生産に影響を及ぼすようになるかもしれない。では、AIは建築家の役割を奪うのだろうか? それは当分ないだろう。AIは未だに、制限事項を設定し、AI主導によるデザインをフィルターし、それをクライアントの美的嗜好と市場のニーズに合致させるための人間の建築家やデザイナーを必要としているからだ。[記事を読む (英文)]

著者プロフィール

ローザ・チュウは在住するサンフランシスコで、より多くの情報へアクセス可能となるよう取り組んでいるテクニカル ライター/ジャーナリスト。

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