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スマートファクトリーの実現は重役会議から

スマートファクトリーは、スマートなビジネスだ。2019年のDeloitteとMAPI (Manufacturer’s Alliance for Productivity and Innovation) の共同研究によると (PDF P.7)、スマートファクトリー テクノロジーのアーリーアダプターは、そのパフォーマンスが3年以内に平均10-12%向上している。

自社の工場を改革し、その利益を手にしようと考えのであれば、メーカーは長期的な取り組みを行う必要がある。既存のプロセスへ高度なテクノロジーを選択・適用し、その実装を改善するには長い年月が必要な場合もある。何をどう採用するかが鍵だが、それ以上に重要な選択となるのが、スマートファクトリー戦略をリードするための適切な人物だ。適任者を見つけるには、どこから始めるべきだろう? それは重役会議だ。

スマートファクトリーとは?

スマートファクトリーは、表面的には一昔前の工場と同じように見える。人間やロボット、機械が作ったものがコンベヤで運ばれ、倉庫や発送の業務、ワークフローの管理のため、スタッフが階層的に存在している。

目に見えない根本的な違いが「情報」だ。

機械やセンサーが性能や保守に関する報告を行って、その情報はスマートファクトリー全体に流れる。それによって、スタッフはARなどを活用してシステムや製品を異なる角度から見ることが可能だ。情報がロボットの再プログラミングの原動力となり、場合によっては機械学習を用いて自ら再プログラミングを行うこともある。そして、情報はサイバーセキュリティプロトコルを用いて自らを保護する。

つまりスマートファクトリーとは、データとして処理される情報の貯蔵庫なのだ。

スマートファクトリーのメリット

こうしたデータの最大の利点は、あらゆるものを向上させられるということだ。システム全体を、これまで以上に明確に把握できるようになる。

資産効率

調査会社マッキンゼーによると、スマートファクトリー (PDF P.2) は生産性を3-5%向上させ、市場投入までの時間を20-50%短縮できる。

データによって是正措置が必要な性能や保守の問題が明らかになり、機器の全面的な故障を回避できる。そして、これまで生産能力の最適化やダウンタイムの低減、方向転換に必要だった時間の短縮を実現する。

製品品質

データセットが性能に関する報告を行う場合には、製造過程での品質不良の検出、特定を、人間のオペレーターよりずっと早い段階で行える。環境要因や機械の不具合、わずかな人為的ミスはバタフライ効果を発生させ、最終的な生産不足を招くこともある。

プロセスから得られるデータの調査、報告により、全面的な中断を行わなくても、問題がより小さく簡単で、対処コストがそれほどかからないチェーンの上流に戻って、こうした不備を明らかにできる。

持続可能性と安全性

データを賢く使用し、生産を最適化することで、環境にさまざまなプラスの変化をもたらすことができる。例えばドイツ・シュトゥットガルトにあるポルシェの電動スポーツカー、タイカンのデジタルスマートファクトリーは「ゼロインパクト施設」であり、屋上緑化、バイオガス、太陽光発電システムやその他の再生可能エネルギー源の使用など、資源消費と廃棄に対して総合的なアプローチを行っている。

こうした啓発的なデータ活用は、メーカーがより顧客のニーズに合った製品を作る機会にもなり、顧客はブランドロイヤリティの実践としてサステナビリティを選択できるため、環境保全への貢献がフィードバックループを生み出す。

また繰り返しプロセスの自動化によって怪我につながるヒューマンエラーを低減でき、人間のタスクから退屈で面白みのない仕事を排除して、プロセス全体を管理する裁量を提供できる。それによって、仕事はより面白いものとなり、その結果として、従業員 (と彼らの経験) が、より長く留まることになる。

収益

しかし (特に重役会議で) 何よりも重要なのは、結果の証明だ。そして、スマートファクトリーでは生産高が10%、稼働率が11%、労働生産性が12%向上すると試算されている。

