3D プリントによる型枠で旧製糖工場のコンクリート造ファサードに輝きを
プレキャスト コンクリートは一般的に木製の型枠内で硬化させるが、この型枠は一定の回数を使用した後に、定期的な維持管理が要求される。また木製の型枠は、木工で製作可能な形状へ物理的に制約される。ブルックリンのドミノ製糖工場の再開発プロジェクトで、 Gate Precast は 3D プリント製によるコンクリートの型枠を採用することで、意欲的なファサードを生み出した。
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ヘイル・エヴェレッツ (Architect & Development Manager, Two Trees): ここは素晴らしい場所でしょう? ウィリアムズバーグ橋とマンハッタン全域が見渡せる。どのフロアからも特別な眺めが得られます。
ここでドミノシュガーが製糖を行なっていましたが 2000 年代前半に閉鎖され、その後は長年放置されていました。ブルックリン独自の資産の有効活用はとても大切なことだし、それをうまく実行できていると思います。
パム・キャンベル (Partner, CookFox Architects): ドミノの用地でのプロジェクトは商業・居住向けで、工業用地に新たに建設が行われます。工業用地と新たな活用法を結びつけるのはチャレンジです。特定の場所に所属するように建物を作るにはどうするか? 特にその場所ならではの外壁をどう生み出して、それが歴史を反映しつつ、未来の一部となるようにするのは。
そして砂糖を扱っていたところから発想を得ました。形状はとてもユニークです。その光の捉え方は、まるでカットされたダイヤモンドのようです。そこでファサードは生き生きとして、氷砂糖の反射を思わせるようなものを生み出そうと考えました。
早い段階からプレキャスト コンクリートのメーカーを探し始めたのは その重要性を認識していたからです。ファサードのシャープなラインと異なるテクスチャーを生み出すことは非常に重要でした。細かな反射と影を得るのが、デザイン上で最も大切なことでした。そのソリューションとして Gate が提案したのは、そうした表現をずっと迅速に再利用できる形で実現可能とするための、大規模な 3D プリントによる型枠でした
スティーヴ・シュワイツァー (VP of Operations, Gate Precast Company): ここはプラントの保管エリアです。製造と仕上げが終わり、運搬を待つもの全てがここにあります。これほどのサイズで これだけ窓の開口部があるので、型枠を繰り返し使うのがふさわしいでしょう。そこで早い段階で新たなテクノロジーである、3D プリントによる型枠を検討することになりました。
建築用のプレキャストでは、型枠を使うのは 1-2 回、多くても 3-4回 で、その後は廃棄されるため、ほとんどの型枠は木製です。3D プリントの型枠では 150 から 200 回の成形ができます。かなり複雑な形状を実現可能で、窓の開口部にも大きな角度を付けることができて、折れ曲がったものから 3 次元形状の曲線に形状を変更できます。これは木製では非常に難しいもので、建築家にどんな形状でも実現できる自由度を提供します。
キャンベル: コンペの段階で [Autodesk] Revit へデザインが入れられ、そのモデルはのちに設計図書や実施設計図の作成に使われました。そのフェーズの早い段階でプレキャスト メーカーとモデルの共有が始められ、ここにもっと奥行きが必要だとか、ここをもっと薄くしたいとか、1 枚のパネルを最大限に活用するには窓のモジュールを幾つ並べられるか、といったやり取りが行われました。そして Gate からきたものが、最終的には 3D プリント型枠のもとのモデルになります。
シュワイツァー: 製造プロセスは強化鉄筋に接続やベアリング、インサーションのハードウェアを置くことから始まります。すべてをセットしたら型枠にコンクリートを流し込みます。10-14 時間程度の養生が行われ、養生の終わった翌朝には部材を引き出します。その後仕上げのエリアに移動して吊るして、そこで酸で洗浄してから正面を研磨します。完成後は保管場所へ移動し、最終的には窓をインストールするエリアへ持ち込まれて、現場への移動前に窓のインストールとコーキングが行われます。
キャンベル: 3D プリントによる型枠とそのテクノロジーが無ければ、プロジェクトに要求されたスケジュールに沿って、この形状を作ることは不可能でした。
トラヴィス・フォックス (VP of Operations, Gate Precast Company): もちろん 7-8 t もの重量のものを吊るすのですから、ナーバスにはなります、大半はファブリケートされたものですが、そうでないものもあります。だから現場で実行しさえすればよいのです。
このプロジェクト最大のチャレンジはロジスティクスです。ケンタッキーやオックスフォードから、ここへ時間通りに運搬しないと、組立工はスケジュールを守れません。それはチャレンジでしたね。型枠を木で作っていたら、今も型枠づくりを続けているでしょう。
シュワイツァー: オフサイトで生産を行なっている一方で構造はオンサイトで作られているので、窓をインストールして現場に行けるなら、他の材料を使った場合に比較して、半分の時間で終わらせることができます。
キャンベル: 昨今のビルがプレキャストだと表現し始めているのは、エキサイティングなことだと感じています。もうそれを隠してはいません。材料としての可能性を活用しており、何か別のものを模倣してはいません。設計ツールの進化で、さまざまな形状を低コストで作り出せるようになりました。
フォックス: 3D の型枠は新たなツールになりました。建築家やオーナーが実現を望むものを作ることができ、この現場が完了すれば、さらに勢いが増すでしょう。
エヴェレッツ: ファサードの形状とテクスチャーを心底気に入るでしょうし、この風景と公園、街の眺めは高く評価されるでしょう。本当に特別でユニークな場所で、ここから見た瞬間は忘れられないものになります。