Scottish Canalsがデジタル ツインで運河の貯水量を調整
スコットランドのグラスゴーでは、何百年も前から運河が主要な貿易路として利用されてきました。こうした水路も、気候変動の影響と無縁ではありません。厳しい気象現象が増加すると、運河は洪水に見舞われやすくなり、その周辺地域は好ましくない、使用不可能な状態になります。
スコットランドの内陸水路を管理する政府機関、Scottish Canalsはフォース・クライド運河の貯水能力をデジタル ツインの洪水モデリングを用いて調整し、その排水経路を予測することで、洪水の現象の予測・補償に成功しました。運河の周辺は現在、新しい住宅地や自然保護区を含などによって開花しています。この地味な運河がテクノロジーにより、数百年の時を経て待望の進化を遂げたのです。
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ピーター・ロビンソン氏 (Head of Engineering, Scottish Canals): 水の上は、私にとって幸せな場所です。セーリング、パドルボード、ビーチや川沿い、運河の周辺。水辺に帰ってくることは、私にとって本当に大切です。運河に行くと、自分が得ているものに畏敬の念を抱くような要素があるんです。
フォース・クライド運河は、海から海へつながった世界初の運河でした。そこには作り上げた人たちのビジョンがあり、道路も鉄道も無い1790年の開通当時には、まるでインターネットのような存在でした。高速移動を実現して、グラスゴーの街の発展を支えたのです。
でも1960年代になると、運河は誰の役にも立たないとみなされるようになりました。運河は汚染され、ひどい扱いを受けて、人々が安全でないと考えるような場所になったのです。
アンジェラ・マコーミック氏 (クレイピッツ保護区ボランティア): 運河は汚くて、藻で覆われているから、安全な場所ではありませんでした。
以前友人が、レンジが壊れたので、仕方なく運河に捨てたと言っていたのを覚えています。まるで当然のように。まさにガラクタの捨て場所だったんです
ロビンソン氏: 21世紀には、目的意識を持たせることが重要です。社会や人々、コミュニティから評価されなければ、運河は背を向けられてしまうでしょう。 その運河を再利用し、21世紀の社会を支えるものにしようというのがSmart Canalsプロジェクトです。
レベッカ・ウィリー (Technical Solutions Engineer, Autodesk): オートデスクは、さまざまな産業向けにテクノロジー・ソフトウェアを提供しています。Smart Canalがスマートである理由は、1時間単位で監視できるよう、あらゆる技術を駆使していることです。リアルタイムデータと予測データを組み合わせることで、現在起きていることだけではなく、将来どうなるかを示すことができるのです。
ロビンソン氏: このシステムで最も重要なコンポーネントにオートデスクが提供・作成したソフトウェアがあり、それによってデジタル ツインを作成できました。230年前に作られた本物の運河が、デジタル ツインモデルで表現されているのです。
ウィリー: デジタル ツイン ソフトウェアは、現実世界をデジタルで再現したものです。デジタル ツインは、運河に設置されたセンサーからのライブデータと予報データを使って、いつ洪水が起こるのかを予測します。そして、水門を操作することが可能です。
ロビンソン氏: 運河沿いに3つの水門を作り、それを開くと運河から水が排出されます。このように運河を降雨に備えさせる技術を使い、降雨の前に運河から水を排出することで容量を確保しています。 用水管理のため運河を動的に管理するのは、ヨーロッパでも初めてのアプローチです。エンジニアにとっては、運河のデジタル表示を見て、特定の時点で何が起こるのかを正確に把握できることが、とても価値あることなのです。
プロジェクトは あのソフトウェア無しでは実現不可能でした。我々はグラスゴー北部の開発・再生を支援するために、運河を変更し、再利用しています。
ウィリー: プロジェクト以前は、雨が降れば水の行き場がなくなり、その地域は水浸しになっていました。現在はスマート運河により、運河に作られた貯水池を利用して効率よく排水できるようになりました。それにより、この地域では洪水の心配がなくなりました。
ロビンソン氏: この計画は、運河の利用・再利用により、新たに3,000戸の住宅開発の可能性を秘めています。運河を活用し、重力で排水することで、年間約500tのCO2削減ができると試算されています。 クレイピッツ自然保護区のように、地域のコミュニティが主体となって開発を進めている場合は、さらに効果的です。
マコーミック氏: ここはグラスゴーの真ん中で、街の中心部まで5分ほどの場所ですが、本当に解放された気分になります。
ミッチェル氏: クレイピッツのボランティアとしてゴミ拾いをするのですが、熱心な拾い手には 散歩以上だと感じられることもあります。こうした活動を、誇らしく感じています。自分がコミュニティの一員だと感じられるのです。
ボブ・アルストン氏 (クレイピッツ保護区ボランティア): 人々が住んでいる場所や地域に誇りを持っていることには、本当に感謝しています。
ロビンソン氏: 運河沿いを歩き、開発中の場所まで行って、家が建っているのを見るだけでいいんです。その家々には人が住んでおり、このプロジェクトによってコミュニティが発展し始めています。
ウィリー: それに参加しているのは素晴らしいことですし、この技術が世界のどこへでも応用できることを、こうした熱意と関心の高さによって、より多くの人に理解してもらえることを願っています。
ロビンソン氏: 気候は変化し、今後世界的に大きな問題となることに誰もが気づき、目を覚まし始めています。このプロジェクトは、既に存在する解決策の実証です。21世紀における運河の存在とその目的を証明できました。
マコーミック氏: だから、水を楽しめる場所だとして考えるようになるんです。
ミッチェル氏: 野生動物にとって、そして人々にとっても天国です。