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Moose Toys 社が Fusion 360 (フュージョン) を使用してプロトタイプ作成から設計・製造までを行った Magic Mixies は大ヒット玩具となりました。同社の活用事例をご紹介します。
Moose Toys 社の Magic Mixies は、ただのおもちゃではありません。子供たちは、内なる魔法使いを呼び覚ますような体験ができます。輝く杖から波動を出し、魔法の薬を少し加えると、大釜や水晶玉から未来を占うペットが現れます。実際に霧が立ちこめて、未知の動物のぬいぐるみが姿を現し、子供たちは驚きや歓喜に包まれます。
このおもちゃはベストセラーとなり、賞も受賞しましたが、もちろん魔法で生まれたわけではありません。Magic Mixies の魔法は、Fusion 360 の高度な設計・製造プロセスを使用して生み出されました。霧のように立ち込めて神秘的な効果を生み出すミストの開発にも Fusion 360 が使用されました。「私たちはミストの開発に全力を注ぎました。それは、かつてない経験となりました」と、Moose Toys 社エンジニアリング マネージャーの Carl Budd 氏は話します。
品質を妥協することなく、スピーディーに納品
ミスト機能は、この非常に複雑でスピーディーな開発サイクルにおけるたった 1 つの要素に過ぎません。チームは 3、4 ヵ月かけて、Fusion 360 でコンセプト全体のプロトタイプを作成しました。そして Magic Mixies の設計・製造プロセスは、パンデミックの最中にも関わらず、わずか 18 ヵ月で完了し、発売にこぎ着けることができました。
「これは、私たちが完全リモート体制で進めたプロジェクトの中で、おそらく最も複雑なプロジェクトでした。世界中のチームが、設計レビューやコラボレーションを、リモートで行いました。しかし結果的にはそのおかげで、SolidWorks を使っていた頃のサイロ化されたアプローチよりも優れた方法を見つけることができました」と Budd 氏は話します。
Magic Mixies の電子機器は、とても優れています。ハードウェアを搭載したぬいぐるみを普段目にすることは、あまりありません。これは、設計・エンジニアリング上の新たな課題をもたらしました。「織物製品を CAD ソフトウェアで試作したりモデル化したりするのは非常に困難です。Fusion 360 では、初期段階の内部レンダリングでフラシ天のような外観が得られました。Mixies Crystal Ball では、フォーム ツールを使用して、デカールなどをフォームのサーフェスに適用して作業を進めました」と Budd 氏は話します。
Moose Toys 社は、30 年以上前に創業した家族経営の企業です。オーストラリアのメルボルンに本社を構え、世界各国にオフィスを展開しています。現在、600 人以上の従業員を擁し、世界全体の年間売上高は 10 億ドルを超え、流通網は 100 ヵ国にわたります。Shopkins、Little Live Pets、Goo Jit Zu、Akedo などを始めとする数多くの人気玩具やブランドで知られるほか、昨年はオーストラリアの人気アニメ シリーズ『Bluey』の新製品ラインが注目を集めました。 同社にとって何よりも大切なミッションは、子供たちを「スーパー ハッピー」にすることです。
舞台裏:おもちゃの設計のプロトタイピング
おもちゃのビジネスは、わくわくするような楽しいことばかりではありません。それは厳しい競争市場です。消費者の変わりやすいニーズやトレンドを先取りするためには、迅速に製品化できるスピードが必要不可欠です。模倣品は、すぐに市場に出回り始めます。効率的な設計・製造プロセスは、新たなアイデアから子供たちに愛される製品をすばやく生み出すための重要な鍵となります。
「この業界では、物事がスピーディーに進みます。去年注目されたものが、翌年にはすぐ昔話になってしまいます。私たちは、常にアジャイルでなければなりません。毎年、状況は変わります。私たちはさまざまな製品に取り組みながら、市場の製品を改善し続けています」と、Budd 氏は話します。
Fusion 360 は今や、Moose Toys 社における設計・製造プロセスの中心的なプラットフォームとなっています。同社では、機械製品の設計やプロトタイピングの大半を、メルボルン本社とロサンゼルスや英国のオフィスで連携しながら行っています。チームの一般的な設計プロセスは、クリエイティブ チームによる大まかなコンセプト作りから始まります。Moose Toys 社のエンジニアリング チームは早い段階から作業に参加し、材料や価格帯の面でアイデアが実現可能かどうかを判断していきます。子供や親、販売店などの市場における需要やニーズは、考慮すべき非常に重要な要素です。
最初の設計レビューと検証が完了後、プロダクト デザイナーがスケッチを提供し、Budd 氏やチームは Fusion 360 でプロトタイプの作成に取りかかります。プロトタイピングは、機械機能と電子機能の両方の概念を実証するための多階層的なプロセスです。
「私たちはじっくりと腰を据えて、あらゆる機械装置を研究します。内部設計はすべて、Fusion 360 を使用して社内で行っています。当社には、優れたツールや電子機器ラボ、3D プリンターなどを取り揃えた作業場があります」と Budd 氏は話します。
実践的な製品テスト
チームは意図した機能を搭載したプロトタイプを作成し、経営幹部にプレゼンテーションを行い、フィードバックを求めます。しかし本当に重要なのは、子供たちの意見です。
「私たちは多くの子供たちをオフィスに招いて、実践的な製品テストを行います。そこで得られるフィードバックも、参考になります。自分たちが設計した製品に対して、子供たちがどう反応するかは、いくら考えても予測不可能です。子供たちは必ず、新しい使い方を見つけるものです」と、Budd 氏は話します。
チームはその後、設計変更に対応し、安全性やコンプライアンスの最終チェックを行い、プロトタイプの設計を完成させ、それを香港や中国のチームに渡して製造に入ります。ここでは、市場投入に向けて最適な価格を設定するために、材料の最適化や、パーツ数・部品表の計算などを行います。