スマートファクトリー導入の主要なステークホルダー

スマートマニュファクチャリングをどこまで進められるかは、重役会の支援が左右する。この指標において、企業は3つのタイプに分類できる。

まずは、CTO (最高技術責任者) がリードを執る先駆者企業。このCTOはCEOやCIO (最高情報責任者) 、CFO (最高財務責任者) を巻き込み、工場の現場やワークフローの特有のニーズに対するスマートマニュファクチャリングの最適な導入方法について、積極的に生産/運営部門からの意見や助言を求める。

探検者企業の場合は、現場のプロセス自動化を進める必要性を認識している生産/運営部門のスタッフが率いていることが多く、その必要性を上層部に納得させる必要がある。彼らの最大の理解者となるのがCTOだ。CTOは経営陣に対する影響力を持ち、リスク評価やサイバーセキュリティから工場管理まで、スマートマニュファクチャリングが全事業部門にどのような影響を及ぼすかに関する意見を提供する心づもりができているはずだ。

追随者企業では、やはり生産/運営部門スタッフが主導し、CTO、CIOやその他の部門の統括が参加しているが、スマートファクトリーがあらゆるレベルにおける事業目標とどうに統合されるかについて、他部門のケーススタディが存在していない。

こうしたスマートファクトリーのリーダーシップにおける3つのスタイルの違いは数値化できる。先駆者企業はこの取り組みに予算の最大65%を費やし、KPI (重要業績評価指標) の20%向上を享受している。探検者企業は19%の投資によってKPIが10%上昇している一方、追随者企業の投資は13%で、KPIの上昇は8%に留まっている。

スマートファクトリーの構築方法

スマートファクトリーを支える要素は製品、アイデア、市場、事業目標によって異なるが、手始めとなる共通原則が存在する。

コマンドセンター

データ機能を運用するための拠点が必要となり、これはデータを合成し、ダッシュボードや可視化しやすいインターフェースで表示するためのサイロとなる。解析、性能情報、生産高の追跡は、迅速な方向転換と臨機応変な改善を可能にする知見のほんの一部に過ぎない。

工場の消費&エネルギー管理

スマートなエンドツーエンドのユーティリティとリソースのトラッキング (上記のようにデータインターフェースを通じて確認可能) により、すべての材料投入と廃棄物排出に目を光らせ、水、廃棄物、エネルギーを最適化し、環境への影響をリアルタイムに計算することができる。

工場資産の最適化

すべてのシステムからデータを収集、提示することで、それをさらなる改善をもたらすアプリケーションで再利用できる。機械が自らレポートすることで、不具合が生じるずっと前の段階から保守の管理、予定ができ、また製品に関する客観的な測定値をARで重ねることで、作業をより深く検討できる。

工場の同期とリアルタイムアセット管理

すべてのアセットにセンサーやトラッキングデバイスを取り付けることで、工場内だけでなくサプライチェーン全体の状況を一目で把握できる。これにより24時間365日、アセットの場所を正確に把握し、それに応じて供給や生産スケジュールを調整できる。

品質の検知と検出

ワークフロー内の全ステップ (と、それを担うすべてのデバイス) がパフォーマンスに関する情報を生成するため、製品やそれを作るツールのパフォーマンスを作業中に定期的に確認でき、生産を停止したりワークフローを遅らせたりすることなく調整を行う、あるいは変更をスマートアルゴリズムに任せることが可能だ。

スマート搬送

アルゴリズムプログラミングに基づく機械学習や類似のシステムは、運搬車両、組立ライン、搬入材料など、スマートファクトリー内の最も効率的でビジネスに適した資産の搬送を人手を介さずに管理できる。

グローバルな工場フロア

だが、これはまだ始まりに過ぎない。工場が完全に自動化され、システムが継続的にパフォーマンスを報告し、高品質が継続的に保証されるようになれば、これらすべてをサプライヤー、パートナー、顧客とつなぐことができる。

そして環境負荷、効率化、品質向上の合理化が進められ、業界全体へと拡大されれば、製造業界にポジティブな影響を与えることになるだろう。

このインフォグラフィックは2021年1月に公開されたものです。関連記事の著者であるテクノロジーライターのドリュー・ターニー氏に感謝します。

著者プロフィール

ミッシー・ロバックはオートデスクのシニア エディター。またライター兼ミュージシャン、マネキン愛好家。文章と音楽 (マネキン以外) は www.missyroback.com にて。

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