ジェネレーティブ建築が設計者の抱える複雑な問題を迅速に解決
- 建築家や建設家のビジョンは何千年もの間、その想像力ではなく自分たちが実現可能なもの、予測可能なもので制限されてきた。
- ものの作り方、そして幾何学そのものを、テクノロジーが根本から変えようとしている。
- 建築家はジェネレーティブ デザインを活用し使って、プロポーザルに向けたクリエイティブな解決策を見出せるようになった。
テクノロジーをデザインの道具としてだけでなく、デザインのパートナーとして機能させられる方法があるとしたら? それが、ジェネレーティブ デザインにより実現する。
ジェネレーティブ建築とは?
ジェネレーティブ建築とは、コンピューターを使って多数の制約条件に基づいた建物を設計し、複雑な問題を解決する方法である。例えば建築家はコンピューターへ、面積やエネルギー使用量、バスルームの数、日照などの指標に基づいた、幾つもの間取りを生成するよう指示することが可能。それにより、チームはさまざまなアイデアを、より速いペースで検討することができる。
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ザック・クロン (オートデスク 製品ラインマネージャー): 自分は、いずれ科学者になるのだと思っていました。ビーカーや煙の出るフラスコに囲まれるような。それほど間違ってはいませんでしたよ、コードで実験しているようなものですから。
リリ・スミス (オートデスク シニア製品マネージャー): 本当に頭脳明晰な人たちと仕事ができています。建築家の働き方を一変させるような取り組みができるのは、最高です。
ヴァルヴァーラ・トウケリドウ (オートデスク シニアリサーチマネージャー): この仕事が大好きです。夢中になれることに取り組めているし、こうしたツールの未来に影響を与える機会なのですから。
ジェネレーティブ デザインを使うべき最大の理由は。より密に、かつ迅速に施工する方法を見出し、同時に生活の質を高め、サステナブルな環境を
提供する必要があるということだと思います。
クロン: ジェネレーティブ デザインはルールを用いて、あらゆるデザインの可能性を検討する方法です。
スミス: これはコンピューターでデザインを支援する方法論です。デザイナーが1日に試せるアイデアはせいぜい3つなのに対して、デザインを行うシステムと、それを一緒に評価するシステムをデザインすることができれば、何千ものデザインを評価可能になります。
クロン: 複数の目的が相反するような複雑な状況に置かれた場合、結局のところ、次々に別のことを試して、それがうまく行くかどうかを試すことになります。ジェネレーティブ デザインであれば、デザイン空間と可能性をずっと迅速に検討することが可能であり、予想もしなかった結果が得られることも多いのです。
スミス: こうした作業を建築家やエンジニアに実現するようなツールが広く提供されることはありませんでした。従来の設計手法は、海戦ゲームに似た部分もありました、相手の場所を、半ば当てずっぽうに予測して、それが外れたら、またやり直すということの繰り返しです。この方法なら、自動化して全てのデザインを一度に検討でき、その全てをデータ化できます。
クロン: 満足度の高い、複数のソリューションが得られて、そこから単に基準を満たしているだけでなく、最も望ましいものが選べるような状況を目指しています。
スミス: こうしたツールを、さらにさまざまな人たちが利用できるように、懸命に取り組んでいます
クロン: ジェネレーティブ デザインに関する議論で、チャレンジとしてよく話題に上るのが、スタジアムのデザインです。ここでは2つの原則が対立します。収容人数は多くしたいが、全観客に最高の視界を提供したい。実は「何が最高の視界か」といったことの数値化は、かなり単純な計算で可能です。それをスタジアムのサイズに対立させて、あるいは関連させて入力できます。ジェネレーティブ デザインのシステムを使えば、こうした異なる2つの原則を同時に機能させて、これまで目にしたことのないような解決手法が得られます。
トウケリドウ: 簡単な例を挙げると、駐車場の区画配置を検討する際には、その空間内にできるだけ多くの区画を作りたいと考えますが、それを駐車手順が合理的になるように配置できます。また医療施設で配置したい部屋数を指定する際に、看護婦のA地点からB地点までの移動が最速で行えるような配置を実現できます。
スミス: 製造に関しても同様です。例えば、このように表面が曲線を描いているとします。細かいタイル片が大量にできないようにするには、どういうサイズのタイルを選ぶべきでしょう? さらに、できるだけ廃棄物を減らして、施工を可能な限り簡略化するには?
トウケリドウ: 建築家は、全ての要件を満たすプロポーザルを見出せるよう、最終的なソリューションへ到達する前に、できるだけ多くのデザインオプションを検討しようとします。こうしたテクノロジーにより、建築家は提案に、より確信を持てるようになり、関係者と、より生産的な議論が可能になります。
クロン: この業界のプロジェクトは、今後さらに複雑性を増していきます。解決すべき相反した問題はさらに増え、より迅速に解決する必要があるでしょう。この種のテクノロジーが、その実現の機会を提供すると考えます。デザイン思考を、より多くの人へ浸透させられるからです。
トウケリドウ: 本当にわくわくさせられています。このツールが業界にもたらす機会と可能性、そして私たちが、その推進へ実際に関わっていることに。
本記事は2019年10月に掲載された原稿をアップデートしたもので、フィル・バーンスタインの協力を得ています。