「Fusion 360 の提供するコラボレーション環境は、特にグローバル企業である私たちにとっては、非常に大きなアドバンテージとなります。オーストラリア、香港、英国、米国など、すべてのオフィス間でファイルを共有できますから」と、Budd 氏は話します。
製品が生産開始となった後も、製品設計・製造プロセスは終わったわけではありません。生産中に成形品に問題が生じるかもしれません。その場合は、Fusion 360 の射出成形解析ツールや静的応力解析ツールを使用して、解決策を特定することができます。おもちゃを世界中でリリースした後は、さらにフィードバックが返ってきます。
「製品を市場に投入した後は、レビューや小売店からのフィードバック、カスタマー サービスへのあらゆる連絡を注意深く監視します。予期できなかった事態を解決するために、すばやく製品を変更することも珍しくありません」と、Budd 氏は話します。
製品設計・製造を Fusion 360 (フュージョン) へ移行
市場における Moose Toys 社の主な強みは、「俊敏性」と「イノベーション」です。過去 10 年間で、取り扱う電子部品や機械装置が増えたこともあり、「俊敏性」と「イノベーション」は同社の成功にとってさらに重要な要素となっています。
Budd 氏は 6 年前にプロダクト デザイン エンジニアとして Moose Toys 社に入社しました。そして過去 4 年間はプロダクト デザイン マネージャーとして、複雑なおもちゃの機械要素の実用的な設計に取り組んでいます。同氏はすぐに、コラボレーションや、さまざまなソフトウェアの使用、コストなど、困難な課題を認識しました。その頃、チームの大部分は、機械設計作業に SolidWorks を使用していました。Budd 氏自身も、医療機器を扱う前職で過去 12 年間にわたり、このソフトウェアを使用していました。他の設計者たちは、スカルプティングに Rhino や ZBrush を使用していました。
「私が参加した頃は、エンジニアリングにフォーカスして取り組む人やチームが少なかったため、個々の設計チームごとに作業がサイロ化されていました。これは問題だと、私たちは考えました。さまざまな設計者が互いにデータをやり取りしながらコラボレーションする必要がある中で、ZBrush などから SolidWorks にファイルを読み込むのは非常に大変です。これをなんとか機能させるためには、高価なプラグインをさらに購入する必要があります」と、Budd 氏は話します。
サイロ化の壁を取り払う
新製品の設計者やエンジニアのチームが拡大するとともに、ソフトウェアやアドオン プラグインのライセンス料金は非常に高額になりました。「私たちは、もっと良い CAD を見つける必要があると考えました。そしてしばらく調査した後、すぐに Fusion 360 を採用するということで全員の意見が一致しました」と、Budd 氏は話します。
Moose Toys 社の設計者は、Fusion 360 をすぐに使い始め、フォーム ツールを操作しながら動物やアクション フィギュアなどをスカルプトするようになりました。それと同時に、機械チームはまったく同じファイルを使用して、内部に配置する機械装置や電子機器を構築していくことができました。
「Fusion 360 には、機械装置のシミュレーション、あらゆるギアボックスやリンクの設計など、機械設計エンジニアの作業に必要なツールがバランスよく十分に用意されています。しかも、プロダクト デザイナーがシェイプをスカルプトするために必要なツールも揃っています」と、Budd 氏は話します。
「Fusion 360 ひとつで、さまざまな機能を実行できます。これは私たちにとって、最も重要なポイントです。スカルプトには Rhino を使用し、機械設計には SolidWorks を使用する、というように、さまざまなツールを使う必要はありません。あらゆる作業を 1 つのソフトウェアで行えるだけでなく、チームメンバー全員が、同じファイルで同時に作業することもできます。これは非常に大きなメリットです」
— Moose Toys 社エンジニアリング マネージャー/Carl Budd 氏
Fusion 360 (フュージョン) のクラウド環境におけるコラボレーションと作業
Fusion 360 に移行すると、コンセプトから電子設計、製造に至るまでの全プロセスに、さまざまなメリットがもたらされます。長年にわたって SolidWorks を始めとするさまざまなソフトウェアを併用しながら作業してきた Moose Toys 社は、その大きなメリットを実感しています。
「Fusion 360 のファイル管理とクラウド ストレージ システムで、効果的に一元管理できるようになりました。各オフィスごとに分断された CAD 環境で、何のコントロールもリビジョン管理もない状態で全てを繋ぎ合わせようとするようなやり方ではなく、すべてを 1 ヵ所に集約でき、特定の設計の最新バージョンがどこにあるかを、すべてのユーザーが把握しています」と、Budd 氏は話します。
「あらゆる作業が記録された設計履歴もあります。設計のヒントや従来の OEM コンポーネントを流用したい場合は、過去の設計を簡単に見つけることができます。実に素晴らしい機能です」と、Budd 氏は話します。
Fusion 360 のもう 1 つのメリットは、作業の柔軟性が上がることです。Moose Toys 社のあらゆる部門やチームに役立つ、さまざまな種類の使いやすい機能を備えています。設計者はすべての設計ルールを設定しながら、壁の厚さや射出プロセスにおけるプラスチック流量が回転半径にどう影響するかなどを検討できます。エンジニアリング部門は、とても便利なプラスチック設計ツールを多数搭載した Product Design Extension を使用していると、Budd 氏は話します。Fusion 360 の KeyShot プラグインも、レンダリングに役立ちます。また、パッケージ デザイナーは、Esko 対応の Fusion 360 プラグインを利用しています。
子供たちを“スーパー ハッピー”にしたいという Moose Toys 社の想いを、Fusion 360 (フュージョン) のソリューションが強力にサポートしています。