Autodesk Fusion 360 でサンゴ礁の再生を加速させる Coral Maker 社 

Emily Suzuki Emily Suzuki 7月 18, 2023

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地球上の多くのサンゴ礁では、気候変動の影響を受けて、サンゴの白化現象が起きています。この問題に取り組んでいるのが、Coral Maker 社です。Fusion 360 を使用して、年間数百万株ものサンゴを植樹する活動を行っています。 

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「サンゴ礁」と聞けば、多くの人々は海底にいる色とりどりの生き物や、休暇中に楽しんだシュノーケリングを思い浮かべるかもしれません。愉快で楽しいアニメ―ション映画『ファインディング・ニモ』を思い出す人もいるでしょう。しかし実際の世界は、もっと荒涼としています。地球上の多くのサンゴ礁でサンゴの白化現象が進んでいるせいで、海底から生物が消え、ゴーストタウンのような景色に変わりつつあるのです。サンゴの白化現象は、海水温の温暖化がサンゴの生態に影響を及ぼし、サンゴが高ストレス状態に陥って白化し、広く死滅してしまうことで起こります。  

モノクロのサンゴ礁にも、独特で不気味な美しさはありますが、地球にとっては決して健康的な姿ではありません。「豊かな生物多様性を育むサンゴ礁は、生態学的に重要な役割を担っています。サンゴ礁の構造は、嵐や海岸浸食から沿岸部を保護する防壁にもなります」と Coral Maker 社創設者のタリン・フォスター博士は説明します。  

オーストラリアの企業である Coral Maker 社は、サンゴ礁の迅速な再生を促進するために、新しいアプローチを実践しています。フォスター博士は、サンゴを専門とする生物学者であり、熱心なダイバーでもあります。いつしか彼女は、研究者という立場を活かしてサンゴ礁の再生に積極的に取り組む方法がないかと考え始めました。そして、科学分野における自身の経験と、実家の家業という点と点がつながりました。フォスター博士の実家は石工製造業を営んでおり、建設業界向けの石灰岩ブロックを製造する機械を所有しています。「この機械を使えば、サンゴの骨格をすばやく製造できるかもしれない」と突如アイデアがひらめいたのです。  

サンゴ再生プロセスでは通常、現存するコロニー(群体)から生きたサンゴを少し切り取り、このサンゴ片を育てることで骨格が形成され、最終的に大きなコロニーへと成長します。このプロセスの問題は、時間がかかることです。サンゴは自然にゆっくりと成長します。サンゴ片が大人サイズの骨格に成長するまでには 3 ~ 10 年もかかるのです。Coral Maker 社は、このプロセスを加速させるために、人工的に形成した骨格に小さなサンゴ片を植え付けることにしました。   

実際に変化を起こすためには、毎年何百万株ものサンゴを植えつける必要があります。Coral Maker 社は、正にそれを実践しようとしているのです。 

サンゴの成長を促進するソリューションの追求 

Coral Maker 社の誕生は、数年前に遡ります。フォスター博士は、カリフォルニア科学アカデミーのフルブライト奨学金を得て、2019 年にサンフランシスコに移住しました。その後、自身のアイデアをさらに研究したいと考えた彼女は、サンフランシスコのオートデスク テクノロジー センターにおけるグローバル研修プログラム Autodesk ResearchOutsight Network に応募しました。この応募は採用され、フォスター博士はオートデスク基金の社会貢献活動プログラムで新規事業を立ち上げました。そしてロボティクスから製造、エンジニアリング、マーケティングまでのさまざまな専門知識を有するオートデスク社員とチームを組み、プロジェクトを開始しました。フォスター博士とチーム メンバーは、オートデスクのテクノロジー支援プログラムを通じてオートデスク ソフトウェアを利用することもできました。 

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その後パンデミックの最中に、フォスター博士はオーストラリアへ戻りました。チームはリモートで作業を続けながら、サンゴの骨格を大量生産するための金型の設計やプロトタイピングを Fusion 360 で行い、サンゴの植樹に使用するロボティクス システムをテストしました。そしてフォスター博士の実家施設の工場設定で、金型のテストも行いました。さらにフォスター博士は、西オーストラリア州ジェラルトン沖のアブロホス諸島で、海中の生きたサンゴを使ってさまざまなバージョンのプロトタイプをテストしました。 

「Fusion 360 のコラボレーション環境が、Coral Maker 社のチームワークを支える鍵となっています。私は現在、イギリスのバーミンガムにいますが、チームはサンフランシスコ、タリンさんは西オーストラリアにいます。チームの誰かが、どこかのタイム ゾーンでモデルを更新すると、地球の裏側ですぐに変更内容を確認できます」 

– オートデスク製造スペシャリスト/トム・ヘマンズ 

積層造形は、骨格の設計をブラッシュアップしながら最終的な設計へと作り込んでいくプロセスに役立ちます。フォスター博士はプロトタイプのテストを行い、形状が適切か、スキューバ ダイビングの装備を付けて水中で簡単に扱えるかを確認する必要があります。  

「タリンさんは Fusion 360 のモデルからパーツを 3D プリントできます。物理的なコピーがあれば、握りやすい位置はどこかなど、タリンさんから追加のフィードバックをもらうことができます。私たちはこの情報に基づき、設計/修正を反復します」とオートデスクの製造スペシャリストであるトム・ヘマンズは話します。  

チームはさらに、CNC 工作機で金属から金型工具を作成しました。最終的にこれを使用してサンゴの骨格を大量生産します。 

サンゴ礁を救うために歩み続ける 

リサイクルされた石の複合材を使用して、1 日に最大 1 万個の骨格を製造できます。そしてこの骨格 1 個に 6 ~ 8 個のサンゴ片を装着できます。ただし、このサンゴ片を植えつける作業は繊細なため、ロボティクスもこのプロセスに欠かせない重要な要素となります。サンゴを傷つけることなくつまみ上げることのできる完璧なグリッパーを見つけるのは困難です。そこでチームは、Fusion 360 とその電子設計機能を活用して新しい解決策を見つけようとしています。 

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使えそうな空気圧グリッパーはあるのですが、これでは必要な半径範囲に届きません。そこで、簡単に大量生産できる柔軟なシリコン製の延長パーツをグリッパーに追加しようと、Fusion 360 で開発を進めているところです」と、オートデスクの上級主任科学研究員兼エンジニアのニコール・ケアリーは話します。   

Coral Maker 社は現在、研究開発の完了とソリューションの市場投入を目指して、植樹活動の資金調達に取り組んでいます。研究開発の次のステップでは、ロボティクス システムの現地テストと、大規模な海洋におけるサンゴの試験を予定しています。その後、大規模なパイロット プロジェクトを実施し、運用プロセスを最初から最後までテストします。  

「私は、情熱をもって真剣に、サンゴの移設や移植支援に取り組んでいます。Coral Maker はきっと、この分野で大きなインパクトをもたらすことができるでしょう。私は変化を見たいのです。サンゴ礁の生態系を救うために必要な介入措置を最大限に尽くしたいと考えています」とフォスター博士は話します。  

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