デヴィッド・ベンジャミン ( **Director, ACC Industry Futures, Autodesk):**現在、AEC業界には重大な課題が数多くあると考えています。今後30年で20億から30億の人口増加が予想されています。大規模な都市化も進行して、より多くの人々が都市へ移り住むようになるでしょう。必要となる建物の床面積は2050年までに倍増すると予測されています。その実現には、1日あたり13,000棟のビルを今後30年間、毎日建設する必要があります。
我々は同時に、気候変動の問題によるさまざまな問題にも直面しています。幸いにも国際社会は団結を始めており、2030年までに炭素排出量を半減させ、2050年には完全にゼロにすることを目指しています。この巨大な挑戦の舞台は整ったと言えます。
ロブ・マクガイア ( Vice President, AEC Design Platform): 優秀な建築家やエンジニアが、世界を変えたいと考えています。持続可能性やエネルギー管理の成果に向けて推進することを目指していますが、そうした作業プロセスの多くは、現在のツールセットでは実現できません。
ベンジャミン : クラウドベース・プラットフォームのようなソフトウェア・ツールやワークフローは、AECのイノベーションを促進し、業界全体が直面する大きな課題への対処に役立つでしょう
マクガイア: 従来はデータセットとアプリケーションがサイロ化しており、建物の設計は建築家が、施工はゼネコンが行っていました。責任の問題から、その境界を越えた情報共有はできませんでした。情報を共有しなければ、自動化を実現することも、作られるものや実現することから洞察を得ることもできません。次世代のBIM (ビルディング インフォメーション モデリング) は、こうした境界を越える必要があります。建物の大まかな形状やマッスの計画、建設現場に隣接したコンクリート工場の配置、IoTによるデジタルツインの活用、達成度の測定など、本当に求めている結果を得るには、こうしたサステナビリティの側面全ての一元管理が必要です。
統合され相互運用可能なクラウドにより、以前は不可能だった方法で、異なる製品ライン間でのデータ移動が実現します。
ベンジャミン : クラウドベース プラットフォームは、建築物やインフラの未来で非常に重要な、プロジェクトの複雑なライフサイクル全体の評価を可能にします。必要な原材料は? その材料の製造にどれだけのエネルギーが消費され、構造物の組み立てにどれだけの炭素が排出されたのか? その構造物が長期的にはどのような性能を発揮し、どれだけのエネルギーを消費するのか? 炭素排出量は? どれくらいの期間で交換が必要になるのか? さらに重要なのは、その建物や橋の耐用年数が過ぎた後は? こうしたことは、とても複雑なのです。
未来の設計のプロフェッショナルを後押しする全てが、オープンな環境、共有データ、クラウドベースのプラットフォームで実現します。
マクガイア : オートデスクのAEC業界向けクラウドであるFormaは、Autodesk Platform Services上に構築されています。建築、交通、水、工業などオートデスクの全サブインダストリーで、計画から設計、施工、運用まで、プロジェクトの全フェーズにおけるAECエクスペリエンスの再構築を目指しています。現在オートデスクは、こうしたサブインダストリーやプロジェクト フェーズへさまざまな製品で対応していますが、それぞれはバラバラで、その管理は困難です。
全てが統合され、接続されたデータセットのパワーにより驚くほど多くのプロセスを自動化でき、以前は想像できなかったような成果を実現できます。
ベンジャミン : 設計、施工、運用の組み合わせは、このクラウド化された新しいワークフローにおいて、実に興味深い可能性を秘めています。サーキュラー・エコノミーを新たな形で実現し、運用で学んだことを設計に反映させることも、その逆も可能です。
マクガイア : プロジェクトのライフサイクル全体でつながったエコシステムにより、非常に奥深いことを実現できます。例えばオフサイト建設される施設の設計が可能です。照明のような建築製品の製造部品を設計し、その窓をオフサイトの工場で組み立て、モジュール化して全体を一気に組み立てることもできます。これは複数の異なる製品ラインによる断片化したワークフローでは不可能です。
ベンジャミン : こうした進歩により、全てのプロジェクトをゼロから始める必要がなくなります。以前に行ったこと、他の人の作業をベースにできます。デザイン・インテリジェンスの再利用は非常に重要で、それを将来の課題への対応に役立てることができます。
13,000棟のビルは、1日では建てられません。建築のCO2排出量を2025年までにゼロにするには、再利用可能なデザインインテリジェンスや現在・過去のプロジェクトの全データを実用的な方法でまとめる、クラウド対応のワークフローが必要なのです。