Gilbane Building CompanyがVRを活用してプレファブリケーション建築の有効性を実証
新たな技術を導入するリーダーとして知られる建設業界の大手企業は、ほとんど存在しない。だが、Gilbane Building Company は違っている。ボストンのウェントワース工科大学新校舎を完成させる厳しい納期を抱えた Gilbane は、プレファブリケーション建設と VR に取り組んだ。この建設プロジェクトは、現在ウェントワース大学で建設マネジメントを学ぶ学生の、生きた学びの場としても機能している。
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ジョン・マイヤーズ氏 (Gilbane Building Company バーチャルデザイン/建設部門ディレクター): 建設業は、新技術を先駆けて導入することを、常に躊躇する業界と言えます。
ジャック・ダガン氏 (ウェントワース工科大学土木工学部学部長): 新設されるのは、当大学で初めての独立型の校舎です。
マイヤーズ氏: ウェントワースは工学、建築、理工系の学部を擁するボストン中心部の工科大学です。
ダガン氏: プログラムに含まれるこの学部は、そのデザインと空間に密接に参画しています。この建物は、在籍中の学生が必要とするであろう要素だけでなく、今後ここで学ぶ何世代もの学生のための空間をデザインする機会を提供しました。
マイヤーズ氏: ウェントワース大学に、ある種の全体観的な展望を提供しました。「協力会社 4 社全てに [Autodesk] Revit で設計させるつもりだ」と話しました。Revit で設計することで、全員が同一のソフトウェアを使い、モデルをやりとりできるようになります。それによってライフサイクルの各段階で、オーナーに極めて集約的な VR を提供できるようになります。
お偉方に VR で説明して、建物の外観の理解と同意を得ました。建物が「これくらいの高さ」になると説明しても、それは実際にはどれくらいなのでしょう? 実際に通りを歩いて建物の高さを確認することで、その高さを感覚で理解できます。
ケヴィン・クック氏 (Gilbane Building Company プロジェクト上級管理者): このプロジェクトの建設が始まって約 10 カ月です。建材を初めて搬入したのが、昨年 8 月でした。完了まで残り約 5 カ月です。スケジュールがタイトなため、最高レベルのプレファブリケーションとデザイン テクノロジーが要求されました。
マイヤーズ氏: プレファブリケーションが最も重要です。それを正しく行うには 3D モデルが欠かせません。施工会社に運用上、寸法上の確証を提供することで、プレファブリケーションするものが現場で分解されず、正しく組み立てられる必要があるからです。施工会社が「分かりました。まさにこれが必要でした」と言えるような状態でなければなりません。VR だけでなく私たちが使用するツールは全て、オーナーや建築家だけでなく、倉庫で建物の構成要素を事前に組み立て、トラックに載せ、現場へと運び込むという膨大なリスクを負うことになる施工会社の理解を得るために使用されています。
マイケル・ハリス氏 (Gilbane Building Company プロジェクト マネージャー) : このプロジェクトのプレファブには主に 2 つの要素があり、そのひとつがペントハウスです。そこに全ての空調機器が設置され、ビルの冷却と換気、排気を行います。また全ての水道や配管、導管設備なども長さ 6 m のプレファブ ラック内に設置されます。
この建物には独自の課題もありました。まず 、現場が都市部で狭小でした。プレファブの利点ともなる寸法設定では、トラックに積載可能で、現場周辺や建造物内に搬入可能な寸法の特定が必要でした。ビルの正面側、裏口側とも進入路に制約があったためです。
ポール・フィッツジェラルド氏 (TG Gallagher 配管系統責任者): 上にいるのは、私のチームのメンバーでしょうね。私がインタビューされるので 騒音を出しているんです。研究室の場合は、配管の量は通常の 4 倍ほどになります。上水、排水、ガスなどの量が多いため、作るプレファブの量も増えます。
このビジネスで変化したのは仕事のペースと、そのペースに見合うプレファブの種類です。マンパワーに関しては、通常の建設に比べると同じ仕事を 1/3 の時間でできるようになりました。
クック氏: ビル屋上のペントハウスはオフサイトで 9 つの部分に分けて製造され、搬入後、週末のうちに組み立てられました。昔だったら同じ作業に 1 カ月以上はかかったでしょう。
マイヤーズ氏: 極めて高性能な建物なので、事前に全ての機械部分がプレファブされることを確認し、現場に持ち込んだ時点では、全ての完璧な手配が必要です。次回はありません。もう一度やり直す余裕はないのです。こうした品質の保証と管理を織り込む必要があったので、VR など利用可能なツールは全て使いました。例えば [Autodesk] Navisworks でビル内をフライスルーして、全てが天井の下ではなく上にあることを確認しました。またウォークスルーで周囲を見回したり眺めたりして、コントローラーで物に触れたり、ドラフトチャンバーのある壁に入りこんだりもしました。
ダガン氏: 教えているときによく思うのですが、利用できるリソースを目にすると 適応するようになります。カリキュラムは協力によって決まります。基礎知識を得て、社会で実世界の体験を得る学生たち次第です。
シャノン・シュトゥルツ氏 (ウェントワース工科大学建設マネジメント学部生): この生きた学びの場は、ウェントワース工科大学の学生が教室から外に出て、学んだことを実社会で確認する機会になっています。教室に座っていると、教授が「外を見てごらん。まさに搬入が行われているよ」と言います。外に目をやると、クラスで話していたような状況を見られます。建設現場のすぐそばで実際に行われているのです。毎日そのそばを通って通学しています。
ダガン氏: このビルが建設される様子には、カリキュラムの全ての要素が示されています。
オービー・ランキン氏 (Gilbane Building Company プロジェクト エンジニア): 明けても暮れても建設のことばかりです。ウェントワース工科大学を 2014 年に卒業しました。今はキャンパス内でウェントワースの新校舎に取り組んでいます。このプロジェクトそのものが 数々の恩恵をもたらしています。プログラムに参加する学生たちと得られる、生きた学びの場、ローテーションで交替するインターンの存在、さまざまなことを教えられることなど。
ダガン氏: これこそが職業であり、業界です。あなたはその一部であり、何らかの貢献をもたらせるかもしれません。継続するレガシーの一部なのです。この建物は今後 100 年ほど存在することになるでしょう。となるでしょう。そして今、皆がその建設に何らかの役割を果たしているのです。
マイヤーズ氏: 仕事から得られる最大の報いは、従事している業界の変遷に貢献できるということです。業界を新たな高みへ到達させることに助力しているわけですが、こうした機会は、どの業界でも得られるものではありません。毎日いろいろなことがあり、それは素晴らしい経験です。