未来の交通と手段: 2050年までに未来の乗り物を変容する7つのテクノロジー
自動運転車の市場は急激に変化・発展しており、技術革新と規制緩和により、その商用化への歩みも進められている。その一方で物流や運輸、タクシーの業界における運転手などの労働力不足は、効率化やコスト削減による対応が急がれている。世界の都市化が急速に進行し、2050年には人口の約70%が都市部に集中すると予測されている中、交通や移動の手段はテクノロジーによりどう変わっていくのだろうか?
ここでは自動運転車用の駐車場や無数のセンサー、ドローンによる配達から自動補修する道路、オンデマンドの公共交通機関などで交通手段や乗り物が劇的な移り変わりを果たした、2050年の世界における「未来の交通手段」の姿を想像してみよう。
1. 自動運転技術の進化をAIが支援
画像解析や判断・予測、マッピング技術やルート最適化から、ドライバーとのコミュニケーションまで、第3次AIブームによるAIの大幅な進化は、自動運転技術も大きな前進を遂げている。これまで人間のドライバーが行ってきた、運転操作におけるさまざまな判断をAIがサポート・代替することには、今後もイノベーションが期待される。
2. IoT技術の進化と自動運転車への影響
インターネット接続端末だけでなく、家電や自動車、ビル、工場など、あらゆるものがネットワークに繋がるようになっている。2020年に約250億台だったIoTデバイスの数は、2024年には400億台に迫ると上方修正されており、医療やコンシューマー、産業用途や自動車・宇宙航空などの分野での高成長が見込まれている。
交通の分野においては、車両や建造物、交通信号、道路に埋め込まれたセンサーがリアルタイムデータを提供することで、交通の流れを向上し、使用パターンを監視することができる。事故を防止し、命を救うことも可能だ。
3. 自動運転とEVがインフラへ与える変化
自動運転車の普及によって、混雑や渋滞の緩和、それに伴うエネルギー消費や温室効果ガスの削減など、さまざまなメリットが期待できる。そしてカーシェアリングサービスや自動運転車が広く採用されるようになることで、街の中心部の大型駐車場の必要性は減少しているだろう。
自動運転車は個人用、カーシェアリング用を問わず、目的地で乗客を降ろした後、離れた場所にある駐車場に自動駐車できる。それによって、より多くの公園や公共の場を一等地に設けることが可能だ。
交通手段の変化は、化石燃料への依存度の低下ももたらす。現在、気候変動の原因である温室効果ガスの14%は交通手段に由来しており、都市部の空気汚染の90%はエンジンを搭載した車両により生み出されている。
アメリカ合衆国国家資源防衛審議会と電力研究所の研究によると、電気自動車の活用が拡大することで、2050年には炭素汚染を年間5億5,000万t削減可能。これは、現在の自動車1億台分の排出量に相当する。
4. ドローン配送
継続的に成長を続けてきたEC市場が、コロナ禍による巣篭もり需要の影響でさらに拡大。日本国内では2020年度に約48億個の配送が行われた一方、配送の中心を担うトラックのドライバー不足が指摘されている。2024年4月からは自動車運転業務にも時間外労働時間の上限規制が適用される中、トラックによる配送能力の危機に対する迅速な対側が必要だ。
その解決策のひとつと期待されるドローン配送は、既に一部で導入が開始されている。今後、法整備やルール策定などが必要となるが、人手不足や交通渋滞への対処策となるほか、過疎地の生活支援としても期待されている。また企業各社は、ワクチンや他の医療品の輸送など、人道支援活動向けにもドローンの検証も行っている。
5. ラストワンマイルステーション
軽量の電動車両のネットワークは、短距離移動に新たな選択肢を提供する可能性がある。企業各社は、現行のバイクシェアプログラムの先を行く、公共交通機関の駅から最終目的地までの短い距離、すなわち「ラストワンマイル」をカバーする移動手段の新方法を生み出している。例えばVeloMetroは、ユーザーを悪天候から守り、操作に運転免許を必要としない非露出型電動車両を開発している。
6. 自動補修する道路
ケンブリッジ大学、バース大学、カーディフ大学の研究者たちは、道路に応用可能な「自己回復」する材料を実験中だ。この材料が、路面の穴を過去のものにできるかもしれない。その一方で、Scania や Solar Roadways といった企業は、エネルギーを生成して送電網に供給したり、電気車両を充電したりするソーラーパネル道路をテスト中だ。
7. オンデマンドの公共交通機関
世界中で利用されているUberやLyftのほか、中国のDigiなど、個人が自動車を運転して顧客を輸送するオンデマンド交通システムは広く浸透するようになった。今後は公共交通機関も固定路線と時刻表を超越した、未来の交通手段へと進化することになるだろう。つながるデバイスとビッグデータにより、電車やバス、フェリーなどの便数は、その時々のユーザーの需要に応じて適切に調整できるようになる。
既に米国やヨーロッパの都市でオンデマンド公共交通サービスのViaが、また子供や家族向けオンデマンド輸送サービスとして米国の都市ではKangoなどが提供されている。こうしたソリューションは運用効率を向上でき、長い待ち時間や満員電車など、通勤通学者の悩みの種を緩和することができる。
Images and Animations Courtesy Max Erhlich.
本記事は2017年9月に掲載された原稿をアップデートしたものです