デザインと高音質を追求したオーディオブランド
Egretta(エグレッタ)シリーズの開発に Autodesk Fusion のクラウドサービスを活用
「何事にも前進し最高の品質で未知の社会へ挑戦しよう」を社憲に掲げ、受託専門企業から開発提案型企業へと変革してきたオオアサ電子株式会社。同社は、株式会社GKデザイン総研広島と協力して、オーディオブランド Egretta(エグレッタ)シリーズを開発してきた。イタリア語で白鷺を意味する Egretta は、音だけではなくデザインにもこだわり、インテリアとして部屋に調和するよう開発され、オーディオ専門誌からも高い評価を得ている。純日本産にこだわり、広島県で製造されている Egrettaの最新モデルは、オオアサ電子とGKデザイン総研広島が、Autodesk Fusion のクラウドサービスを活用して開発した。
2011年の発売開始から協力関係を結んできたオオアサ電子とGKデザイン総研広島
Egrettaブランド誕生の背景について、オオアサ電子株式会社 開発技術室の山本武司 室⻑は、次のように説明する。
「当社は⻑年にわたりオーディオメーカーのOEM生産を通して、オーディオ開発のノウハウを蓄積してきました。そこで、2011年に自社のオーディオブランドを立ち上げました。当時はあまり注目されていなかった全方向°無指向性のスピーカーシステムと、インテリアにもマッチするオーディオ製品を目指して、 Egretta を開発しました。その製品第一号からブランド戦略やプロダクトデザインにマーケティングなどの分野で、GKデザイン総研広島に協力してもらいました」
株式会社 GKデザイン総研広島 プロダクトデザイン部で、最新モデルの Egretta 製品のデザイン開発を担当した遠藤大輔氏は、その経緯を次のように振り返る。
「自分が Egretta 製品のデザインに携わる前から、社内でブランドの立ち上げやマーケティングを主導してきたメンバーがいました。そのメンバーが、独自のタワー型スピーカーというデザインとアイデンティティを創ってきました。白鷺を意味する Egretta というブランド名も、白いタワー型のデザインを凛とした白鷺のシルエットに見立てたものです」
手書きのスケッチからスタートし、2015年に Autodesk Fusion を導入。Autodesk Fusion 導入の経緯について、山本氏は
「Egrettaブランドを立ち上げた当初は、手書きのスケッチや 2D 描画ソフトなどを使って、デザインのイメージをやり取りしていました。その後、2015年に初期の Autodesk Fusion がリリースされたので、個人的な利用も含めて使い始めました」と話す。
デザインを担当してきた遠藤氏も「Egretta 関連のデザインの他にも、GKデザイン社内でAutodesk Fusion は活用してきました。Fusion は、3D データの変換能力が高いので、他では開けないファイルを受け取ったときにも、とりあえずAutodesk Fusionで読み込めないか試してみて、何度も助けられました。データ読み込み後は即座にデザイン検討に入れるので今では Fusion が無いと困るようになっています」と活用方法に触れる。
Egretta スピーカーの開発に関する Autodesk Fusion 活用について、山本氏は「2019年の大幅アップデートあたりからテスト的に業務への取り込みを開始して、2020年から本格的なモデリングや CAM、そして 3D による試作に使うようになりました。社内にある NC 加工機とも連動して CAM 機能を活用するだけではなく、3D プリントなども利用しています。 Autodesk Fusion の機能の中でも、断面解析は特に活用しています。Egretta は製品の形状がコンパクトなので、小さな筐体で高音質を実現するために、断面解析で製品の形状や採用する部品の配置などを徹底的に検証しています」と効果に触れる。
クラウドサービスを活用したデザインの共有でコラボレーションを加速
「10 年以上にわたり開発とデザインで協業してきた両社は、2024 年春に発売する新製品の Egretta スピーカーで、Autodesk Fusion のクラウドサービスを活用したコラボレーションを推進した。その成果について、遠藤氏は「例えばデータ共有ができない取引先とのやり取りでは、デザインの内容を確認してもらうために、利用しているソフトでレンダリングをかけて画像データにしたり、デザインのポイントや課題を伝えるために必要な図表を製作して資料にレイアウトするのに、半日くらいかかります。それに対して、Autodesk Fusion のクラウドサービスを活用すれば、データをクラウドにアップロードして色を指定するだけなので、一時間もかかりません。大幅な時間短縮になります。クラウドで 3D データを共有できると、関係者それぞれの専門性から見たいところを見てもらえるので、コミュニケーションの精度が上がり、プロジェクト全体では大幅なスピードアップになります。加えて、これまで説明資料の製作に割かれていたデザインリソースや時間を商品品質に直結する 3D データの造形精度向上にあてられるので、同じ時間でデザインをもう一段階上のステージに上げる事ができます」と説明する。
「山本氏も「クラウドサービスを通して、GKデザインとデータをやり取りできるようになって、新製品の開発スピードは向上しました。また、取引先がAutodesk Fusion を使っていなくても、モデルビューアでイメージを共有できるようになり、これまで以上に意思疎通できるようになりました。さらに、 CAM 連携も時間短縮につながっています。以前は、 3D データを 2D に展開して CAM オペレーターに渡して機械を動かしてもらっていました。その工程が約 70% は削減されたので、試作品のフィードバックも速くなりました」と成果を語る。
Autodesk Fusion のクラウドを活用したMade in Japan で魅力的な製品を開発
「Autodesk Fusion とクラウドサービスを活用して開発された Egretta スピーカーの新製品について、山本氏は「小型で安価なスピーカー製品は市場に多々ありますが、新製品の Egretta スピーカーは、自社で開発したツィーターを採用し、設置環境を利用した低域増強などの独自技術で、小型でありながら音質に優れた Made in Japan の自信作です。 Autodesk Fusion を活用して、限られた製品サイズの中に採用するパーツや製品筐体など全て連携した状態での設計を行いながら、必要な機能と部品を収納させ、GKデザインと連携して魅力的なデザインを実現しています」と自負する。
デザインやプロモーション計画を担うGKデザインでも、遠藤氏は「Autodesk Fusion による新製品のレンダリング画像は、かなり高精細なので製品イメージとしてカタログに使えると考えています。また、商品写真が無いプロジェクト初期や細かなアップデートなど、これまで難しかったタイミングでも、プロモーションやブランディングにも活用出来ます。開発からデザインに製造まで、Autodesk Fusion で完結するようになると、製品の全工程でデータを統一でき、デザインの視点から解析などを活用できるようになれば、これまでとは全く違った時間の使い方になり、よりよい製品開発に貢献できると考えています。今後の製品デザインに関しては、ジェネレーティブデザインに興味があります」と期待を寄せる。今後に向けて、山本氏は「電子回路で Eagle を使いこなしてきた経験があるので、Autodesk Fusion で利用できるようになりコスト効果に期待しています。また、Autodesk Fusion の CAMで CNC 加工機の DNC 運転などにトライしたいと考えています」と展望を語る。